工事経歴書の書き方|記載順・7割ルール・軽微な工事10件を解説 2026年度

決算変更届(事業年度終了届)の作成でいちばん手が止まるのが、この工事経歴書です。「請け負った工事を全部書くのか」「どの順番で並べるのか」「小さな工事はどこまで書けばよいのか」。毎年のことなのに、担当者が代わるたびに同じところでつまずく書類でもあります。

実は工事経歴書には、書く順番と書く範囲がきちんと決められています。しかもそのルールは、経営事項審査(経審)を受けるかどうかで丸ごと変わります。ここを取り違えたまま作成すると窓口で差し戻され、提出が期限ぎりぎりになってしまいます。この記事では、様式第2号の記載ルールを国土交通省令の記載要領と東京都の手引にそって、記入例を交えながら整理します。

工事経歴書とは?決算変更届と許可申請で必ず出す書類

工事経歴書は、その事業年度に完成した工事(完成工事)と、期末時点でまだ完成していない工事(未成工事)を一覧にした書類です。様式第2号として定められており、次の2つの場面で提出します。

  • 決算変更届(事業年度終了届):許可業者が毎年提出する届出。財務諸表などと一緒に出します
  • 新規許可申請・業種追加・更新:直前1期分を添付します

このうち毎年必ず発生するのが決算変更届です。建設業法は提出期限を次のように定めています。

(変更等の届出)第11条

(中略)

2 許可に係る建設業者は、毎事業年度終了の時における第六条第一項第一号及び第二号に掲げる書類その他国土交通省令で定める書類を、毎事業年度経過後四月以内に、国土交通大臣又は都道府県知事に提出しなければならない。
建設業法 第11条第2項(毎事業年度経過後4か月以内の提出義務)

つまり決算日から4か月以内、3月決算なら7月末が期限です。この届出を出していないと許可の更新や業種追加が受け付けてもらえませんので、工事経歴書は「毎年必ず正しく作る」書類だとお考えください。届出全体の流れは建設業許可の決算変更届(事業年度終了届)で解説しています。

記載のルールは「経営事項審査を受けるかどうか」で変わる

ここが最大の分かれ道です。同じ様式第2号でも、記載を要する工事の範囲がまったく違います。

項目 経営事項審査を受けない場合 経営事項審査を受ける場合
記載する工事 主な完成工事(東京都の手引では10件程度)と主な未成工事 元請7割・全体7割のルールに従って記載し、続けて主な未成工事
並べ方 請負代金の額の大きい順 元請工事を大きい順、続けて残りを大きい順
消費税 財務諸表に合わせる 原則は税抜き(免税事業者は税込み)
作成の手間 比較的軽い 件数が多く、集計と突合せが必要

公共工事の入札に参加する会社は経営事項審査を毎年受けますので、そちらのルールで作ることになります。制度そのものは経営事項審査(経審)とは?をご覧ください。以下では、実務で問題になりやすい経営事項審査を受ける場合を詳しく見ていきます。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

経営事項審査を受ける場合の記載順(元請7割から全体7割へ)

国土交通省令が定める記載要領では、次の3段階で書くこととされています。

  1. ステップ1 元請工事を、元請だけの完成工事高の7割を超えるまで書く
    発注者から直接請け負った工事(元請工事)だけを取り出し、請負代金の額が大きい順に並べます。書いた金額の合計が、元請工事の完成工事高合計のおおむね7割を超えたところで、ここはいったん終了です。
  2. ステップ2 続けて、残りの元請工事と下請工事を大きい順に書く
    ステップ1で書かなかった元請工事と下請工事をまとめて、また請負代金の額が大きい順に並べます。今度はすべての完成工事高の合計のおおむね7割を超えるところまで書きます。金額の大きい下請工事があっても、必ず元請工事の下に書くのがルールです。
  3. ステップ3 最後に、主な未成工事を大きい順に書く
    期末時点で完成していない工事を、請負代金の額が大きい順に続けて記載します。

数字で見たほうが早いので、東京都の手引に載っている記入例で確認します。とび・土工・コンクリート工事で、完成工事高の合計が8億円(うち元請5億円、下請3億円)のケースです。

  • ステップ1の目標:元請5億円 × 0.7 = 3億5,000万円。大きい順にA工事1億8,000万円・B工事1億2,000万円・C工事6,000万円と書いた時点で合計3億6,000万円となり、7割を超えるのでここまで
  • ステップ2の目標:全体8億円 × 0.7 = 5億6,000万円。続けてD工事(元請4,500万円)・ア工事(下請1億5,000万円)・イ工事(下請4,000万円)まで書くと合計5億9,500万円となり、7割を超えるのでここで終了

このように、7割を「超えたところ」で止めてよいのがポイントで、全件を書く必要はありません。なお、完成工事高の合計が1,000億円を超える場合は、その額を超える部分の工事は記載不要とされています。

軽微な工事は10件を超えて書かなくてよい

小規模な工事が大量にある会社にとって、ここがいちばんありがたいルールです。記載要領では、軽微な建設工事は10件を超えて記載することを要しないとされています。

軽微な建設工事とは、許可がなくても請け負える規模の工事のことで、具体的には次の金額未満のものです。

  • 建築一式工事以外:税込500万円未満
  • 建築一式工事:税込1,500万円未満(または木造住宅で延べ面積150平方メートル未満)

