建設業の廃業届とは?30日以内の期限と一部廃業の手続きを解説 2026年版
建設業許可の手続きというと、取るとき・更新するときの話ばかりが目につきます。ところが実務では、やめるときの届出でつまずく会社が少なくありません。事業をたたむ、後継者がいない、経営業務の管理責任者が退職してしまった。そのどれもが、建設業法上は「廃業等の届出」の対象になり得ます。
しかも期限は30日以内です。この記事では、廃業届が必要になる場面、届け出る人、業種の一部だけをやめる場合の手続き、そして相続が起きたときの取扱いまでを、順を追って整理します。

廃業届が必要になる5つの場面
建設業法は、次の5つの場合に届出を義務づけています。
(廃業等の届出)第12条
許可に係る建設業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に掲げる者は、三十日以内に、国土交通大臣又は都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
一 許可に係る建設業者が死亡したとき(第十七条の三第一項に規定する相続人が同項の認可の申請をしなかつたときに限る。)は、その相続人
二 法人が合併により消滅したとき(当該消滅までに、合併後存続し、又は合併により設立される法人について第十七条の二第二項の認可がされなかつたときに限る。)は、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)であつた者
三 法人が破産手続開始の決定により解散したときは、その破産管財人
四 法人が合併又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したときは、その清算人
五 許可を受けた建設業を廃止したとき(第十七条の二第一項又は第三項の認可を受けたときを除く。)は、当該許可に係る建設業者であつた個人又は当該許可に係る建設業者であつた法人の役員
建設業法 第12条第一号〜第五号(廃業等の届出)
注目していただきたいのは、場面ごとに「届け出るべき者」が決まっている点です。会社が解散したときは清算人、破産したときは破産管財人というように、届出者を間違えると受け付けてもらえません。
| 場面 | 届け出る人 | 主な確認資料 |
|---|---|---|
| 個人事業主が死亡した | 相続人 | 届出者の印鑑証明書、死亡と相続人であることが分かる戸籍謄本 |
| 法人が合併により消滅した | 役員であった者 | 役員個人の印鑑証明書、閉鎖事項全部証明書等 |
| 破産手続開始の決定により解散した | 破産管財人 | 裁判所発行の破産管財人資格証明書等 |
| 合併・破産以外の事由で解散した | 清算人 | 清算人であることが分かる登記事項証明書、登録済みの清算人の印鑑証明書 |
| 許可を受けた建設業を廃止した | 法人は代表者、個人は本人 | 原則不要(商号・所在地等の変更があれば事前に変更届) |
使用する様式は様式第22号の4(廃業届)です。届出の区分として「1.全部の業種の廃業」「2.一部の業種の廃業」のいずれかを選ぶ作りになっています。
見落とされやすい「要件を欠いたとき」も廃業にあたる
実務でいちばん多い相談が、事業をやめるつもりはないのに廃業届が必要になるケースです。
建設業許可は、経営業務の管理責任者(経管)と営業所技術者(専任技術者)がいて初めて成り立ちます。この人たちが退職や死亡でいなくなり、代わりを立てられない状態になると、その業種の許可は維持できません。この場合も「許可を受けた建設業を廃止したとき」に当たり、廃業届の対象になります。
東京都の手引でも、廃業届に書く「廃業等の年月日」について、実際に要件を欠いた日(例:経営業務の管理責任者が辞めた日)を記入すると説明されています。届け出た日ではなく、要件が欠けた日が基準です。
ただし、辞めた瞬間に廃業が確定するわけではありません。まず代わりの人を立てられないかを検討するのが先です。要件の中身は建設業の経営業務の管理責任者(経管)とはと建設業の専任技術者(営業所技術者)とはで解説しています。社内に候補がいる場合は、廃業ではなく変更届で対応できます。変更届の期限は建設業許可の変更届とはのとおり、経管や専任技術者の変更は2週間以内と短いのでご注意ください。
業種だけをやめる「一部廃業」の手続き
29業種のうち一部の許可だけをやめることもできます。たとえば内装仕上工事業の専任技術者が退職し、後任がいない。しかし建築工事業と大工工事業は続けたい、という場合です。
