建設業の財務諸表の作り方|決算変更届の様式と建設業会計への組替えを解説 2026年度版

「決算変更届を出そうとしたら、税理士から受け取った決算書がそのまま使えないと言われた」「完成工事高や未成工事支出金という科目が分からない」——建設業許可を持つ会社が毎年つまずくのが、決算変更届で提出する建設業の財務諸表です。

税務署に提出する決算書と、建設業許可の役所に提出する財務諸表は、同じ決算内容でも様式も科目も別物です。この記事では、なぜ組替えが必要なのか、どの様式に何を書くのか、どこを間違えやすいのかを、世田谷区大原の行政書士・藤原友事務所が解説します。

決算変更届で財務諸表を出す理由

建設業許可を受けた業者は、毎年決算のたびに決算変更届(事業年度終了届)を提出する義務があります。その中心となる書類が財務諸表です。

(変更等の届出)第11条
(中略)
2 許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。建設業法 第11条第2項(毎事業年度経過後4月以内の書類提出)

条文のとおり、提出期限は毎事業年度経過後4か月以内です。3月決算なら7月末が期限になります。この提出を怠ると、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金という罰則も定められています(建設業法第50条第1項第2号)。実務上は、決算変更届が未提出のままだと許可の更新や業種追加、経営事項審査を受けられないという不利益のほうが先に表面化します。

役所がこの財務諸表を見るのは、許可の要件である財産的基礎を満たしているか、そして経営事項審査の点数を計算するためです。会社ごとにばらばらの様式では比較できないため、建設業法施行規則で全国共通の様式が定められています。

建設業の財務諸表で使う様式

法人と個人で使う様式が異なります。主なものは次のとおりです。

法人の場合

  • 貸借対照表……様式第15号
  • 損益計算書・完成工事原価報告書……様式第16号
  • 株主資本等変動計算書……様式第17号
  • 注記表……様式第17号の2
  • 附属明細表……様式第17号の3(資本金1億円超または負債総額200億円以上の会社のみ)

個人事業の場合

  • 貸借対照表……様式第18号
  • 損益計算書……様式第19号

このほか、決算変更届では工事経歴書(様式第2号)、直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)、納税証明書、法人の場合は事業報告書などをあわせて提出します。【要確認】東京都では年度ごとに手引と様式が改訂されるため、提出前に最新年度の手引で様式番号と部数を確認してください。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

税務の決算書からの「組替え」がポイント

税理士が作る決算書は、法人税の申告のために作られています。一方、建設業の財務諸表は建設業会計のルールに沿って作ります。同じ数字でも、勘定科目の名前と分類を建設業用に組み替える必要があるのが最大のポイントです。

代表的な読替えは次のとおりです。

  • 売上高完成工事高(建設業以外の売上は「兼業事業売上高」として区分)
  • 売上原価完成工事原価(兼業分は「兼業事業売上原価」)
  • 売掛金完成工事未収入金
  • 買掛金工事未払金
  • 仕掛品未成工事支出金(まだ完成していない工事にかかった費用)
  • 前受金未成工事受入金(まだ完成していない工事について受け取った代金)

建設業は工期が事業年度をまたぐことが多いため、完成した工事と、まだ完成していない工事をはっきり分けるという考え方が徹底されています。決算日時点で進行中の工事にかかった原価は費用にせず「未成工事支出金」として資産に計上し、受け取った着手金は売上にせず「未成工事受入金」として負債に計上します。

完成工事原価報告書の4区分

損益計算書とセットで提出する完成工事原価報告書では、工事の原価を次の4つに区分します。

  • 材料費……工事に使った資材の費用
  • 労務費……工事に従事した自社の作業員の賃金(現場作業に直接かかわる人件費)
  • 外注費……下請に出した工事の費用
  • 経費……上記以外の現場経費(うち人件費を内書きします)

ここで多いのが、労務費と外注費の区分の誤りです。一人親方に請負で出した工事は外注費、自社で雇用している作業員の賃金は労務費になります。また、現場に出ない役員や事務員の給与は完成工事原価ではなく販売費及び一般管理費に入ります。この区分は経営事項審査の評点計算にも影響するため、毎年同じ基準で処理することが大切です。

