預貯金の相続手続きとは?口座凍結・必要書類・仮払い制度(150万円)を解説 2026年版

「父が亡くなった直後に銀行へ連絡したら、口座が凍結されて葬儀費用も下ろせなくなった」——相続の実務で、ご家族が最初に直面するのが預貯金の問題です。

この記事では、なぜ口座が凍結されるのか、相続手続きに必要な書類は何か、そして葬儀費用などの当面の資金を遺産分割の前に引き出せる「仮払い制度」まで、世田谷区大原の行政書士・藤原友事務所が、相続相談400件超(累計)の実務経験をもとに解説します。

なぜ亡くなると口座が凍結されるのか

金融機関は、口座名義人が亡くなったことを知ると、その口座を凍結します。凍結されると、入金も出金も、公共料金の引き落としもできなくなります。

一見不便に思えますが、これは相続人を守るための仕組みです。凍結されないまま一部の相続人が勝手に引き出してしまうと、遺産分割の際に「使い込み」をめぐる争いの原因になるからです。凍結は、亡くなった方の預貯金を相続人全員の共有財産として保全するための措置と理解してください。

なお、金融機関は役所からの通知で自動的に死亡を知るわけではありません。相続人からの連絡や、新聞のお悔やみ欄などをきっかけに凍結されるのが一般的です。「まだ連絡していないから大丈夫」と引き出しを続けると、かえってトラブルのもとになります。

預貯金の相続手続きに必要な書類

凍結された口座の払戻しや名義変更を受けるには、相続人が金融機関に相続の届出をします。遺言書の有無や遺産分割協議書の有無によって必要書類は変わりますが、一般的には次のような書類を求められます。

  • 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)
  • 相続人全員の現在の戸籍
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書、または金融機関所定の相続届(相続人全員の実印を押印)
  • 通帳・キャッシュカード、被相続人の口座情報が分かるもの

金融機関ごとに所定の書式や必要書類が異なるため、取引先が複数あると、そのたびに戸籍一式をそろえ直す手間がかかります。この負担を大きく減らせるのが法定相続情報一覧図です。詳しくは法定相続情報一覧図とは?取得方法をご覧ください。戸籍の集め方は相続人調査と戸籍収集の進め方で解説しています。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

葬儀費用に困ったら「仮払い制度」

遺産分割が終わるまで一切引き出せないとなると、葬儀費用や当面の生活費に困るご家族が出てきます。そこで2019年(令和元年)7月から、遺産分割の前でも、各相続人が単独で一定額まで預貯金を引き出せる「仮払い制度」が設けられました。根拠となるのは民法909条の2です。

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)第909条の2

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。
民法 第909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使)

引き出せる金額は、次の計算式で求めます。

相続開始時の預貯金額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分

ただし、1つの金融機関から引き出せる上限は150万円(法務省令で定める額)です。計算結果と150万円のいずれか低いほうが、その金融機関での上限になります。

たとえば、預金600万円・相続人が子2人(法定相続分は各2分の1)の場合、子1人が単独で引き出せるのは「600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円」です。150万円以下なので、100万円まで引き出せます。この仮払いは、他の相続人の同意がなくても、その相続人が単独で請求できるのが大きな特徴です。

150万円を超えて必要なときは家庭裁判所へ

上限を超える資金がどうしても必要な場合は、家庭裁判所に遺産分割の審判・調停を申し立てたうえで、預貯金の仮分割の仮処分を求める方法があります(家事事件手続法)。ただし手続きに時間と手間がかかるため、まずは民法909条の2の仮払いで当面をしのぐのが現実的です。

預貯金の相続手続きの流れ

一般的な手続きの流れは次のとおりです。

  1. ステップ1 金融機関に死亡を届け出る
    取引のある金融機関に連絡し、口座を凍結してもらいます。同時に、相続手続きに必要な書類の案内を受け取ります。
  2. ステップ2 相続人を確定し戸籍を集める
    被相続人の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の戸籍をそろえて相続人を確定します。法定相続情報一覧図を取得しておくと以後がスムーズです。
  3. ステップ3 遺言書の有無を確認する
    遺言書があればその内容に従います。ない場合は相続人全員で遺産分割協議を行い、預貯金を誰がどう取得するか決めます。
  4. ステップ4 必要書類を金融機関に提出する
    遺産分割協議書または金融機関所定の相続届に、相続人全員の実印・印鑑証明書を添えて提出します。当面の資金が必要なら仮払い制度も利用できます。
  5. ステップ5 払戻し・名義変更を受ける
    審査を経て、指定口座への払戻しや名義変更が行われます。取引先が複数あれば、それぞれで手続きします。

よくある失敗と注意点

「凍結される前に全部下ろしておけばよい」……被相続人の預金を勝手に引き出して使うと、遺産分割で使い込みを疑われるだけでなく、相続を単純承認したとみなされ、後で相続放棄ができなくなるおそれもあります。

「相続人の一人だけで手続きを進めたい」……遺言書がない場合、払戻しには原則として相続人全員の関与(実印・印鑑証明)が必要です。仲の悪い相続人がいる、連絡の取れない相続人がいるといったケースは、早めに専門家へご相談ください。

「相続税は関係ないと思っていた」……預貯金は相続税の課税対象です。基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は申告が必要になることがあります。**相続税の申告・納付の期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。税額の計算や申告そのものは税理士の業務ですので、当事務所では申告要否の見極めと税理士のご紹介まで一貫してサポートします。

当事務所のサポートと費用の目安

行政書士・藤原友事務所では、戸籍収集から遺産分割協議書の作成、金融機関での相続手続きまでを一括でお手伝いしています。

  • 相続人の調査・戸籍の収集、法定相続情報一覧図の取得
  • 遺産分割協議書の作成
  • 金融機関の相続手続き(払戻し・名義変更)のサポート
  • 相続税が関係する場合の税理士、争いがある場合の弁護士、相続登記が必要な場合の司法書士との連携

費用はご依頼の範囲や金融機関の数によって変わります。正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください。

初回のご相談は無料です。電話(03-4500-1030)のほか、オンラインでのご相談にも対応しています。世田谷区大原の事務所を拠点に、相続のご相談を400件超(累計)お受けしてまいりました。「何から手をつければよいか分からない」という段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。

まとめ

亡くなった方の預貯金口座は凍結され、払戻しには戸籍・印鑑証明・遺産分割協議書などの書類がそろって必要です。葬儀費用など当面の資金は、民法909条の2の仮払い制度により、遺産分割の前でも1金融機関あたり150万円を上限に単独で引き出せます。手続きの負担を減らすには、早めの相続人調査と法定相続情報一覧図の活用がポイントです。

相続手続き全体の進め方は、相続手続きの総合ガイドでまとめて解説しています。

出典