建設業許可の実務経験10年の証明方法|請求書と常勤資料の集め方 2026年度
建設業許可の相談で最も多い行き詰まりが、技術者の要件です。国家資格を持つ社員がいない会社では、実務経験10年という道を選ぶことになりますが、ここで多くの方が「10年働いてきたことは間違いないのに、それをどう証明すればよいのか分からない」という壁にぶつかります。
結論から申し上げると、実務経験の証明は「経験を積んだこと」と「その間ずっと常勤だったこと」の2本立てで、必要な資料の量がかなり多くなります。この記事では、東京都の運用を例に、集めるべき資料と集め方のコツを具体的に整理します。

資格がなくても「実務経験10年」で営業所技術者になれる
建設業許可を受けるには、営業所ごとに専任の技術者(営業所技術者。従来「専任技術者」と呼ばれてきた立場です)を置く必要があります。建設業法はその要件を次のように定めています。
(許可の基準)第7条
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。(中略)
二 その営業所ごとに、営業所技術者(建設工事の請負契約の締結及び履行の業務に関する技術上の管理をつかさどる者であつて、次のいずれかに該当する者をいう。第十一条第四項及び第二十六条の五において同じ。)を専任の者として置く者であること。
(中略)
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
建設業法 第7条第2号ロ(実務経験10年による営業所技術者の要件)
条文はこれだけです。資格の有無は問われていません。ただし、行政庁は「10年やってきました」という自己申告では認めてくれません。証明資料をそろえて客観的に裏づける必要があり、そこが最大の関門になります。技術者要件の全体像は建設業許可の専任技術者になるには?をご覧ください。
そもそも実務経験に入る仕事・入らない仕事
東京都の手引では、実務経験を「許可を受けようとする建設工事の施工に関する技術上の経験」と説明しています。具体的には次のように整理されます。
- 含まれるもの:建設工事の施工を指揮・監督した経験、実際に施工に携わった経験、現場監督技術者としての経験
- 含まれないもの:工事現場の単なる雑務、事務の仕事
また、次の制約にも注意が必要です。
- 期間の重複は認められません。2業種を実務経験で申請するなら、原則として業種ごとに10年ずつ、合計20年以上の経験が必要です
- 附帯工事の経験は使えません。主目的の工事に含まれる別業種の工事の経験は、その別業種の証明には使えません
- 電気工事・消防施設工事の無資格者の実務経験は、電気工事士法や消防法の制約から原則として認められません
- 機械器具設置工事は、工期の全部ではなく現場での組立て・設置工事の期間のみが実務経験期間になります
証明は2本立て――「経験」と「常勤」の両方が要る
ここが本記事の核心です。行政庁は、①その会社に対象業種の工事実績があったことと、②その期間、本人がその会社に常勤していたことの2つを確認し、両方がそろって初めて「その人が経験を積んだ」と推定します。
言い換えると、会社に工事実績があるだけでは足りませんし、本人が在籍していただけでも足りません。10年分の資料を、途切れなく両方そろえる必要があります。
①経験を証明する資料は、許可の有無で変わる
証明する期間に、その会社が建設業許可を持っていたかどうかで、必要な資料がまったく変わります。
| 証明期間の状況 | 必要になる資料 |
|---|---|
| 建設業許可を持っていた | 建設業許可通知書、または受付印のある許可申請書・変更届出書・廃業届の写し。証明したい業種に対応するものが必要です。東京都知事許可なら、許可番号・業種・許可期間を様式第9号の備考欄に書くことで資料を省略できます |
| 建設業許可を持っていなかった | 業種が明確に分かる、期間を通年でカバーする工事請負契約書・注文書・請求書などの写し |
大切なのは、許可を持っていた期間であっても、実際に工事を行っていた期間の合計が10年以上必要という点です。許可があった年数がそのまま実務経験年数になるわけではありません。
②常勤を証明する資料
常勤性については、期間を通年でカバーする資料が必要です。東京都では、申請日現在の常勤性を示す資料として次のようなものが挙げられています。
- 氏名・生年月日が分かるマイナンバーカード(マイナ保険証)の表面、または資格確認書の写し
- 法人の場合はさらに、健康保険・厚生年金保険の標準報酬決定通知書、住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用)、直近決算の法人用確定申告書(役員報酬明細つき)などのいずれか
- 個人の場合は、直近決算の個人所得税確定申告書の写し
ここで実務上とても重要な変更があります。東京都では、従来は健康保険証の写しで期間の確認を行っていましたが、令和7年12月2日以降に提出する申請・届出では、健康保険証の写しは使えません。確認する期間が令和7年12月1日以前であっても、提出が同年12月2日以降であれば新しい資料が必要になりますので、手元の資料を早めに確認しておいてください。
請求書等は「1月1件」――10年分の集め方と期間確認表
許可を持っていなかった期間を請求書等で証明する場合、東京都の運用は次のとおりです。ここを知らずに資料集めを始めると、集める量を大きく読み違えます。
- 原則は1月1件で1か月分の経験と数え、請求書等の発行月で判断します。単純計算では10年=120か月分ということになります
- 請求書や押印のない注文書は、入金が確認できる資料(通帳の写しなど)による補足が必要です。請求書等と入金確認資料を1か月ずつ1組にして、必要な月数分を束ねて提出します
- 電子契約の場合は、基本契約書などで双方が電子契約に同意していることを確認できれば、押印に代えることができます
- 請求書等は、件名や内訳書から証明したい業種の建設工事であることが明確に分かる必要があります
ただし、負担を軽くする仕組みも用意されています。「経営経験・実務経験期間確認表」を提出すれば、請求書等の間隔が四半期(3か月)未満であれば、その間の請求書等の写しの提出を省略できます。120件をすべて集めるのは現実的でないことが多いため、この確認表を使えるかどうかが作業量を大きく左右します。
