会社の機関設計とは?取締役会・監査役の要否と選び方を解説 2026年版

会社をつくるときに、意外と後回しにされがちなのが「誰を、何人置くか」という設計です。

ひな型どおりに「取締役会を置く」としてしまい、あとから「役員を3人そろえるのが大変」「毎回、取締役会の議事録が要るとは思わなかった」とご相談に来られる方は少なくありません。

この「どの機関を置くか」の組み合わせを決めることを機関設計といいます。会社の動きやすさと、将来の資金調達・許認可・事業承継のしやすさを左右する、地味ですが効き目の大きい設計です。

結論|取締役1人から会社はつくれます

まず出発点を押さえてください。株式会社に必ず置かなければならないのは、株主総会と取締役だけです。

(株主総会以外の機関の設置)第三百二十六条

株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。

2 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。

会社法 第326条第1項・第2項(株主総会以外の機関の設置)

条文の書きぶりのとおりで、取締役は1人で足ります。取締役会も監査役も「定款で定めれば置くことができる」という位置づけです。ひとりで起業する方は、取締役1人だけの会社で何の問題もありません。

小さな会社ほど、機関は少ないほうが動きやすくなります。機関を増やすと決議の手続きが増え、役員が欠けたときに補充する義務まで生じます。「立派に見えるから」という理由だけで機関を足すのは、後の負担になります。

まず「公開会社かどうか」で世界が分かれます

機関設計を考えるときの分かれ道は、資本金の額でも従業員数でもありません。株式に譲渡制限があるかどうかです。

(定義)第二条

この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(中略)

五 公開会社 その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。

六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。

イ 最終事業年度に係る貸借対照表(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、同条の規定により定時株主総会に報告された貸借対照表をいい、株式会社の成立後最初の定時株主総会までの間においては、第四百三十五条第一項の貸借対照表をいう。ロにおいて同じ。)に資本金として計上した額が五億円以上であること。

ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。

会社法 第2条第五号(公開会社)・第六号(大会社)

ここでいう「公開会社」は、上場しているという意味ではありません。発行する株式のすべてに譲渡制限を付けていれば、その会社は「公開会社でない株式会社」=非公開会社です。中小企業のほとんどはこちらに当たります。

非公開会社は、機関設計の自由度がとても高く、役員の任期も最長10年まで伸ばせます。任期の数え方は役員の任期と重任登記で詳しく解説しています。

なお、資本金として計上した額が5億円以上、または負債の合計額が200億円以上になると「大会社」となり、会計監査人(公認会計士または監査法人)を置く義務が生じます。増資を重ねる予定がある会社は、この線を頭の隅に置いておいてください。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

取締役会を置くと、何が変わるのか

いちばん多いご質問がこれです。取締役会を置くかどうかで、会社の運営はかなり変わります。

比較する点取締役会を置かない会社取締役会設置会社
取締役の人数1人以上3人以上(会社法第331条第5項)
監査役任意原則として必要(会計参与で代えられる場合あり)
重要な意思決定取締役の過半数で決定取締役会の決議が必要
株主総会で決められること会社に関する一切の事項法律・定款で定めた事項に限られる
招集の手続き比較的簡素取締役会は原則1週間前までに招集通知
代表取締役置かなくてもよい(各自代表)必ず選定する

取締役会を置くと取締役は3人以上必要になり、任期が来るたびに全員の重任登記をしなければなりません。登記を怠ると100万円以下の過料の対象です。設立時に頭数をそろえられても、数年後に1人辞めたときに欠員となり、慌てて後任を探すことになりがちです。

取締役会を置く義務がある会社は、条文で決まっています。

(取締役会等の設置義務等)第三百二十七条

次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。

一 公開会社

二 監査役会設置会社

三 監査等委員会設置会社

四 指名委員会等設置会社

2 取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。

(中略)

5 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない。

会社法 第327条第1項第一号〜第四号・第2項・第5項(取締役会等の設置義務等)

裏を返せば、株式に譲渡制限を付けた非公開会社であれば、取締役会を置くかどうかは自由に選べます。そして、取締役会を置くなら監査役も原則としてセットになる、という関係です。

監査役は何をする人か

監査役は、取締役の仕事ぶりを株主の代わりにチェックする役職です。中小企業では、税理士の先生や、経営に関わらない親族に就任いただくことが多くあります。

ここで知っておいていただきたいのが、監査の範囲を「会計に関するもの」だけに限定できるという仕組みです。

(定款の定めによる監査範囲の限定)第三百八十九条

公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第三百八十一条第一項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。

会社法 第389条第1項(定款の定めによる監査範囲の限定)

この定めを置くと、監査役は決算書類の確認を担当し、取締役の業務執行そのものには踏み込みません。就任のハードルが下がるため、非公開会社ではよく使われます。ただし、この定款の定めがあることは登記事項ですので、定款に書いたつもりで登記していない、ということがないようにしてください。

監査役の任期は原則4年で、非公開会社なら定款で10年まで伸ばせます(会社法第336条)。取締役より長い点にご注意ください。

中小企業で実際によく使われる3つの型

選択肢は理論上たくさんありますが、実務でご提案するのはおおむね次の3つです。

型1|取締役1人(機関は最小)

