建設業の監督処分とは?指示・営業停止・許可取消しの基準を解説 2026年度

行政から立入検査や事情聴取の連絡が入ったとき、経営者が最初に知りたいのは「うちの会社はどうなるのか」という一点だと思います。建設業法の監督処分は、内容の軽重によって3つの段階に分かれており、どこに当たるかで影響の大きさがまったく違います。

この記事では、3つの処分の違い、どの違反にどれくらいの営業停止が科されるのかという具体的な目安、そして処分そのものより長く効いてくる「公表」と「経審への影響」までを整理します。

監督処分は3段階に分かれている

監督処分は、軽いほうから指示処分・営業停止処分・許可取消処分の3つです。指示処分と営業停止処分の根拠は建設業法第28条にあります。

(指示及び営業の停止)第28条

国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合又はこの法律の規定(第十九条の三第一項、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四、第二十四条の五並びに第二十四条の六第三項及び第四項を除き、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成十二年法律第百二十七号。以下「入札契約適正化法」という。)第十五条第一項の規定により読み替えて適用される第二十四条の八第一項、第二項及び第四項を含む。第四項において同じ。)、入札契約適正化法第十五条第二項若しくは第三項の規定若しくは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成十九年法律第六十六号。以下この条において「履行確保法」という。)第三条第六項、第四条第一項、第七条第二項、第八条第一項若しくは第二項若しくは第十条第一項の規定に違反した場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。

一 建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。

二 建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。

(中略)

3 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第一項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項若しくは次項の規定による指示に従わないとき又は建設業を営む者が前項各号のいずれかに該当するとき若しくは同項の規定による指示に従わないときは、その者に対し、一年以内の期間を定めて、その営業の全部又は一部の停止を命ずることができる。
建設業法 第28条第1項第一号・第二号、第3項(指示処分と営業停止処分)

営業停止の上限は1年以内です。そしていちばん重いのが許可の取消しです。

(許可の取消し)第29条

国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該建設業者の許可を取り消さなければならない。

(中略)

七 不正の手段により第三条第一項の許可(同条第三項の許可の更新を含む。)又は第十七条の二第一項から第三項まで若しくは第十七条の三第一項の認可を受けた場合

八 前条第一項各号のいずれかに該当し情状特に重い場合又は同条第三項若しくは第五項の規定による営業の停止の処分に違反した場合
建設業法 第29条第1項第七号・第八号(許可の取消し)

条文が「取り消さなければならない」と書いている点に注意してください。取消事由に当たれば、行政庁に裁量の余地はなく必ず取り消されます。そして取消しを受けると、そこから5年間は許可を取り直せません(欠格要件)。詳しくは建設業許可の欠格要件をご覧ください。

どれに当たるかを決める基本の考え方

国土交通省は「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」を公表しており、各都道府県もこれに準じた基準を定めています。基本的な振り分けはシンプルです。

状況 原則としての処分
第28条第1項各号に当たる行為で、故意または重過失によるとき 営業停止処分
第28条第1項各号に当たる行為で、それ以外の事由によるとき 指示処分
第28条第1項各号以外の建設業法違反(第11条・第19条など) 指示処分
情状が特に重い場合、または営業停止処分に違反した場合 許可の取消し

つまり分かれ目は「わざとやったか、重大な不注意か」です。同じ違反でも、うっかりの届出漏れなら指示処分、意図的な虚偽なら営業停止という整理になります。

もうひとつ重要なのが繰り返しへの加重です。営業停止処分を受けた事業者が、その停止期間の満了後3年を経過するまでに再び同種の行為をした場合には加重されます。また指示処分を受けた日から3年以内に指示に違反して類似の行為をした場合には、情状を重くみて営業停止処分に引き上げられます。1回目より2回目のほうが格段に重くなる設計です。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