7割に届いていなくても、軽微な工事を10件書いた時点でそこから先は書かなくてよいわけです。件数はステップ1で書いた分とステップ2で書いた分を通算して数えます。

逆に言えば、500万円以上の工事は10件ルールでは省略できません。「小さい工事ばかりだから10件で終わり」と思い込み、500万円以上の工事を書き漏らすのがよくある誤りです。

業種ごとに1枚・税抜きが原則――そのほかの記載ルール

記載要領と東京都の手引から、実務で効いてくるルールをまとめます。

  • 建設工事の種類ごとに用紙を分ける:許可を受けている業種ごとに作成します。1件の請負契約を分割して複数の工事経歴にしてはいけません
  • 実績がない業種も「実績なし」と書いて添付する:実績のない業種が複数あるときは1枚にまとめてかまいません
  • 「合計」欄は最終ページだけ:ここに書くのは「この用紙に書いた工事の合計」ではなく、直前決算期の業種ごとの全工事の件数と金額です。様式第3号(直前3年の各事業年度における工事施工金額)や財務諸表の完成工事高と一致していなければなりません
  • 「小計」欄はページごと:そのページに記載した工事の件数と金額を書きます
  • 共同企業体(JV)の工事:「JVの別」欄に記載し、請負代金の額は全体の額に出資割合を乗じた額(または分担した工事額)を書きます
  • 個人名が特定されないように書く:注文者は「A」、工事名は「A邸新築工事」のように記載します。一方、法人名やビル名などの施設名はそのまま書いてかまいません
  • 内訳欄の記載:土木一式工事のプレストレストコンクリート構造物工事、とび・土工・コンクリート工事の法面処理、鋼構造物工事の鋼橋上部工事は、該当があるとき金額を区分して記載します

「合計欄が財務諸表と一致していない」というのは差し戻しの定番です。工事経歴書だけを単体で作らず、財務諸表・様式第3号とセットで数字を突き合わせながら作るのが結局いちばんの早道になります。財務諸表側の作り方は建設業の財務諸表(決算変更届)の作り方をご覧ください。

配置技術者の欄は誰の名前を書くのか

工事経歴書には、完成工事についてその現場に置いた主任技術者または監理技術者の氏名を書き、どちらに当たるかにチェックを入れます。ここも迷いやすい箇所です。

  • 建設業者は、元請・下請にかかわらずすべての工事現場に主任技術者を配置しなければなりません
  • 発注者から直接請け負い、下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる場合は、主任技術者に代えて監理技術者を配置します
  • 工事の途中で技術者が交代した場合は、交代前の人も含めて全員を記載します
  • 監理技術者補佐を置いた場合や、特定専門工事に該当して主任技術者を配置しなかった場合は、その旨を記載します
  • 工事現場が外国の場合は国名を書き、配置技術者は記入しません

なお、監理技術者を要する下請契約の金額基準は、令和7年2月1日施行の政令改正で引き上げられた後の額です(改正前は4,500万円・建築一式7,000万円)。古い手引や社内の様式集を使っていると旧額のままのことがありますのでご注意ください。

よくある差し戻しの原因

窓口で指摘を受けやすいのは、だいたい次のパターンです。

  • 並び順が金額順になっていない(工期順や注文者順に並べてしまう)
  • 金額が大きいからと、下請工事を元請工事より上に書いてしまった
  • 合計欄に「この用紙に書いた分の合計」を書いてしまい、財務諸表の完成工事高と合わない
  • 実績のない業種の用紙を添付していない
  • 税込みと税抜きが財務諸表とちぐはぐになっている
  • 工事名が「一式工事」「補修工事」など抽象的で、場所も内容も分からない
  • 1件の契約を複数の工事に分けて書いてしまった
  • 注文者欄に個人名をそのまま書いてしまった

いずれも知っていれば防げるものばかりです。逆に言えば、初めて作る年に一度きちんと型を作っておけば、翌年からは同じ形で回していけます。

作成にかかる期間の目安と行政書士に依頼するメリット

決算変更届一式(工事経歴書・財務諸表・様式第3号など)の作成は、決算書と工事の資料をいただいてから1〜2週間が目安です。届出そのものに行政庁の手数料はかかりません。決算日から4か月という期限がありますので、決算が固まったタイミングでご相談いただくと余裕をもって進められます。

行政書士に依頼するメリットは、経営事項審査や入札参加資格申請まで見据えて数字を作れる点にあります。工事経歴書の完成工事高は経審の評点にそのまま影響しますので、単なる書類作成ではなく、翌年以降の入札戦略とつなげて考えることが大切です。報酬は業種数や工事件数、経営事項審査の有無によって変わります(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。

まとめ

工事経歴書は、経営事項審査を受けるかどうかで記載範囲が変わる書類です。経審を受ける場合は「元請だけで7割超まで、続けて全体で7割超まで、最後に未成工事」の3段階で並べ、軽微な工事は通算10件を超えて書く必要はありません。そして合計欄は財務諸表・様式第3号と一致していることが必須です。毎年のことだからこそ、最初の型づくりが肝心になります。行政書士・藤原友事務所(東京都世田谷区大原)では、決算変更届の作成代行から経営事項審査、入札参加資格申請までを一貫してお手伝いしています。初回のご相談は無料です(電話:03-4500-1030・オンライン相談可)。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。

出典