職人いきいき宣言とは?経審で5点加点・P点は約6.5点変わる 2026年版

「職人いきいき宣言というものが経審の加点になると聞いたが、うちは何をすればよいのか」。令和8年7月に入ってから、決算のご相談の場でこのお尋ねをいただくことが増えました。名前だけを聞くと標語のようですが、中身は経営事項審査の点数に直結する制度です。

結論から申し上げます。宣言をしていれば、経営事項審査でW点の素点が5点加算されます。この5点は、最終的な総合評定値であるP点に直すと約6.5点にあたります。しかも今回の改正では、加点の新設と同時に建設キャリアアップシステムの配点が引き下げられました。つまり何もしないでいると、前年と同じ取り組みをしていても点数が下がる会社が出てきます。この記事では、その仕組みを順に整理します。

職人いきいき宣言とは

正式には「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」といい、「職人いきいき宣言」は愛称です。国土交通省が設けた制度で、技能者を大切にし、処遇改善に取り組むことを会社として宣言し、その内容が国土交通省のポータルサイトに公表されます。

背景にあるのは、建設業法が定める建設業者の責務です。

(施工技術の確保に関する建設業者等の責務)第25条の27

1 建設業者は、建設工事の担い手の育成及び確保その他の施工技術の確保に努めなければならない。

2 建設業者は、その労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価に基づく適正な賃金の支払その他の労働者の適切な処遇を確保するための措置を効果的に実施するよう努めなければならない。

建設業法 第25条の27第1項・第2項(施工技術の確保に関する建設業者等の責務)

この努力義務に実際に取り組んでいる会社が、目に見える形で評価されるようにしたものが自主宣言制度です。宣言は代表者の名前で行い、登録後は企業名・代表者名を含む宣言文がポータルサイトで公開されます。事業規模や建設業許可の有無を問わず申請でき、2026年8月26日現在で宣言企業は6,144社、取組を開始した企業は4,697社と公表されています。

令和8年7月1日から経営事項審査の加点対象になった

令和8年2月6日に公布された改正告示により、この宣言の有無が経営事項審査の審査項目に加わりました。適用されるのは令和8年7月1日以降に申請する経営事項審査です。

そもそも経営事項審査の項目と基準は、法律の条文ではなく、国土交通大臣が定める告示で決まっています。

(経営事項審査)第27条の23

(中略)

2 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。

一 経営状況

二 経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項

3 前項に定めるもののほか、経営事項審査の項目及び基準は、中央建設業審議会の意見を聴いて国土交通大臣が定める。

建設業法 第27条の23第2項・第3項(経営事項審査の項目及び基準)

今回の加点も、この第3項に基づく告示の改正として新設されました。位置づけは、W(その他の審査項目=社会性等)の中の「W1:建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組の状況」の一項目で、配点は5点です。経営事項審査そのものの仕組みは経営事項審査(経審)とはで解説しています。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

5点がP点で約6.5点になる理由

「たった5点」と思われるかもしれません。ところが経営事項審査の点数は、素点をそのまま合計するのではなく、決められた式で換算します。

まず、最終的な総合評定値(P点)は次の式で決まります。

P点 = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W

経営事項審査の事務取扱いについて(国土交通省)別紙1

X1は完成工事高、X2は自己資本の額と平均利益額、Yは経営状況、Zは技術力、そしてWがその他の審査項目(社会性等)です。Yの中身は経営状況分析のY点で扱っています。

そのうえで、W点は素点の合計を10倍し、さらに175を掛けて200で割るという計算をします。素点1点あたり8.75点にふくらむということです。

ステップ計算結果
①宣言でもらえる素点―5点
②W点(W評点)に換算する5 × 10 × 175 ÷ 20043.75点
③P点への影響(Wの重みは0.15)43.75 × 0.156.56点

計算の途中で小数点以下は切り捨てられますので、実際にはW点で43〜44点、P点で6〜7点ほど動きます。入札参加資格の格付けが点数の刻みで区切られている以上、6点の差が等級の境目に効いてくる場面は珍しくありません。等級の考え方は公共工事の等級(ランク)を、点数の上げ方全般は経審の点数を上げる方法をご覧ください。