消費税は税抜きが原則

建設業の財務諸表は、課税事業者であれば税抜き(税抜経理)で作成するのが原則です。税務の決算書を税込経理で作っている場合は、完成工事高・完成工事原価などを税抜きに直したうえで転記します。免税事業者はこの限りではありません。

税込みのまま提出すると、完成工事高が実態より大きくなり、経営事項審査の点数計算も正しく行われません。組替えの中でも見落とされやすいポイントです。

作成の流れ

  1. ステップ1 税務の決算書一式をそろえる
    決算報告書(貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書・勘定科目内訳明細書)と法人税の申告書を用意します。
  2. ステップ2 建設業とそれ以外の売上を分ける
    建設工事の売上を完成工事高、物販や不動産賃貸などは兼業事業売上高として区分します。
  3. ステップ3 科目を建設業会計に組み替える
    売掛金→完成工事未収入金、仕掛品→未成工事支出金などに読み替え、原価を材料費・労務費・外注費・経費の4区分に整理します。税込経理なら税抜きに直します。
  4. ステップ4 様式に転記して整合性を確認する
    様式第15号〜第17号の2(個人は第18号・第19号)に転記し、貸借対照表の資産と負債・純資産が一致するか、損益計算書の完成工事原価と原価報告書の合計が一致するかを確認します。
  5. ステップ5 工事経歴書等とあわせて提出する
    工事経歴書・工事施工金額・納税証明書・事業報告書などとあわせ、事業年度終了後4か月以内に許可行政庁へ提出します。

よくある失敗

  • 税務の決算書をそのまま提出してしまう……様式も科目も違うため、まず受理されません
  • 完成工事高と兼業売上を分けていない……建設業以外の売上まで完成工事高に入れると、経営事項審査で実態とずれた評価になります
  • 労務費と外注費が混ざっている……一人親方への支払いは外注費、雇用している作業員の賃金は労務費です
  • 未成工事支出金・未成工事受入金を計上していない……期をまたぐ工事があるのに計上がないと、進行中の工事の処理を疑われます
  • 税込みのまま作成している……課税事業者は税抜きが原則です
  • 提出を後回しにする……4か月の期限を過ぎた状態が続くと、更新申請の時期にまとめて数年分を作ることになり、費用も手間も膨らみます

費用と期間の目安

決算変更届(財務諸表の作成を含む)を行政書士に依頼する場合、1事業年度あたりの報酬で見積もるのが一般的です。数年分がたまっている場合は年数分の作業が必要になります。税務の決算書がそろっていれば、資料をお預かりしてから提出までおおむね1〜2週間が目安です(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。

なお、税務申告そのものは税理士の業務です。当事務所では、税理士が作成した決算書をもとに建設業様式へ組み替えて届出を行うという形で、税理士と連携しながら進めています。

まとめ

建設業の財務諸表は、税務の決算書を建設業会計に組み替えて、施行規則の様式(法人は様式第15号〜第17号の2、個人は第18号・第19号)に転記して作成します。完成工事高と兼業売上の区分、材料費・労務費・外注費・経費の4区分、未成工事支出金・未成工事受入金の計上、そして税抜き処理——この4点を押さえれば、大きな誤りは避けられます。提出期限は毎事業年度経過後4か月以内。未提出のままでは更新も経営事項審査も進みませんので、決算が固まったら早めに着手してください。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。あわせて建設業許可の決算変更届(事業年度終了届)経営事項審査(経審)とは経審の評点(P点)を上げる具体策もご覧ください。

決算変更届・財務諸表のご相談は無料相談から

行政書士・藤原友事務所(世田谷区大原)では、建設業の財務諸表の作成と決算変更届の提出代行を承っています。「税理士の決算書から先が分からない」「数年分ためてしまった」「経営事項審査を受けたいので点数を意識した整理をしたい」——そんなご相談を無料で承っています。お電話(03-4500-1030)またはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。オンライン相談にも対応しております。

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