違反ごとの営業停止期間の目安

国土交通省の基準は、行為の類型ごとに停止期間の下限を示しています。主なものを整理します。

行為の類型 営業停止期間の目安
談合・贈賄等で代表権のある役員が刑に処せられた 1年間
談合・贈賄等で代表権のない役員・令3条使用人が刑に処せられた 120日以上
談合・贈賄等のその他の場合 60日以上
独占禁止法の排除措置命令・課徴金納付命令の確定 30日以上
公共工事の入札での虚偽申請(完成工事高の水増しを含む) 15日以上
一括下請負(丸投げ) 15日以上
主任技術者・監理技術者の不設置 15日以上
粗雑工事等による重大な瑕疵 7日以上
施工体制台帳・施工体系図の不作成または虚偽作成 7日以上
無許可業者等との下請契約 7日以上
建築基準法違反・廃棄物処理法違反等で役員等が拘禁刑に処せられた 7日以上
工事関係者事故で死亡者または3人以上の負傷者を生じさせた 3日以上

この表で見落とされがちなのが技術者の専任義務違反の扱いです。技術者を置かなかった場合は15日以上の営業停止ですが、置いてはいるが専任義務に違反している場合は、まず指示処分です。ただし指示に従わなければ7日以上の営業停止に移ります。技術者の配置ルールは主任技術者と監理技術者の配置で解説しています。

また、虚偽申請には経審の点数の水増しも含まれる点にご注意ください。完成工事高を水増しした経審結果を発注者に提出した場合も、15日以上の営業停止の対象と明記されています。

営業停止期間中でもできること・できないこと

「営業停止」というと会社の活動が全部止まるように聞こえますが、実際に止まるのは請負契約の締結とそれに付随する行為です。基準の別表で線引きが示されています。

期間中にできないこと 期間中でもできること
新たな請負契約の締結(仮契約に基づく本契約を含む) 処分前に締結した請負契約に基づく工事の施工
処分前の契約の変更のうち工事の追加に係るもの 施工の瑕疵に基づく修繕工事等の施工
上記に関連する入札・見積り・交渉 アフターサービス保証に基づく修繕工事等
停止期間満了後の新たな契約に向けた入札・見積り 災害時における緊急を要する工事の施工
地域・業種の限定が付された場合はその範囲の上記行為 建設業の許可・経審・入札参加資格審査の申請
  請負代金の請求・受領・支払い、運転資金の借入れ

実務上とくに痛いのが、停止期間が明けた後の契約に向けた入札・見積りも期間中はできないという点です。停止が明けた瞬間に受注を再開できるわけではなく、営業活動の再開から契約までのタイムラグが上乗せされます。実質的な影響は、処分日数よりも長く続くとお考えください。

一方で、進行中の工事は止まりません。発注者に迷惑をかけないための整理であり、許可や経審の申請も期間中に行えます。

処分は公表され、経審にも響く

監督処分の影響が長引く最大の理由が、公表と経審です。

基準では「監督処分の内容については、速やかに公表することとする」と定められています。処分情報は国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」に掲載され、直近5年分が誰でも検索できる状態に置かれます。取引先や元請の与信チェックで見つかることを前提に考える必要があります。

もうひとつが経営事項審査への影響です。経審のW点には「法令遵守の状況」という項目があり、指示処分・営業停止処分を受けると最大で30点の減点となります。W点のウェイトは0.15ですから、総合評定値(P点)にも影響します。P点が下がれば入札参加資格の等級(ランク)が下がり、応札できる工事の規模そのものが変わってきます。入札参加資格の仕組みは入札参加資格審査の申請で解説しています。

加えて、多くの発注者は独自に指名停止措置を設けています。建設業法の監督処分とは別の枠組みで、一定期間その発注者の入札に参加できなくなります。処分そのものは7日でも、公表5年・経審の減点・指名停止が重なり、影響は数年に及びます

