自宅・バーチャルオフィスで会社設立はできる?許認可との相性を解説 2026年版
会社を作るとき、事務所の家賃を抑えるために「自宅を本店にしたい」「住所だけ借りられるバーチャルオフィスを使いたい」と考える方は多くいらっしゃいます。結論からお伝えすると、会社の本店として登記すること自体は自宅でもバーチャルオフィスでも可能です。ただし、「登記できるか」と「その事業の許認可が取れるか」はまったく別の問題です。この記事では、本店の決め方のルール、自宅を使う場合の確認事項、そして許認可が必要な事業でつまずかないための注意点を、行政書士がわかりやすく解説します。
会社の本店は自宅やバーチャルオフィスでも登記できる
会社法は、株式会社の定款に必ず記載する事項(絶対的記載事項)として「本店の所在地」を挙げていますが、その場所が事務所専用の物件であることまでは求めていません。したがって、自宅の住所やバーチャルオフィスの住所を本店として登記することは、会社法上は問題なくできます。
(定款の記載又は記録事項)第27条
株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 目的
二 商号
三 本店の所在地
四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
五 発起人の氏名又は名称及び住所
会社法 第27条第三号(本店の所在地)
合同会社の場合も、定款に本店の所在地を定める点は同じです。設立手続きそのものの流れは、会社設立の流れで解説しています。

定款には最小行政区画まで書けばよい
定款の本店所在地は、「東京都世田谷区」のように最小行政区画(市区町村)までの記載で足ります。番地まで書いてしまうと、同じ区内で引っ越したときにも定款変更(株主総会の決議)が必要になります。将来オフィスを移す可能性があるなら、区までの記載にしておくと後の手間と費用を抑えられます。なお、登記簿には番地まで記録されます。
自宅を本店にするときに確認する3つのこと
自宅で登記する場合、法律上の制限より先に、契約上・生活上のハードルを確認しておく必要があります。
1. 賃貸借契約の使用目的
賃貸住宅の契約は「住居専用」となっているものが多く、事務所として使うことが禁じられている場合があります。登記そのものは法務局の手続きなので大家さんの承諾は要件ではありませんが、契約に反して事務所利用をすると、用途違反として契約解除や損害賠償を求められるおそれがあります。事前に貸主・管理会社へ相談し、必要なら使用承諾書をもらっておくのが安全です。
2. 分譲マンションの管理規約
持ち家の分譲マンションでも、管理規約で専有部分の用途を「住宅」に限っていることが一般的です。来客や荷物の出入りが多い業種では、規約違反やご近所トラブルにつながることもあります。管理規約と使用細則を確認し、判断が難しければ管理組合に照会しておきましょう。
3. 登記した住所は誰でも見られる
登記事項証明書は誰でも取得できるため、自宅を本店にすると自宅住所が公開情報になります。会社のホームページや名刺、取引先の請求書にも記載されるのが通常です。プライバシーを重視する方や、女性のひとり起業で自宅住所を明かしたくない方が、バーチャルオフィスを選ぶ理由はここにあります。
自宅・レンタルオフィス・バーチャルオフィスの違い
3つの選択肢は、費用だけでなく「実体のある事務所と評価されるか」で大きく差が出ます。
| 種類 | 実際のスペース | 登記 | 許認可との相性 |
|---|---|---|---|
| 自宅 | あり(生活空間と共用) | 可能 | 独立性を確保できれば認められる場合が多い |
| レンタルオフィス(個室) | あり(専有の個室) | 可能 | 専有区画と使用権限があれば認められる場合がある |
| バーチャルオフィス | なし(住所と郵便のみ) | 可能 | 事務所要件のある許認可は原則不可 |
コワーキングスペースのフリーアドレス席も、自分専用の区画がないため、事務所要件が求められる許認可では認められにくい点はバーチャルオフィスと同様です。
許認可が必要な事業は「事務所」の要件で判断が変わる
ここが最大の分かれ道です。多くの許認可は、単なる住所ではなく実際に業務を行う事務所の存在を要件にしています。たとえば宅地建物取引業では、事務所の所在地によって免許権者すら変わります。
(免許)第3条
宅地建物取引業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事の免許を受けなければならない。
宅地建物取引業法 第3条第1項(免許)
建設業許可
建設業法上の営業所は「常時建設工事の請負契約を締結する事務所」とされ、実在性・独立性・使用権限が写真や資料で審査されます。住所だけを借りるバーチャルオフィスでは、建設業許可も宅建業免許も取れないのが原則です。自宅を営業所にする場合は、生活空間と区分された動線が求められます。詳しくは建設業許可の営業所の要件をご覧ください。
宅地建物取引業免許
宅建業の事務所は、継続的に業務を行える施設で、社会通念上も事務所として独立していることが必要とされています。同じ部屋を他社と共用している場合や、応接スペースと事務スペースが区分できない場合は、区分の工事を求められることもあります。専任の宅地建物取引士の設置とあわせて、宅地建物取引業(宅建業)免許の取り方で確認してください。
