会社の本店移転の手続き|登記2週間・登録免許税と許認可の届出先一覧 2026年版

事務所が手狭になった、賃料の安い物件に移りたい、自宅から独立した事務所を借りた。理由はさまざまですが、会社の住所を移すとき、多くの経営者が「法務局で本店移転の登記をすれば終わり」と考えています。

ところが実際には、許可や免許を持っている会社ほど、登記のあとに続く届出のほうが重いのが実情です。この記事では、本店移転で必要になる手続きを、登記・許認可・公的機関の3つに分けて、期限つきで整理します。

移転前にまず確認すること:定款変更が必要か

株式会社の定款には、本店の所在地を必ず書くことになっています。

(定款の記載又は記録事項)第27条

株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

(中略)

三 本店の所在地
会社法 第27条第三号(定款の絶対的記載事項)

ここでいう「所在地」は、実務上は最小行政区画(市区町村、東京23区は区)までを書けば足りるとされています。そのため、定款に「当会社は、本店を東京都世田谷区に置く」とだけ書いてある会社が、世田谷区内で引っ越すのであれば定款変更は不要で、取締役会(取締役会がなければ取締役の決定)で新しい住所を決めれば足ります。

一方、定款に番地まで書いている場合や、他の市区町村へ移る場合は株主総会の特別決議による定款変更が必要です。ご自身の定款がどちらの書き方になっているか、移転を決める前に開いて確認しましょう。定款そのものの作り方は会社の定款の作り方で解説しています。

本店移転登記は2週間以内・登録免許税は1件3万円

登記の期限は会社法で決まっています。

(変更の登記)第915条

会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
会社法 第915条第1項(変更の登記の期限)

この2週間を過ぎると、代表者個人に100万円以下の過料が科されることがあります。移転してから落ち着いて考えよう、という順番にはできない手続きです。

登録免許税は本店移転の登記1件につき3万円です。ここで金額が変わるのが、移転先が別の法務局の管轄になるかどうかです。

(本店移転の登記)第51条

本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない。

2 前項の登記の申請と旧所在地における登記の申請とは、同時にしなければならない。
商業登記法 第51条第1項・第2項(管轄外への本店移転)

管轄外へ移転する場合は、旧所在地あてと新所在地あての2件の申請を同時に行うため、登録免許税も3万円×2=6万円になります。同じ「引っ越し」でも、世田谷区内の移転(東京法務局渋谷出張所の管轄内)と、神奈川県への移転とでは費用が倍違うということです。

なお、登記申請の代理は司法書士の業務です。当事務所では提携する司法書士と連携し、許認可の届出とあわせてスケジュールを組み立てるかたちでお手伝いしています。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

本店移転の手続きの流れ

順番を間違えると二度手間になります。実務では次の流れで進めます。

  1. ステップ1 移転先が許可の要件を満たすか事前に確認する
    契約前に確認します。建設業許可なら独立性のある事務所か、宅建業なら他社と明確に区分されているか。ここを飛ばして契約すると、後戻りできなくなります。
  2. ステップ2 定款を確認し、必要なら株主総会・取締役会の決議をとる
    定款変更が必要かどうかで、必要な決議と議事録が変わります。
  3. ステップ3 移転日から2週間以内に本店移転登記を申請する
    管轄外なら旧・新の2件を同時申請します。登記完了までは通常1週間から10日程度かかります。
  4. ステップ4 新しい登記事項証明書を取得する
    以降の届出のほとんどで添付書類になります。必要な枚数をまとめて取得しておくと効率的です。
  5. ステップ5 許認可の変更届を出す
    許可の種類ごとに期限が違います。次の章の一覧で確認してください。
  6. ステップ6 税務署・年金事務所・労働保険・銀行等へ届け出る
    登記事項証明書が出てからでないと進められないものが多く、最後にまとめて処理します。