なお、1件の工期が著しく短い場合は、1か月に複数の工事経験があることが分かる資料(建設業を主とする法人なら確定申告書の売上高など)を追加で求められることがあります。
10年を短縮できるケースもある
10年分の資料集めはかなりの負担ですので、短縮できる道がないかを先に確認する価値があります。
- 指定学科の卒業:大学・短期大学・高等専門学校の指定学科を卒業していれば3年、高等学校の指定学科なら5年に短縮されます
- 技術検定の第一次検定合格:令和5年7月1日から、技術検定合格者を指定学科卒業者と同等とみなす取扱いが始まりました。1級の第一次検定合格者は合格後3年、2級の第一次検定合格者は合格後5年で足ります(指定建設業と電気通信工事業を除く)。土木施工管理・造園施工管理は土木工学、建築施工管理は建築学、電気工事施工管理は電気工学、管工事施工管理は機械工学に対応します
- 業種間の振替え:定められた組合せに限り、対象業種と振替元の業種を合わせて12年以上(対象業種については8年を超える経験)を証明することで認められます。土木一式からとび・土工、建築一式から大工・屋根・内装などの組合せがあります。ただし指定学科による短縮と併用はできません
特に、指定学科を出ていない方でも第一次検定の合格で大幅に短縮できる点は見落とされがちです。社内の技術者の資格状況を洗い出すところから始めることをおすすめします。
実務経験証明書(様式第9号)の書き方と前職への依頼
証明の中心となる書類が実務経験証明書(様式第9号)です。記載要領では次のように定められています。
- 許可を受けようとする建設工事の種類ごとに、被証明者1人について、証明者別に作成する
- 「職名」欄には、被証明者が所属していた部課名などを記載する
- 「実務経験の内容」欄には、従事した主な工事名などを具体的に記載する
- 「合計 満 年 月」欄に実務経験年数の合計を記載する
証明者は、原則として当時所属していた会社の現在の代表取締役です。つまり、前職での経験を使う場合は前の勤務先に証明を依頼する必要があります。ここが心理的に最も難しいところで、円満に退職していないケースや、会社がすでに解散しているケースでは行き詰まりがちです。
証明者の協力が得られないときは、様式第9号の「使用者の証明を得ることができない場合はその理由」欄に事情を記載したうえで、本人が保管している契約書・注文書・請求書などで補強する方法を検討します。ただし、どこまで認められるかは行政庁の判断になりますので、資料を集める前に事前相談で見通しを立てるのが安全です。【要確認】自己証明の可否や必要な補強資料の範囲は、申請先の行政庁への確認から書類の収集まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。
資料集めから許可までの流れ
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- ステップ1 短縮できる道がないかを先に確認する
- 指定学科の卒業証明書、技術検定の第一次検定合格証明書、保有資格を洗い出します。ここで3年や5年に短縮できれば、その後の作業量が劇的に減ります。
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- ステップ2 証明する期間と証明者を決める
- どの会社での、いつからいつまでの経験で10年を組み立てるかを設計します。複数社にまたがる場合は、会社ごとに様式第9号を作成します。
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- ステップ3 経験と常勤の資料を並行して集める
- 許可のあった期間は許可通知書等、なかった期間は請求書等と入金確認資料を1か月ずつ1組にして束ねます。あわせて常勤性の資料も期間分そろえます。期間確認表が使えるかを早めに確認しておきます。
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- ステップ4 事前相談で資料の過不足を確認する
- そろえた資料を持って窓口で相談し、認められる期間と不足資料を確認します。ここを飛ばして本申請に進むと、差し戻しで大きく時間を失います。
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- ステップ5 許可申請書を作成して提出する
- 様式第9号を含む申請書一式を作成して提出します。東京都知事許可の場合、標準処理期間は許可申請書の受付後25日(土日祝日等の閉庁日を除く)とされています。
よくある失敗
- 期間が途中で途切れている:請求書が数か月分見つからず、そこで10年が分断されてしまう
- 入金確認資料を用意していない:請求書だけそろえても通帳の写しがなく、証明として認められない
- 業種が読み取れない:請求書の件名が「工事一式」となっていて、どの業種の工事か分からない
- 2業種を10年の経験で同時申請しようとした:期間の重複は認められないため、20年分が必要になる
- 前職への証明依頼を後回しにした:申請直前に断られ、計画そのものを組み直すことになる
資料は古いものほど失われやすいため、実務経験での許可取得を考え始めた時点で、まず手元にある資料の棚卸しをすることをおすすめします。許可申請全体の必要書類は建設業許可申請の必要書類チェックリストにまとめています。
まとめ
実務経験10年での営業所技術者の証明は、「経験を積んだこと」と「その間常勤だったこと」の両方を、期間分そろえる作業です。請求書等による証明は原則1月1件で数え、期間確認表を使えば四半期未満の間隔で省略できます。まずは指定学科や技術検定による短縮の可能性を確認し、そのうえで資料の棚卸しから始めるのが遠回りに見えて近道です。行政書士・藤原友事務所(東京都世田谷区大原)では、資料の棚卸しから証明の組み立て、事前相談への同行までお手伝いしています。初回のご相談は無料です(電話:03-4500-1030・オンライン相談可)。
建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。




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