親の認知症に備える|家族が成年後見人になる方法と手続きの流れ 2026年版

「認知症の親の預金を、子どもが引き出せなくなった」——判断能力が低下すると、たとえ家族でも本人の財産を自由に動かせなくなります。定期預金の解約や実家の売却が「本人の意思確認ができない」という理由で止まってしまうのです。 そんなときに本人を法的に支える制度が成年後見制度です。「家族である自分が後見人になって、親の財産を管理したい」——そう考える方に向けて、この記事では、家族が成年後見人になる方法・手続きの流れ・費用、そして認知症になる前にできる対策までを、世田谷区大原の行政書士・藤原友事務所がかみ砕いて解説します。

成年後見制度とは(法定後見と任意後見)

成年後見制度は、判断能力が不十分な方を法的に支える制度で、大きく2つに分かれます。
  • 法定後見……すでに判断能力が低下した後に、家庭裁判所が後見人を選ぶ。判断能力の程度に応じて「後見・保佐・補助」の3類型がある→家庭裁判所に家族などの人が申立てを行う(身寄りのない場合は市区町村長が申し立てることも)
  • 任意後見……判断能力があるうちに、本人が「将来この人に頼みたい」という後見人を自分で選び、契約しておく→任意後見契約書を公証役場で作成する
すでに親の判断能力が低下している場合は、法定後見を利用することになります。その入口となるのが、家庭裁判所への申立てです。法律では次のように定められています。
(後見開始の審判)第7条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。 民法 第7条(後見開始の審判)
このとおり、配偶者や四親等内の親族が申立てをできると定められています。子どもはもちろん、兄弟姉妹や甥・姪なども含まれます。

家族は後見人になれるのか

「申立てをすれば、家族である自分が必ず後見人に選ばれるのか」——ここは誤解の多いところです。 後見人を誰にするかを決めるのは、家庭裁判所です。 申立ての際に候補者を挙げることはできますが、財産が多い・親族間で意見が対立しているといった事情がある場合には、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれることも少なくありません。一方で、例えば長女が母親と同居しており、兄弟姉妹の全員が長女に頼みたいといった場合であれば、長女を後見人の候補者として申し立てをして、認められるケースも多くあります。 実際の統計でも、親族が後見人に選ばれる割合は全体の約2割にとどまり、近年は専門職が選ばれるケースが多数となっています。「家族が後見人になりたい」という希望が通らないこともある、という点はあらかじめ理解しておく必要があります。また、家族が後見人になった場合でも、その後見人を監督する後見監督人(専門職)が付くことがあります。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

申立ての流れと必要書類

法定後見(後見開始の審判)の申立ては、おおむね次の流れで進みます。
  1. ステップ1 申立ての準備
    本人の住所地を管轄する家庭裁判所へ申立てます。申立書のほか、本人の診断書(かかりつけ医などが作成)、戸籍謄本、財産目録、収支の資料などを準備します。
  2. ステップ2 家庭裁判所での審理
    書類審査や面接が行われます。本人の判断能力について、必要に応じて医師による鑑定が行われることもあります。
  3. ステップ3 審判・後見開始
    家庭裁判所が後見人を選任し、後見が開始されます。以後、後見人は本人の財産を管理し、家庭裁判所へ定期的に報告する義務(通常年に1回、会社の決算報告のようなイメージです)を負います。

費用の目安

法定後見の申立てにかかる主な費用は次のとおりです。
  • 申立手数料・登記手数料・郵便切手……数千円程度
  • 医師の診断書・鑑定費用……診断書は数千円、鑑定が必要な場合は別途(数万円〜)
  • 後見人・後見監督人への報酬……家庭裁判所が本人の財産額などに応じて決定(継続的に発生)
専門職が関与する場合の報酬は毎年継続してかかるため、長期的な負担も見据えておく必要があります。行政書士に任意後見契約書の文案の作成を依頼する場合などは、報酬が別途かかります(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。

家庭裁判所への申立書類は誰が作成する?

専門家に相談するうえで、大切な注意点があります。成年後見開始の申立書など、家庭裁判所に提出する書類の作成は、弁護士・司法書士の業務とされており、行政書士は、法定後見の申立書類の作成を業として行うことはできません。(裁判所に提出する書類の作成は、弁護士法・司法書士法によって制限されているためです。) もっとも、申立て自体は、ご本人やご家族が自分で行うことができます。 書類作成の代行が必要な場合は、弁護士・司法書士がその窓口になります。 行政書士は成年後見に関して何ができるのか——得意とするのは「認知症になる前の備え」と「就任後の財産管理」です。具体的には次のような場面でお役に立てます。
  • 任意後見契約の設計・書類作成・公正証書化のサポート
  • 家族信託の設計・契約書作成のサポート
  • 成年後見人・任意後見人への就任(後見人になること自体は資格を問わず、行政書士も受任できます)
  • 各種契約・給付申請の代行や財産管理のご相談
  • 法定後見の申立てが必要な場合の、弁護士・司法書士紹介と連携
つまり、「法定後見の申立て」は弁護士・司法書士へ、「事前対策(任意後見・家族信託)」や「後見人としての実務」は行政書士へ、という役割分担になります。 お客様からすれば、あまり意識する必要のないことではあります。

認知症になる「前」にできる対策【重要】

成年後見制度は、判断能力が低下した後の「事後の備え」です。一方で、判断能力があるうちなら、より柔軟な事前対策を選べます。
  • 任意後見……信頼できる人を自分で後見人に指定し、支援内容も契約で決めておける
  • 家族信託……財産の管理・承継を家族に託す仕組み。柔軟な財産管理が可能
「親がまだ元気なうちに、将来に備えておきたい」という段階であれば、これらの選択肢を含めて検討する価値があります。エンディングノートや遺言との関係は実家の相続|お盆に家族で話す5つのチェックリストもあわせてご覧ください。

よくあるお悩み

  • 親の預金が凍結され、生活費や施設費が払えない……後見制度の利用が必要になることが多い
  • 家族が後見人になりたいが選ばれるか不安……財産状況・親族関係で判断が変わる
  • 後見人になると負担が重い……財産管理と家庭裁判所への報告が続く
  • 元気なうちに備えたい……任意後見・家族信託を検討
どの制度が適しているかは、ご家族の状況によって異なります。迷ったら早めにご相談ください。

親の財産管理のご相談は無料で

行政書士・藤原友事務所(世田谷区大原)では、任意後見契約や家族信託をはじめ、親御さまの将来に備える財産管理のご相談を承っています。「親の判断能力が心配」「元気なうちに備えたい」——そんなお悩みを持つ方からのご相談を初回無料で承っています。お電話(03-4500-1030)またはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。オンライン相談にも対応しております。

出典

相続手続き全体の進め方は、相続手続きの総合ガイドでまとめて解説しています。