宣言しない場合はどうなるのか

宣言をしなくても減点はされません。加点が0点になるだけです。ただし、今回の改正はそこで終わっていません。宣言の新設と同時に、建設キャリアアップシステムの就業履歴に関する配点が引き下げられました。

W1の中の審査項目改正前改正後
就業履歴を蓄積するために必要な措置(民間工事を含むすべての建設工事で実施)15点10点
同上(すべての公共工事で実施)10点5点
職人いきいき宣言の宣言の有無(項目なし)5点

並べてみると構造がはっきりします。これまで就業履歴の措置で加点を受けていた会社が宣言をしなければ、引き下げられた5点だけが残り、P点で約6.5点のマイナスになります。逆に宣言をすれば、引き下げ分を埋めて従来どおりの点数を保てます。就業履歴の措置をまだ取っていない会社にとっては、宣言の5点がそのまま上積みになります。

会社の状況W点の素点P点への影響
就業履歴の加点あり + 宣言する±0点従来どおり維持
就業履歴の加点あり + 宣言しない▲5点約6.5点のマイナス
就業履歴の加点なし + 宣言する+5点約6.5点のプラス

建設キャリアアップシステムそのものについては建設キャリアアップシステム(CCUS)とはで詳しくご説明しています。なお同じ改正では、社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)の未加入による各40点の減点項目が廃止され、建設機械の加点対象に不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャが追加されました。減点項目の廃止は、令和2年10月から社会保険加入が許可の要件になったことを踏まえたものです(建設業許可と社会保険)。

加点を受けるための3つの条件

宣言していれば自動的に加点される、というわけではありません。告示と通知が定める要件は次のとおりです。

条件実務上の意味
①審査基準日が宣言日以降であること決算日までに宣言(申請)を済ませておく必要があります。決算日を過ぎてからの宣言では、その期の経営事項審査では加点されません
②元請事業者または下請事業者の立場で宣言していること宣言の立場は元請・下請・発注者から1つを選びますが、発注者の立場は加点対象外です
③宣言書と誓約書を提出すること誓約書は「経営事項審査の事務取扱いについて」の別記様式第7号です。宣言した取り組みを取組開始日以降に行う(行っている)ことを誓約します

審査基準日は原則として決算日です。宣言そのものは決算日の前に済ませておく、ここが実務上いちばんの分かれ目になります。ポータルサイトへの掲載までは内容によって最大1か月程度かかりますので、決算日の2か月前を目安にお考えください。経営事項審査の結果をいつまで使えるかは経審の有効期間もあわせてご確認ください。

加点を受けるまでの流れ

宣言の申請から経営事項審査での加点までは、次の順に進みます。

  1. ステップ1 宣言する立場を決める
    元請・下請・発注者から1つを選びます。経営事項審査の加点を目的とする場合は、元請または下請を選びます。
  2. ステップ2 宣言する内容を選ぶ
    必須の3本柱について、自社が実行できる取り組みをチェックします。任意項目は最大5つまで追加できます。
  3. ステップ3 決算日より前に申請する
    ポータルサイトから申請します。申請した日が宣言日です。あわせて取組開始日(申請日から1年以内)を設定します。
  4. ステップ4 ポータルサイトに掲載される
    内容の確認に最大1か月程度かかり、公開はメールで通知されます。掲載後はシンボルマークを使えます。
  5. ステップ5 取組開始日までに実行する
    宣言した取り組みを実際に始めます。間に合わないときは、取組開始日までに掲載を取り下げます。
  6. ステップ6 経営事項審査で宣言書と誓約書を出す
    決算後の経営事項審査の申請時に、宣言書と誓約書(別記様式第7号)を審査行政庁に提出して加点を受けます。

取組開始日が決算日より後でも加点は受けられる

宣言では、宣言した取り組みのうちいちばん遅く始まるものの日を「取組開始日」として自分で設定します。この日が決算日より後になっても加点は受けられ、誓約書の書き方が変わるだけです。

日付の順番誓約書の内容
宣言日 → 取組開始日 → 審査基準日(決算日)宣言した取り組みを「行っている」ことを誓約
宣言日 → 審査基準日(決算日) → 取組開始日宣言した取り組みを取組開始日以降「行う」ことを誓約