この場合は様式第22号の4で「2.一部の業種の廃業」を選び、廃止する業種を記載します。残った業種の許可は、そのまま有効期間の満了日まで続きます。許可番号も変わりません。
注意したいのは、一部廃業は廃業届だけでは完結しないことです。東京都の場合、一部廃業の届出と同時に次の書類を提出することとされています。
- 変更届出書(様式第22号の2 第一面・第二面):一部廃業後の各営業所の許可業種の状況を明らかにするため。ただし知事許可で営業所が主たる営業所のみの場合、第一面への業種廃止の記載は不要(専任技術者に関する記載は必要)
- 専任技術者の変更届(様式第8号)または届出書(様式第22号の3):担当業種の変更か、専任技術者の削除かでケースが分かれます
- 別紙四 専任技術者一覧表
従たる営業所がある会社は、営業所ごとに業種の増減を整理する必要があり、営業所そのものを廃止する場合は建設業法施行令第3条に規定する使用人(令3条使用人)の削除も出てきます。枚数としては廃業届1枚では済まないと考えておいたほうが安全です。令3条使用人については令3条使用人とは?建設業の支店長・営業所長の要件で解説しています。
個人事業主が亡くなったときは「廃業届」の前に認可申請を検討する
ここが2020年(令和2年)の改正で大きく変わった点です。条文をもう一度見ると、第12条第一号には「相続人が同項の認可の申請をしなかつたときに限る」という括弧書きがあります。つまり相続の認可を申請すれば、廃業届ではなく承継の道があるということです。
(相続)第17条の3
建設業者が死亡した場合において、当該建設業者(以下この条において「被相続人」という。)の相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により被相続人の営んでいた建設業の全部を承継すべき相続人を選定したときは、その者。以下この条において単に「相続人」という。)が被相続人の営んでいた建設業の全部を引き続き営もうとするとき(中略)は、その相続人は、国土交通省令で定めるところにより、被相続人の死亡後三十日以内に次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める者に申請して、その認可を受けなければならない。
(中略)
2 相続人が前項の認可の申請をしたときは、被相続人の死亡の日からその認可を受ける日又はその認可をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした建設業の許可は、その相続人に対してしたものとみなす。
建設業法 第17条の3第1項・第2項(相続の認可)
期限はどちらも死亡後30日以内です。認可を申請すれば、死亡の日から認可の日までの間も許可を受けているものとみなされるため、許可の空白期間を作らずに事業を続けられます。逆に、この30日を何もせずに過ごしてしまうと、残された選択肢は廃業届と新規申請のやり直しだけになります。承継の詳しい手続きは建設業許可の事業承継・相続とはをご覧ください。
廃業届の手続きの流れ
実務では次の順で進めます。
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- ステップ1 廃業の事由と発生日を確定する
- 解散、破産、事業の廃止、要件を欠いた日など。廃業届に書く「廃業等の年月日」は実際に事由が発生した日です。
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- ステップ2 全部廃業か一部廃業かを決める
- 続けられる業種があるかを確認します。専任技術者が残っている業種は継続できる場合があります。
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- ステップ3 届出者と確認資料をそろえる
- 清算人・破産管財人・相続人など、事由によって届出者と必要な証明書が変わります。印鑑証明書等は発行後3か月以内のものを用意します。
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- ステップ4 同時に出す変更届を作成する
- 一部廃業の場合は、変更届出書・専任技術者の届出・専任技術者一覧表などを同時に提出します。
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- ステップ5 30日以内に許可行政庁へ提出する
- 都道府県知事許可は都道府県の担当課、大臣許可は地方整備局等へ提出します。