調査から処分までの流れ

実際の手続きは、次のように進みます。

  1. ステップ1 端緒(通報・立入検査・他法令の処分)
    発注者や近隣からの情報提供、定期の立入検査、他の法令違反の確定などをきっかけに調査が始まります。基準では、調査等は原則として行為があった時から3年以内に行うものとされています。
  2. ステップ2 事実関係の調査・報告徴収
    行政庁から報告や資料の提出を求められます。ここでの説明が処分の重さを左右します。事実と異なる説明をすると、それ自体が不誠実な行為と評価されかねません。
  3. ステップ3 聴聞または弁明の機会
    営業停止・許可取消しのような重い処分では、行政手続法に基づく聴聞が行われます。事業者側が意見と証拠を示せる場です。準備なしで臨まないでください。
  4. ステップ4 処分の決定と通知
    処分の内容・期間・対象となる地域や業種の範囲が決まり、書面で通知されます。停止に地域や業種の限定が付くこともあります。
  5. ステップ5 公表
    処分内容が速やかに公表され、ネガティブ情報等検索サイトに5年間掲載されます。
  6. ステップ6 再発防止の体制整備
    指示処分の場合、行政庁は指示に従っているかを点検・調査します。3年以内に類似の行為を繰り返すと営業停止へ加重されますので、体制の見直しが実質的な義務になります。

なお、贈賄の容疑で役員が逮捕されたような社会的影響の大きい事案では、処分に至る前の段階で法令遵守のための社内体制の整備を求める勧告が書面で行われることがあります。勧告を受けた時点が、実質的な立て直しの最後の機会です。

よくある失敗

  • 「うっかりだから軽い」と決めつけた:重過失と評価されれば営業停止です。判断するのは行政庁です
  • 施工体制台帳を作っていなかった:7日以上の営業停止の対象です。下請を使う元請は必ず作成してください
  • 経審の完成工事高を水増しした:虚偽申請として15日以上の営業停止に加え、告発の対象にもなり得ます
  • 停止明けの案件の見積りを期間中に進めた:停止期間中はできない行為です
  • 聴聞に何も準備せず出席した:事実関係と是正の取組みを示せる資料を用意すべき場です
  • 1回目の指示処分を軽く見た:3年以内の再発は営業停止に引き上げられます

処分を受けないための備え

予防の要点は、監督処分の類型がほぼ「契約・技術者・体制」の3点に集約されることを理解しておくことです。

また、許可事項に変更があったときの届出漏れも第11条違反として指示処分の対象になります。届出の期限は建設業許可の変更届にまとめています。

東京都は独自に「建設業者の不正行為等に対する監督処分の基準」を定めており、令和8年1月7日施行の版が最新です。国の基準と概ね同じ考え方ですが、細部の運用は東京都の基準で定められています。

費用と期間の目安

監督処分そのものに手数料はかかりません。費用が発生するのは、処分後の立て直しの局面です。許可取消しを受けた場合は5年の欠格期間を経てからの新規申請となり、東京都知事許可なら申請手数料9万円に加えて、経営業務の管理責任者・営業所技術者の要件を一から証明し直す必要があります。

当事務所では、行政からの照会や立入検査を受けた段階での体制整備のご相談、処分後の許可の再取得のお手伝いに対応しています。報酬の目安は、法令遵守体制の点検と書式整備で10万円台からです(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。なお、処分の取消しを求める訴訟や審査請求の代理は弁護士の業務ですので、必要な場合は連携してご案内します。

まとめ

建設業の監督処分について、押さえるべき点は3つです。

  • 3段階に分かれ、分かれ目は故意・重過失かどうか。情状が特に重ければ許可取消し
  • 営業停止で止まるのは契約と入札・見積り。進行中の工事や許可・経審の申請は続けられる
  • 影響は処分日数より長い。公表5年・経審W点の減点・指名停止が重なる

そして最も重要なのは、1回目の指示処分をどう受け止めるかです。3年以内の再発は営業停止に引き上げられます。指示を受けた時点で体制を作り直せるかどうかが、その後の数年を分けます

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。

行政書士 藤原友事務所(東京都世田谷区大原)では、建設業許可の取得・維持から、契約書面や施工体制の整備といった法令遵守体制づくりまでお手伝いしています。初回のご相談は無料で、お電話(03-4500-1030)のほか、オンラインでのご相談にも対応しています。行政から照会が入った段階でも、早めにご相談ください。

出典