施工体制台帳・施工体系図の作り方|下請5,000万円以上で必要な元請の義務を解説 2026年版

「元請として大きな工事を受注したら、施工体制台帳を作るように言われた」「発注者から施工体系図の掲示を求められた」——下請に工事を出す元請業者になると、必ず出てくるのが施工体制台帳と施工体系図です。

これらは、工事に関わる下請業者をすべて把握し、施工の分担関係を明らかにするための書類です。作成を怠ると監督処分の対象になり、公共工事では入札参加資格にも影響します。この記事では、作成が必要になる金額の基準、記載事項、そして実務での作り方を、世田谷区大原の行政書士・藤原友事務所が解説します。

施工体制台帳とは

施工体制台帳とは、発注者から直接工事を請け負った元請業者が、その工事に関わるすべての下請業者の情報をまとめた台帳です。孫請け・ひ孫請けまで含めた施工体制の全体像を一覧できるようにし、無許可業者の参入や一括下請負(丸投げ)、不適正な施工を防ぐことを目的としています。

根拠となるのは建設業法第24条の8です。

(施工体制台帳及び施工体系図の作成等)第24条の8
特定建設業者は、発注者から直接建設工事を請け負つた場合において、当該建設工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(当該下請契約が二以上あるときは、それらの請負代金の額の総額)が政令で定める金額以上になるときは、建設工事の適正な施工を確保するため、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事について、下請負人の商号又は名称、当該下請負人に係る建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに備え置かなければならない。
(中略)
4 第一項の特定建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事における各下請負人の施工の分担関係を表示した施工体系図を作成し、これを当該工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。建設業法 第24条の8第1項・第4項(施工体制台帳及び施工体系図の作成等)

条文のとおり、義務を負うのは発注者から直接請け負った元請の特定建設業者です。二次下請・三次下請の立場では台帳そのものを作る義務はありませんが、後述する再下請負通知書を出す義務があります。

作成が必要になる金額の基準

台帳の作成義務が生じる金額は、建設業法施行令で定められています。

(法第二十四条の八第一項の金額)第7条の4
法第二十四条の八第一項の政令で定める金額は、五千万円とする。ただし、特定建設業者が発注者から直接請け負つた建設工事が建築一式工事である場合においては、八千万円とする。建設業法施行令 第7条の4(施工体制台帳の作成を要する下請代金の額)

つまり、民間工事の場合は次のとおりです。

  • 建築一式工事以外……下請契約の請負代金の総額が5,000万円以上
  • 建築一式工事……下請契約の請負代金の総額が8,000万円以上

この金額は、令和7年(2025年)2月1日施行の施行令改正で、従来の4,500万円(建築一式7,000万円)から引き上げられました。特定建設業の許可が必要になる金額の基準と同じ数字です。過去の資料やインターネット上の記事には旧基準のままのものが残っているため、金額を確認するときは施行時期に注意してください。

なお、金額はその工事で結んだ下請契約の合計額で判定します。1社あたりの金額ではなく、すべての一次下請との契約金額を足した総額で見る点に注意が必要です。

公共工事は金額にかかわらず必要

公共工事では、下請契約を結んだ時点で、金額の大小にかかわらず施工体制台帳の作成が必要です。これは公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)で上乗せされているためです。あわせて、作成した施工体制台帳の写しを発注者に提出しなければならない点も、民間工事との大きな違いです。

「民間工事の感覚で5,000万円未満だから不要」と考えて公共工事で作らなかった、という取り違えは実際に起こります。公共工事を受注したら、下請を使う限り必ず作成すると覚えておいてください。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

施工体制台帳に記載する内容

施工体制台帳には、元請自身の情報と、下請各社の情報を記載します。主な記載事項は次のとおりです。

元請(作成者)について

  • 商号または名称、住所、建設業の許可番号と許可を受けた業種
  • 工事名称、工事内容、工期、発注者名と住所、契約日
  • 建設工事の監理技術者・主任技術者の氏名、資格、専任か否か
  • 監理技術者補佐や専門技術者を置く場合はその氏名・担当工事内容
  • 健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況

