令3条使用人とは?建設業の支店長・営業所長の要件と2週間の届出を解説 2026年版

「支店を出すので、支店長を置きたい」「営業所を増やしたら、そこにも人を置かないといけないと言われた」。建設業の許可を持つ会社が事業を広げていくとき、必ず出てくるのが令3条使用人という耳慣れない言葉です。

読み方は「れいさんじょうしようにん」。建設業法施行令の第3条に定めがあることからこう呼ばれ、実務では支店長・営業所長のことを指します。本店以外の営業所を置くなら、その営業所ごとに必ず1人必要になるという点が、見落とされやすいところです。この記事では、令3条使用人の意味と3つの要件、届出の期限と必要書類、そして経営業務の管理責任者との関係まで、条文にそって整理します。

令3条使用人とは?支店長・営業所長のこと

令3条使用人は、その営業所を代表して、建設工事の請負契約を結ぶ権限を与えられている人です。条文を見ると、対象がはっきり書かれています。

(使用人)第3条

法第六条第一項第四号(法第十七条において準用する場合を含む。)、法第七条第三号、法第八条第四号、第十二号及び第十三号(これらの規定を法第十七条において準用する場合を含む。)、法第二十八条第一項第三号並びに法第二十九条の四の政令で定める使用人は、支配人及び支店又は第一条に規定する営業所の代表者(支配人である者を除く。)であるものとする。
建設業法施行令 第3条(令3条使用人の範囲)

ここでいう「支配人」は登記された支配人のことで、実務ではあまり多くありません。ほとんどのケースで問題になるのは後半の「支店又は営業所の代表者」、つまり支店長・営業所長です。役職名が「所長」でも「センター長」でも、契約を結ぶ権限を持っているなら令3条使用人にあたります。

なお、ここでいう営業所は、建設業法上の営業所(常時、建設工事の請負契約を締結する事務所)を指します。営業所そのものの要件は建設業許可の営業所の要件とは?で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

どんなときに必要になるのか

令3条使用人が必要になるのは、従たる営業所(本店以外の営業所)を置くときです。整理すると次のようになります。

営業所 令3条使用人 考え方
主たる営業所(本店)に代表取締役がいる 原則として不要 代表者本人が契約権限を持っているため
主たる営業所に代表取締役が常勤していない 必要 本店を実際に取り仕切る人を届け出る
従たる営業所(支店・営業所) 必ず必要 営業所ごとに1人
登記された支配人がいる 必要 支配人はそれ自体が令3条使用人

ここでよくある誤解が、「支店には専任技術者さえ置けばよい」というものです。営業所には専任技術者と令3条使用人の2人分の体制が要るとお考えください。1人が両方を兼ねることは可能ですが、それは後述のとおり条件があります。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

令3条使用人の3つの要件

令3条使用人になれる人には、次の3つの条件があります。資格は必要ありません。

要件1 その営業所に常勤していること

雇用契約があり、その営業所に毎日出勤して働いていることが必要です。ほかの会社の常勤役員を兼ねていたり、住まいから通えないほど遠方に居住していたりすると、常勤性が認められないことがあります。確認資料としては、健康保険被保険者証(令和7年12月2日以降はマイナンバーカードの健康保険証利用または資格確認書)、住民税特別徴収税額通知書、賃金台帳などを求められます。

要件2 請負契約の締結・履行の権限を委任されていること

営業所の代表者として、見積り・入札・契約の締結までを自分の判断で行える立場である必要があります。単に事務を取りまとめているだけの人、社長の決裁がなければ何も決められない人は該当しません。権限の委任は、取締役会議事録や委任状、社内規程で示すのが一般的です。

要件3 欠格要件に該当しないこと

令3条使用人は、役員と同じように建設業法第8条の欠格要件の審査対象になります。禁錮以上の刑を受けて5年を経過しない人、暴力団員である人などが該当します。令3条使用人ひとりの欠格事由が、会社全体の許可を取れなくしてしまうという点は、必ず押さえておいてください。詳しくは建設業許可の欠格要件とは?で解説しています。

経営業務の管理責任者・専任技術者との兼務はできる?

兼務の可否は、同じ営業所にいるかどうかで判断します。

  • 令3条使用人と専任技術者:同じ営業所に常勤していれば兼務できます。支店長が技術者資格を持っているケースはよくあります
  • 令3条使用人と経営業務の管理責任者:経営業務の管理責任者は主たる営業所に常勤する必要があるため、従たる営業所の令3条使用人との兼務はできません
  • 複数の営業所の令3条使用人を兼ねる:常勤できるのは1か所だけなので不可

それぞれの要件は建設業の専任技術者(営業所技術者)とは?建設業の経営業務の管理責任者(経管)とは?で解説しています。

令3条使用人を置くまでの流れ

新しく支店を出す場合を例に、実際の手順を追ってみます。

  1. ステップ1 営業所として使える場所か確認する
    建物の使用権原(自社所有か賃貸借契約か)、独立性のある事務スペースかを確認します。賃貸の場合は使用目的が事務所になっているかを契約書で確認しましょう。
  2. ステップ2 令3条使用人と専任技術者を決める
    その営業所に常勤できる人を選びます。契約権限を委任する旨を社内で決議し、議事録や委任状を残しておきます。技術者資格や実務経験の裏づけもこの段階で確認します。
  3. ステップ3 本人確認と欠格要件のチェックをする
    本籍地の市区町村で身分証明書を、法務局で登記されていないことの証明書を取ります。取得から3か月以内のものが求められるため、申請日から逆算して取りましょう。
  4. ステップ4 変更届出書一式を作成する
    変更届出書(様式第22号の2)を中心に、令3条使用人の一覧表(様式第11号)、住所・生年月日等に関する調書(様式第13号)、誓約書(様式第6号)などをそろえます。営業所の写真も必要です。
  5. ステップ5 2週間以内に届け出る
    東京都知事許可なら都庁の建設業課へ提出します。期限が短いので、人事の内示が出た時点で準備を始めるのが安全です。

