会社の決算期(事業年度)の決め方|3月決算が正解とは限らない4つの基準 2026年版

会社設立の書類を作っていると、必ず一度は手が止まる項目があります。決算期(事業年度)をいつにするかです。「日本の会社はだいたい3月でしょう」と、深く考えずに3月末にしてしまう方が本当に多いのですが、決算期は会社が自由に決めてよく、選び方ひとつで初年度の手間と資金繰りが変わります

実際、国税庁の統計でも3月決算の法人は全体の2割前後にとどまり、残りの8割はほかの月を選んでいます。この記事では、決算期の意味を条文で確認したうえで、実務で使える4つの判断基準と、後から変更する手続きまでを整理します。なお、具体的な税額の計算や申告そのものは税理士の業務ですので、税務判断が必要な場面では税理士と連携してお手伝いしています。

事業年度(決算期)とは何か

事業年度は、会社の財産と損益を計算する単位となる期間のことです。その期間の最後の日が決算日で、決算日が属する月を決算期・決算月と呼びます。法人税法は次のように定めています。

(事業年度の意義)第13条

この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるものをいい、法令又は定款等に会計期間の定めがない場合には、次項の規定により納税地の所轄税務署長に届け出た会計期間又は第三項の規定により納税地の所轄税務署長が指定した会計期間若しくは第四項に規定する期間をいう。
法人税法 第13条第1項(事業年度の意義)

ポイントは「定款等に定めるもの」という部分です。国が決めているのではなく、会社が定款で自分の事業年度を決めるのが原則だということが、条文からはっきり読み取れます。定款の作り方は会社の定款の作り方で解説しています。

決算期は自由 ただし1年を超えられない

唯一の制約が、期間の長さです。会社計算規則は次のように定めています。

(各事業年度に係る計算書類)第59条

(中略)

2 各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
会社計算規則 第59条第2項(事業年度は1年を超えられない)

つまり、1年以内であれば何月を決算期にしても構いません。半年ごとの事業年度にすることもできますが、申告と決算の手間が倍になるため、実務ではまず選ばれません。

もうひとつ大事なのが、設立第1期の長さです。設立日から決算日までが第1期になるため、設立月の「前月末」を決算日にすると、第1期をほぼ12か月まで伸ばせます。たとえば8月設立なら7月決算です。逆に8月設立で9月決算にしてしまうと、第1期がわずか2か月で終わり、すぐに決算と申告の費用が発生します

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

判断基準1 繁忙期を避ける

決算作業は、在庫の棚卸し、請求書や領収書の整理、取引先への残高確認など、通常業務に上乗せでのしかかります。その山を会社の繁忙期に重ねないことが、最も分かりやすい判断基準です。

  • 建設業:年度末の3月に工期が集中しがちなため、3月決算は避けたほうが無難です
  • 小売業・飲食業:年末年始や大型連休の直後は避けます
  • 学習塾・スクール:入学シーズンの3〜4月を外します
  • 不動産業:転居需要が動く1〜3月を外します

あわせて考えたいのが、決算日の2か月後に申告と納税がやってくるという点です。法人税法は確定申告の期限を明確に定めています。

(確定申告)第74条

内国法人は、各事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、確定した決算に基づき次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。

(中略)

3 第一項の規定による申告書には、当該事業年度の貸借対照表、損益計算書その他の財務省令で定める書類を添付しなければならない。
法人税法 第74条第1項・第3項(確定申告は事業年度終了の日の翌日から2か月以内)

決算月そのものだけでなく、その2か月後も忙しくない時期かを確認しておくと、初年度から慌てずに済みます。

判断基準2 消費税の免税期間を最大限に使う

これは金額に直結する基準です。新しく設立した法人は、原則として設立第1期・第2期に消費税の納税義務がありません。基準期間(2期前)が存在しないためです。

ただし、次の条件に当てはまると免税になりません。

  • 事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の場合は、第1期・第2期とも課税事業者になります
  • 第1期に特定期間(第1期の前半6か月)が生じている場合、その期間の課税売上高と給与等支払額がいずれも1,000万円を超えると、第2期は課税事業者になります
  • 大規模な法人に支配されている特定新規設立法人にあたる場合も、免税になりません

ここで決算期の設定が効いてきます。第1期を目いっぱい長く(12か月近く)とれば、免税で走れる期間そのものが長くなります。加えて、第1期を7か月以下に設定すると特定期間の判定自体が不要になるという取扱いもあり、第2期の免税を確実にしたい場合にはこちらを選ぶ設計もあります。どちらが有利かは売上の立ち上がり方によって変わります。資本金の決め方は会社の資本金はいくらにすべき?で詳しく解説しています。

【要確認】インボイス制度の登録を受けると、免税事業者であっても消費税の申告義務が生じます。取引先が課税事業者中心であれば登録が事実上避けられないため、免税期間の最大化がそのまま得になるとは限りません。具体的な有利不利の判定は税理士の専門分野のため、当事務所では提携する税理士と連携してご案内します。まずはご相談ください。

判断基準3 許認可の届出期限と重ねない

見落とされがちですが、許認可を持つ会社にとってはこれが実務上いちばん響きます。建設業許可を持つ会社は、毎事業年度経過後4か月以内に決算変更届(事業年度終了届)を出さなければなりません。決算作業・法人税の申告(2か月)・決算変更届(4か月)が、決算日を起点に連続して発生します。