下請各社について

  • 商号または名称、住所、許可番号と業種
  • 請け負った工事の内容・工期・契約日
  • その下請が置く主任技術者の氏名・資格
  • 社会保険の加入状況

添付する書類としては、発注者との契約書の写し、下請契約書の写し、監理技術者資格者証と監理技術者講習修了証の写し、主任技術者の資格を証明する書類、再下請負通知書などが必要になります。契約書の写しを添付する必要があるため、口頭での発注や注文書だけのやり取りでは台帳が完成しません

施工体系図とは

施工体系図は、施工体制台帳の内容を図にして、下請の分担関係が一目で分かるようにしたものです。元請を頂点に、一次下請・二次下請……とツリー状に並べ、各社の会社名・工事内容・工期・技術者名を記載します。

掲示場所は次のとおりです。

  • 民間工事……工事現場の見やすい場所(作業員が確認できる場所)
  • 公共工事……工事関係者が見やすい場所に加え、公衆が見やすい場所にも掲示

現場の入口の掲示板に、許可票(いわゆる金看板)や労災保険関係成立票と並べて掲示されているのが施工体系図です。工事の途中で下請が増減したときは、そのつど台帳と体系図を速やかに更新しなければなりません。

作成から保存までの流れ

  1. ステップ1 下請契約の総額を確認する
    その工事で結ぶすべての下請契約の合計額が5,000万円(建築一式8,000万円)以上になるかを確認します。公共工事なら金額にかかわらず作成します。
  2. ステップ2 一次下請へ再下請負通知書の提出を求める
    一次下請が二次下請を使う場合、元請へ再下請負通知書を提出する義務があります。契約時に様式を配り、提出ルールを周知しておくと後が楽になります。
  3. ステップ3 台帳を作成し、契約書等を添付する
    元請・下請の許可番号、技術者、社会保険の加入状況を記載し、契約書の写しや資格者証の写しを添付します。
  4. ステップ4 施工体系図を作成して現場に掲示する
    分担関係をツリー状に図示し、現場の見やすい場所(公共工事は公衆の見やすい場所にも)へ掲示します。
  5. ステップ5 変更を反映し、工事後は保存する
    下請の追加・変更があればそのつど更新します。台帳は工事現場に備え置き、工事完了後は帳簿の添付書類として5年間保存します(新築住宅の建設工事は10年間)。

作成しなかった場合のリスク

施工体制台帳・施工体系図を作らない、記載に不備がある、現場に備え置いていない——こうした違反は、建設業法違反として指示処分や営業停止処分の対象になります。公共工事では、発注者による現場立入検査で台帳と体系図が確認されるため、不備はその場で指摘されます。

さらに、監督処分を受けると経営事項審査の点数(W点)が下がり、入札参加資格や指名にも影響します。目先の書類作成を省いた結果、公共工事の受注機会を失うことになりかねません。

よくある失敗

  • 一次下請から再下請負通知書が返ってこない……契約時に様式と提出期限を伝えておかないと、着工後に集めるのは大変です
  • 金額を1社ごとに見てしまう……判定は下請契約の総額です。1社2,000万円が3社なら6,000万円で対象になります
  • 旧基準(4,500万円・7,000万円)で判断している……令和7年2月1日から5,000万円・8,000万円です
  • 公共工事で「少額だから不要」と考える……公共工事は金額にかかわらず必要です
  • 下請が入れ替わったのに更新していない……台帳・体系図は工事の実態に合わせて更新する義務があります
  • 工事が終わったら捨ててしまう……工事完了後も5年間の保存義務があります

まとめ

施工体制台帳は、発注者から直接請け負った元請の特定建設業者が、下請契約の総額5,000万円(建築一式8,000万円)以上のときに作成する書類です。公共工事では金額にかかわらず作成し、写しを発注者に提出します。施工体系図は台帳の内容を図示して現場に掲示し、いずれも工事の実態に合わせて更新し、完了後は5年間保存します。書類の準備は契約段階から始まっているため、受注が決まった時点で下請への周知と様式の配布まで段取りしておくことが、現場を止めないコツです。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。あわせて特定建設業と一般建設業の違い主任技術者と監理技術者の違い建設工事の請負契約書の作り方もご覧ください。

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