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- ステップ6 関連する手続きを整理する
- 解体工事業の登録、産業廃棄物の許可、経審の受審予定など、建設業許可を前提にしていた手続きの取扱いを確認します。
届け出ないとどうなるか
廃業届は、出さなくてもすぐに罰金の通知が届くような手続きではありません。だからこそ後回しにされがちです。しかし実際には次のような形で表面化します。
①更新の時期に発覚する。許可の有効期間は5年です。更新の案内をきっかけに、経営業務の管理責任者が何年も前に不在だったことが判明し、遡って廃業届を出すことになる、という事態が起こります。この場合、許可が実質的に成立していなかった期間に500万円以上の工事を請け負っていれば、無許可営業を問われかねません。軽微な工事の線引きは建設業許可がいらない「軽微な工事」とはで解説しています。
②取引先の確認で発覚する。元請が下請の許可状況を確認する場面は増えています。許可業者として登録されたままなのに実態が伴わない状態は、取引の信用にも関わります。
③再取得のときに整理が必要になる。過去の届出漏れがあると、再申請の際に経緯の説明を求められることがあります。
廃業した後、また許可を取りたくなったら
全部廃業の届出をすると、その許可は将来に向かって効力を失います。いったんやめた許可は復活しませんので、再び500万円以上の工事を請け負うには新規申請をやり直すことになります。当然、経営業務の管理責任者・営業所技術者・財産的基礎といった要件を、あらためて満たす必要があります。
とくに気をつけたいのが、要件の実績が「現在の会社での経験」で求められる場面です。廃業して数年空けてしまうと、経管の経験年数の証明が難しくなることがあります。事業を縮小するだけであれば、全部廃業ではなく一部廃業にとどめて許可自体は残すほうが、将来の選択肢は広く残ります。新規申請の要件は建設業許可の要件、更新の実務は建設業許可の更新手続きをご覧ください。
再取得時に従前の許可番号を引き継ぐかどうかの取扱いは、許可行政庁によって運用が異なります。また一部廃業に伴って同時提出する書類の組合せも、営業所の構成や許可行政庁の手引によって変わります。廃業後に再度許可を取得したい場合も、所管窓口への確認から申請まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。
費用と期間の目安
廃業届の提出そのものに、手数料はかかりません。新規申請や更新のような登録免許税・手数料は不要です。費用が発生するのは、印鑑証明書や登記事項証明書などの証明書の取得費用(1通数百円)程度です。
期間は、事由が確定していれば書類作成に数日、提出から受理までは窓口で完結するのが通常です。ただし一部廃業は同時提出書類の作り込みに時間がかかり、営業所が複数ある会社では1週間から2週間程度を見ておくと安心です。当事務所にご依頼いただく場合の報酬は、全部廃業か一部廃業か、営業所の数によってお見積りします(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。
よくある失敗3つ
①経管が辞めた日ではなく、気づいた日を書いてしまう。廃業等の年月日は実際に要件を欠いた日です。日付の整合が取れないと、その間の工事の扱いを説明できなくなります。
②相続で30日を過ぎてしまう。個人事業主が亡くなったときの認可申請の期限は死亡後30日以内です。葬儀や相続の話し合いをしているうちに過ぎてしまうことが本当に多い期限です。相続全体の流れは相続手続きの流れと期限で整理しています。
③一部廃業で専任技術者の届出を忘れる。廃業届だけを出しても、営業所の業種構成と専任技術者の登録が食い違ったままになり、後日補正を求められます。
まとめ
建設業の廃業届は、事由が生じてから30日以内という短い期限の手続きです。ポイントは3つ。事由ごとに届け出る人が決まっていること、経管や専任技術者を欠いた場合も対象になること、そして一部廃業なら変更届などを同時に出す必要があることです。個人事業主が亡くなった場合は、廃業ではなく30日以内の認可申請で許可を引き継げる道があります。判断に迷う段階でご相談いただければ、続けられる業種を残す形での整理が可能です。
建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。
廃業か継続かの判断を含めて、初回のご相談は無料です。お電話(03-4500-1030)のほかオンラインでも承っています。




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