許認可ごとの届出と期限【一覧】

ここが最も抜けやすいところです。主な許認可の取扱いを整理します。

許認可 届出の期限 特に注意する点
建設業許可 変更後30日以内に変更届 主たる営業所が他の都道府県へ移ると、届出ではなく許可換え新規申請になる
宅地建物取引業免許 変更後30日以内に変更の届出(宅建業法第9条) 他の都道府県へ事務所を移すと免許換え(同法第7条)。従前の免許は効力を失う
産業廃棄物収集運搬業 変更後10日以内に変更届 許可を受けている都道府県・政令市ごとに提出が必要
古物商許可 営業所の所在地は変更の3日前まで(事前届出) 事後ではなく事前。主たる営業所が他の都道府県に移る場合は移転先の公安委員会あて
旅館業・飲食店営業 営業者の住所変更として速やかに届出 施設そのものが動かなくても、法人の住所が変われば届出が必要
運送業・介護事業等 各法令の定めによる 指定・許可の要件に事務所の設備基準がある場合は事前相談が必須

特に建設業と宅建業の都道府県をまたぐ移転は、単なる住所変更ではなく許可・免許を取り直すのに近い手続きになります。世田谷区から川崎市へ、といった距離感のある移転ほど注意が必要です。建設業の変更届の詳細は建設業許可の変更届、営業所として認められる条件は建設業許可の営業所の要件で解説しています。宅建業免許は宅地建物取引業免許の取り方、産業廃棄物収集運搬業は産業廃棄物収集運搬業許可をご覧ください。

税務署・年金事務所などへの届出

許認可のほかに、次の届出も必要です。

  • 税務署:異動届出書を速やかに提出。管轄の税務署が変わる場合も、現在の納税地の税務署へ提出すれば足ります
  • 都道府県税事務所・市区町村:それぞれの様式で異動届。自治体をまたぐ場合は旧・新の両方
  • 年金事務所:健康保険・厚生年金保険の適用事業所名称/所在地変更(訂正)届を事実発生から5日以内に。管轄内か管轄外かで様式が異なります
  • 労働基準監督署・ハローワーク:労働保険の名称・所在地等変更届を変更の日の翌日から10日以内
  • 銀行・取引先・許可票・名刺・ウェブサイト:法令上の期限はありませんが、放置すると信用に関わります

よくある失敗3つ

ご相談を受けていて、繰り返し起きているのが次の3つです。

①移転先を契約してから許可要件を満たさないと分かった。とくに建設業許可は、居住スペースと明確に区分された独立性が求められます。自宅やレンタルオフィスへの移転は特に慎重な確認が要ります。自宅やバーチャルオフィスの可否は自宅・バーチャルオフィスでの会社設立で整理しています。

②登記だけ済ませて許認可の届出を忘れていた。建設業許可では、変更届の未提出が更新のタイミングで発覚し、更新の受付そのものが進まなくなることがあります。数年分をさかのぼって出し直すことになれば、費用も時間も余計にかかります。

③古物商の届出を事後に出してしまった。古物商だけは事前届出(3日前まで)という設計で、他の許認可と発想が逆です。移転日が決まった時点で先に手を打ってください。

費用と期間の目安

登録免許税は管轄内3万円・管轄外6万円。これに司法書士報酬(相場としておおむね3万円から5万円程度)と、登記事項証明書の取得費用(1通600円)が加わります。許認可の変更届自体は手数料が不要なものが多いものの、建設業の許可換え新規や宅建業の免許換えは、新規申請と同じ手数料がかかります。

期間は、決議から登記完了までおおむね2週間、そこから許認可の届出まで含めると1か月から1か月半を見ておくと安心です。許認可ごとの届出の様式・添付書類・受付方法は、許可を出している自治体によって運用が異なります。所管窓口への確認から提出まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。当事務所にご依頼いただく場合の報酬は、移転先の要件確認から許認可の届出まで含めてお見積りします(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。

まとめ

本店移転は、登記・許認可・公的機関の3階建てで考えると抜けがなくなります。順番としては「移転先の要件確認 → 決議 → 登記 → 許認可 → 税・社会保険」。とりわけ都道府県をまたぐ移転は、許可の取り直しに近い手続きになるため、物件を契約する前のご相談をおすすめします。

会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。

本店移転にともなう許認可の整理は、当事務所の得意分野です。初回のご相談は無料、お電話(03-4500-1030)のほかオンラインでも承っています。

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