古物商許可
古物営業の営業所は、古物台帳の保管や管理者の常駐ができる区切られた場所が前提です。実務上、バーチャルオフィスやフリーアドレスのシェアオフィスは営業所として認められにくく、個室のレンタルオフィスは契約期間や専有性によって判断が分かれます。【要確認】最終判断は営業所を管轄する警察署(生活安全課)が行うため、契約前の事前相談が確実です。
労働者派遣・有料職業紹介
労働者派遣事業の許可では、事業所の面積がおおむね20平方メートル以上あることなど、スペースそのものに関する基準が設けられています。【要確認】面積基準の運用や緩和の有無は、最新の許可基準で定められています。個人情報を扱うため、相談スペースの独立性も重視されます。
飲食業・旅館業など施設型の許可
飲食店営業許可や旅館業許可は、そもそも厨房や客室といった施設の基準を満たすことが許可の中身ですから、住所貸しでは成り立ちません。許認可を前提にした会社設計の考え方は、許認可が必要な事業の会社設立で整理しています。
法人口座の開設と信用面への影響
会社設立後には法人口座の開設が待っています。金融機関は口座開設審査で事業の実在性を確認するため、本店に事業の実体があるかを重視します。バーチャルオフィスを本店にした場合、それだけで開設できないわけではありませんが、事業計画書・契約書・ホームページなど実際に事業を行っていることを示す資料をより丁寧に求められる傾向があります。設立直後に必要な手続きは会社設立後にやること一覧にまとめました。
取引先との関係でも、建設・不動産・人材といった業種では、事務所の実在を確認されることがあります。本店は「今の家賃」ではなく「これから取る許認可と取引先」から逆算して決めるのが失敗しないコツです。
本店を決めるまでの流れ
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- ステップ1 事業内容と将来の許認可を洗い出す
- 今すぐ必要な許認可だけでなく、1〜3年内に取る可能性がある許認可まで書き出します。ここで事務所要件の有無が決まります。
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- ステップ2 候補地の使用権限を確認する
- 自宅なら賃貸借契約の使用目的や管理規約、レンタルオフィスなら専有区画と契約期間、バーチャルオフィスなら登記利用が契約上認められているかを確認します。
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- ステップ3 許認可の窓口に事前相談する
- 建設業なら都道府県、宅建業なら都道府県、古物商なら警察署へ、図面や契約内容を持って相談します。契約前に相談するのが要点です。
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- ステップ4 定款と登記の記載を決める
- 定款は市区町村まで、登記は番地まで記載します。移転の可能性も踏まえて記載方法を決め、設立登記へ進みます。
費用と期間の目安
本店の選択によって、会社設立そのものの費用(登録免許税・定款認証など)が変わることはありません。かかるのは事務所側の費用で、バーチャルオフィスは月額数千円台から、個室のレンタルオフィスは立地や面積により月額数万円からが一般的です。自宅であれば追加の家賃負担はありませんが、許認可のために区分の工事や備品の設置が必要になることがあります。
設立手続き自体は、書類の準備から登記完了までおおむね2〜4週間が目安です。許認可を同時に進める場合は、事務所要件の整備期間を含めて余裕を見ておくと安心です。当事務所にご依頼いただく場合の費用は事案により幅がありますが、正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください。
よくある失敗
- 先に契約してしまう:バーチャルオフィスを年間契約した後で、建設業許可には使えないと判明し費用が無駄になる。
- 用途違反の見落とし:住居専用の賃貸物件で登記し、後に管理会社から是正を求められる。
- 定款に番地まで記載:同じ区内の移転でも定款変更が必要になり、余分な手間と費用がかかる。
- 許認可の同時進行を忘れる:設立後に事務所要件を満たせないと分かり、本店移転登記からやり直しになる。
まとめ|登記の可否と許認可の可否は別に考える
自宅やバーチャルオフィスでの会社設立は、登記のうえでは問題なくできます。しかし、建設業・宅建業・古物商・労働者派遣のように事務所の実体を要件とする許認可では、住所貸しは通用せず、自宅でも独立性が問われます。会社の器を作る段階で許認可まで見通しておけば、後戻りは避けられます。藤原友行政書士事務所(東京都世田谷区大原)では、会社設立と許認可をセットで設計するご相談を初回無料で承っています(電話:03-4500-1030・オンライン相談可)。
会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。




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