届出の期限は2週間 遅れると指導の対象に

令3条使用人の届出期限は、建設業法施行規則にはっきり書かれています。

(使用人の変更の届出)第8条

建設業者は、新たに令第三条に規定する使用人になつた者がある場合には、二週間以内に、当該使用人に係る法第六条第一項第四号並びに第四条第一項第四号及び第五号に掲げる書面その他国土交通大臣又は都道府県知事が必要と認める書類を添付した別記様式第二十二号の二による変更届出書により、国土交通大臣又は都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
建設業法施行規則 第8条(使用人の変更の届出・2週間以内)

新たに令3条使用人になった人がいるときは2週間以内です。商号や資本金の変更が30日以内であるのに比べて、かなり短く設定されています。人が入れ替わる場面は監督行政庁が特に重視するところで、届出を怠ったまま放置すると、監督処分や許可の更新時の指導につながります。届出全体の期限一覧は建設業許可の変更届とは?にまとめています。

主な必要書類は次のとおりです。

  • 変更届出書(様式第22号の2):第一面に変更の内容を記載します
  • 令3条使用人の一覧表(様式第11号):変更後の全営業所分を書き直します
  • 令3条使用人の住所、生年月日等に関する調書(様式第13号):本人の経歴を記載します
  • 誓約書(様式第6号):欠格要件に該当しない旨の誓約です
  • 身分証明書:本籍地の市区町村が発行する、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者に該当しない旨の証明書です
  • 登記されていないことの証明書:法務局が発行し、成年被後見人等でないことを示します
  • 常勤性の確認資料:健康保険の資格を示す書類、住民税特別徴収税額通知書など

【要確認】令3条使用人が退任するだけで後任を置かない場合(従たる営業所自体を廃止する場合など)の届出の扱いは、営業所の廃止届と一体で処理するか個別に届け出るかで運用が分かれます。東京都の場合は事前に建設業課へ確認することをおすすめします。

令3条使用人の経験は、将来の経営業務の管理責任者につながる

ここは会社の将来設計にかかわる大事な話です。建設業法施行規則は、経営業務の管理責任者の要件として次のように定めています。

  • 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
  • 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
  • 建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者

このうち2つめの「経営業務の管理責任者に準ずる地位」に、令3条使用人としての経験があてはまると扱われるのが一般的な運用です。支店長を5年務めた人は、将来その会社の経営業務の管理責任者になれる可能性があるということです。事業承継を見据えて後継者を支店長に据える、という設計にも意味が出てきます。

【要確認】この取扱いは許可行政庁の判断によりますので、どこまでの権限委任が「準ずる地位」と認められるかは、東京都都市整備局・建設業課への事前確認から、届出手続きの完了まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。

よくある失敗

  • 支店を開設してから届出に気づく:2週間はあっという間です。身分証明書は本籍地の市区町村でしか取れないため、遠方だと郵送で1週間以上かかります
  • 名ばかりの支店長を届け出てしまう:契約権限がない人を届け出ると、後の許可更新や立入検査で問題になります
  • ほかの会社の役員を兼ねている人を選ぶ:常勤性が否定され、営業所として認められません
  • 欠格要件の確認を後回しにする:本人に確認しづらい事柄ですが、会社全体の許可にかかわるため必ず先に確認します
  • 一覧表の書き直しを忘れる:様式第11号は変更後の全体を記載するもので、追加分だけを書くのではありません

費用と期間の目安

令3条使用人の変更届出そのものに、東京都への手数料はかかりません。実費として身分証明書が1通300円程度、登記されていないことの証明書が1通300円かかります。

当事務所にご依頼いただく場合の報酬の目安は、令3条使用人の変更届出のみで3万円台から、営業所の新設とあわせたご依頼で6万円台からです。書類の収集からご相談いただけます(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。期間は、資料がそろっていれば1週間から10日ほどで提出まで進みます。

まとめ

令3条使用人は、支店や営業所を持つ建設会社にとって欠かせない役割です。押さえるべきは次の4点です。

  • 従たる営業所には必ず1人置く。役職名ではなく契約権限で判断する
  • 要件は常勤性・契約権限の委任・欠格要件に該当しないことの3つ
  • 新たに就任したときは2週間以内に変更届出書(様式第22号の2)を提出する
  • 令3条使用人としての5年の経験は、将来の経営業務の管理責任者の要件になり得る

支店の開設は、営業所の要件・専任技術者・令3条使用人・社会保険の4つを同時に整えていく作業になります。順番を間違えると、営業所は借りたのに許可上は営業所として認められない、という事態にもなりかねません。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。

行政書士 藤原友事務所(東京都世田谷区大原)では、建設業許可の新規取得から支店開設に伴う変更届出まで、一貫してお手伝いしています。初回のご相談は無料で、お電話(03-4500-1030)のほか、オンラインでのご相談にも対応しています。「この人で支店長として届け出られるか」といった段階でも、お気軽にお声がけください。

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