決算日からの期間 やること 根拠
2か月以内 法人税・消費税等の確定申告と納税 法人税法第74条第1項
4か月以内 建設業の決算変更届(工事経歴書・財務諸表など) 建設業法第11条第2項
決算後おおむね随時 経営事項審査の申請(公共工事を受ける場合) 建設業法第27条の23

3月決算にすると、決算変更届の期限が7月末になります。この時期は同じ3月決算の会社が集中して窓口が混み合うため、あえて決算期をずらすという考え方もあります。届出の中身は建設業許可の決算変更届(事業年度終了届)とは?建設業の財務諸表の作り方をご覧ください。

判断基準4 資金繰りと専門家の繁忙期

最後は、お金と人の都合です。

  • 納税資金を用意できる時期にする:申告期限は決算日の2か月後です。売掛金の入金が細る時期に納税が重なると苦しくなります
  • 賞与や大型仕入れの時期を外す:資金の出が重なると、納税の原資が確保しづらくなります
  • 税理士の繁忙期を避ける:2月から3月は個人の確定申告期、5月は3月決算法人の申告期にあたります。この時期を外すと、より丁寧に決算のご相談に乗ってもらえることが多くなります

3月決算にこだわる必要はない

3月決算が多いのは、国や自治体の会計年度が4月から3月であること、上場企業がそれに合わせてきたことによるものです。取引先が官公庁中心で、決算期をそろえたほうが数字の比較がしやすいといった事情があるなら合理的ですが、中小企業がその慣習に従う必然性はありません

むしろ中小企業では、繁忙期を外し、免税期間を最大化し、許認可の届出と重ならない月を選ぶほうが実利があります。決めるべきは「世間並みかどうか」ではなく「自社の1年のリズムに合うかどうか」です。設立後にやるべき手続き全体は会社設立後にやること一覧で解説しています。

決算期を後から変更する手続きの流れ

いったん決めた決算期は、後から変更できます。登記事項ではないため法務局への登記は不要で、費用も比較的軽く済みます。

  1. ステップ1 変更後の決算期を決める
    変更後の最初の事業年度は1年6か月まで認められます。ただし1年を超える期間は税務上そのままでは1事業年度にできないため、区切り方を事前に確認します。
  2. ステップ2 株主総会で定款変更を決議する
    事業年度は定款の記載事項ですので、株主総会の特別決議が必要です。議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の3分の2以上の賛成で決議します。
  3. ステップ3 株主総会議事録を作成する
    決議した内容を議事録に残します。会社の備置き書類となるほか、税務署への届出の添付書類にもなります。
  4. ステップ4 異動届出書を提出する
    所轄の税務署、都道府県税事務所、市区町村へ異動届出書を出します。議事録の写しを添付するのが一般的です。
  5. ステップ5 許認可の届出先にも連絡する
    建設業許可を持っている場合は、事業年度の変更にあわせて決算変更届の期限も動きます。変更後の最初の届出時期を確認しましょう

よくある失敗

  • 設立月と同じ月を決算期にしてしまう:第1期が1か月ほどで終わり、決算と申告がすぐにやってきます
  • 資本金1,000万円で設立して免税を逃す:見栄えのよい資本金額にした結果、第1期から消費税の課税事業者になる例があります
  • 繁忙期に決算日を置く:棚卸しと現場対応が重なり、毎年決算作業が遅れます
  • 許認可の届出期限を考えずに決める:法人税の申告と決算変更届と経営事項審査が団子状に押し寄せます
  • 変更のたびに登記が要ると思い込む:事業年度は登記事項ではありません。定款変更と税務署等への届出で足ります

費用と期間の目安

会社設立時に決算期を決めること自体に、追加の費用はかかりません。設立後に変更する場合も、登録免許税はかからず、実費はほぼ発生しません

当事務所にご依頼いただく場合の報酬の目安は、決算期変更に伴う定款変更と株主総会議事録の作成で3万円台からです(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。会社設立と許認可申請をあわせてご依頼いただく場合は、決算期の設計も含めてご提案しています。手続きにかかる期間は、株主総会の開催から届出まで1週間から2週間ほどです。

まとめ

決算期の決め方は、次の4つの基準で整理できます。

  • 繁忙期を避ける。決算月だけでなく、申告期限が来る2か月後も含めて考える
  • 消費税の免税期間を最大化する。設立月の前月末を決算日にすると第1期を長くとれる
  • 許認可の届出期限と重ねない。建設業なら決算後4か月以内の決算変更届がある
  • 資金繰りと専門家の繁忙期を考える。納税資金を確保できる時期を選ぶ

決算期は定款の記載事項ですので、設立の段階で決めておく必要があります。後から変更もできますが、変更の年は事業年度が短くなったり長くなったりして経理が複雑になりますので、最初に自社のリズムに合わせて決めておくのがいちばん楽です。

会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。

行政書士 藤原友事務所(東京都世田谷区大原)では、定款の作成から許認可の設計まで、会社設立をまとめてお手伝いしています。初回のご相談は無料で、お電話(03-4500-1030)のほか、オンラインでのご相談にも対応しています。税務の判断が必要な場面では税理士と連携しますので、「うちの業種だと何月がよいか」といった段階からご相談ください。

出典