つまり、これから取り組む内容を宣言しても構いません。ただし誓約した以上は実行が前提です。国土交通省の通知は、誓約書を提出したにもかかわらず取組開始日の到来後に宣言した取り組みを行っていない場合は、虚偽申請として建設業法に違反するおそれがあると明記しています。取組開始日までに実施できないと分かったときは、マイページから掲載を取り下げてください。取り下げないと1年間、再申請ができなくなる場合があります。

何を宣言することになるのか

必須項目は3本柱です。画面上はチェックボックス方式で、文章を一から作る必要はありません。

柱宣言する内容選択肢の例
①労務費の確保・行き渡り等のための取組見積書に労務費・材料費等の内訳を明示する、下請から出された内訳明示の見積りを尊重する、技能者の処遇を確保する取組を行う、担い手の育成に取り組む、国の調査に協力する技能レベルを考慮した賃金・手当の支給、月給制、週休二日、現場ごとの熱中症対策、快適トイレの設置、資格取得費用の補助
②建設キャリアアップシステムの活用元請は現場に就業履歴を蓄積できる環境を整備する。下請は雇用するすべての技能者について詳細型の技能者登録を行うカードリーダー等の設置、現場・契約情報の登録、技能者の詳細型登録
③宣言企業との取引優先取引先を選ぶ際に、相手が宣言をしていることを考慮する条件が同じなら宣言企業を選ぶ旨の社内通知、取引先選定規程への記載

このほか任意項目として、処遇改善・適正な請負契約・スキルアップ・労働安全衛生・生産性向上・戦略的広報・若者育成・女性活躍・外国人材育成・その他の9分野から、最大5項目まで自社の取り組みを追加できます。任意項目は書かなくても宣言できます。

加点以外にどんな効果があるか

  • 企業名・代表者名を含む宣言文が国土交通省のポータルサイトで公表され、発注者や求職中の技能者から見えるようになります
  • 制度のシンボルマークを、現場の掲出物・名刺・パンフレット・自社サイトなどに使えます(掲載後かつ取組開始日以降)
  • 「建設人材育成優良企業表彰」の設問項目としても設定されています

人手不足が続くなかで、処遇改善に取り組んでいることを外から確認できる状態にしておくことは、採用の場面でも効いてきます。

よくあるご質問

宣言しないとペナルティはありますか

ありません。加点が0点になるだけで、減点はされません。ただし前述のとおり、就業履歴の配点引き下げと合わせると、結果として前年より点数が下がることがあります。

建設業許可がなくても宣言できますか

できます。事業規模や許可の有無を問わず申請できます。ただし経営事項審査の加点は、経営事項審査を受ける許可業者の話になります。

元請と下請のどちらで宣言すればよいですか

基本的には現場に入る立場の比率が高いほうです。半々程度であればどちらでも構いません。重複して両方の立場で宣言することはできません。

宣言の有効期間はどれくらいですか

申請日の翌月を起算日として、2年経過後の最初の12月末までです。有効期限の3か月前にメールで通知があり、期限が切れる1か月前までにマイページから更新手続きを行います。

費用はかかりますか

ポータルサイトからのオンライン申請で、サイト上に申請手数料の案内はありません。当事務所にお手伝いをご依頼いただく場合の報酬は、内容をお伺いしたうえで、正式なお見積りをご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください。

まとめ

職人いきいき宣言は、令和8年7月1日以降に申請する経営事項審査から5点の加点対象となり、P点では約6.5点の差になります。就業履歴の配点が下がった分を埋める意味もあり、公共工事を受注される会社にとっては、取らずにおくと相対的に不利になる項目です。

手続き自体はポータルサイトから完結しますが、決算日より前に宣言を済ませること、元請か下請の立場を選ぶこと、経営事項審査で宣言書と誓約書を出すことの3つを外すと加点になりません。そして、宣言した内容は実際に行っていただく必要があります。無理なく続けられる項目の選び方から、決算日を起点にした段取りまで、決算変更届や経営事項審査のご相談とあわせて承っております。

初回のご相談は無料です。お電話(03-4500-1030)またはオンラインでご相談いただけます。費用はご依頼の範囲によって変わりますので、正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示します(ご安心ください)。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。

出典