ひとり会社や、家族だけで始める会社の標準形です。意思決定が速く、維持コストが最も低いのが利点です。取締役が1人なら、その人が当然に代表取締役になります。デメリットは、対外的な体裁が軽く見られる場面があることと、その人に何かあったとき会社が止まることです。

型2|取締役3人+監査役1人(取締役会設置会社)

取引先や金融機関から組織としての体裁を求められる場合、あるいは将来の増資・上場を視野に入れる場合の型です。重要な決定を取締役会の決議として記録に残せるため、責任の所在が明確になります。議事録の作り方もあわせてご確認ください。

型3|取締役2〜3人(取締役会は置かない)

共同創業で複数の取締役を置きたいけれど、取締役会の手続きまでは負いたくない、という場合です。取締役が2人以上いて取締役会を置かない会社では、業務執行は取締役の過半数で決定し、代表取締役を定めなければ各取締役がそれぞれ会社を代表します。代表権を1人に集めたい場合は、定款または株主総会の決議で代表取締役を定めます。

許認可を取るなら、機関設計は先に決めてください

ここが、当事務所がとくにお伝えしたい点です。

許認可の要件が、機関設計そのものを縛ることがあります。役員の人数や常勤性が要件になっている許認可では、機関設計を決めてから定款をつくらないと、設立後に定款変更をやり直すことになります。

たとえば建設業許可では、常勤役員等(経営業務の管理責任者)と営業所技術者を置く必要があり、この「常勤の役員」という言葉が取締役の配置に直結します。また、欠格要件の審査は役員全員に及びますので、名前だけ借りて取締役に入っていただくと、その方の過去が会社の許可を止めてしまうことがあります。

許認可を前提とした会社設計は許認可が必要な事業の会社設立で解説しています。

機関設計を決める流れ

  1. ステップ1 株式に譲渡制限を付けるか決める
    ここがすべての起点です。中小企業は原則として全株式に譲渡制限を付け、非公開会社にします。自由度が最も高くなります。
  2. ステップ2 関わる人と、その役割を書き出す
    出資する人、経営する人、名前だけ関わる人を分けて整理します。出資と経営は別物ですので、株主と取締役を混同しないよう紙に書いて確かめます。
  3. ステップ3 取締役会を置くかを判断する
    取締役を3人以上、継続して確保できるかが判断の軸です。確保できないなら置かない設計にします。
  4. ステップ4 監査役の要否と監査の範囲を決める
    取締役会を置くなら原則として監査役が必要です。会計に関するものへ限定するなら、その旨を定款に定め、登記します。
  5. ステップ5 許認可の要件と突き合わせる
    予定している許認可の人的要件・常勤性の要件と、決めた機関設計が矛盾しないかを確認します。ここで矛盾が見つかればステップ3へ戻ります。
  6. ステップ6 役員の任期を決める
    非公開会社なら取締役10年・監査役10年まで伸長できます。人の入れ替わりが想定されるなら、あえて短く設定するほうが安全です。
  7. ステップ7 定款に落とし込み、設立登記へ進む
    決めた内容を定款の機関に関する条項として記載します。作成の手順は会社の定款の作り方と会社設立の流れをご覧ください。

よくある失敗

ひとつめは、ひな型のまま取締役会設置会社にしてしまうことです。市販の定款例やインターネット上の書式は、取締役会を置く前提のものが混じっています。取締役が1人しかいないのに取締役会設置と定めてしまうと、そもそも成立しません。

ふたつめは、監査役の任期を忘れることです。取締役の任期だけをカレンダーに入れていて、任期4年(または10年)の監査役の重任を落とすケースが目立ちます。役員の任期は、会社ごとに一覧表にして管理してください。

みっつめは、機関を減らす変更を軽く見ることです。取締役会を廃止する、監査役を置かないことにする、といった変更は定款変更(株主総会の特別決議)と登記が必要です。設立時に「とりあえず」で決めた設計を後で戻すには、それなりの手間と費用がかかります。

設立直後にやるべき届出は会社設立後にやること一覧に、合同会社という選択肢との比較は株式会社と合同会社の違いにまとめています。

まとめ

機関設計は、法律で決まった型を選ぶ作業ではなく、これから会社をどう動かすかを先に決める作業です。株式に譲渡制限を付けた非公開会社であれば、取締役1人という最小構成から、取締役会と監査役を備えた構成まで自由に選べます。人を増やすほど手続きが増えるという事実と、許認可の要件から逆算するという視点。この2つを押さえておけば、大きく外すことはありません。

会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。

当事務所では、許認可を見据えた会社の制度設計から、定款・議事録などの書面作成までお手伝いしています。「取締役会は置くべきか」「監査役に誰を頼めばよいか」といったご相談も歓迎です。お電話(03-4500-1030)またはオンラインでの無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)

※設立登記・変更登記の申請代理は司法書士、税務の判断と申告は税理士の業務です。当事務所では必要に応じて各専門家と連携してご案内しています。

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