会社の資本金はいくらにすべき?1円設立の落とし穴と決め方の基準を解説 2026年
会社の資本金はいくらにすべき?「1円でOK」ではありません
会社設立の準備を進めると、必ず突き当たるのが「資本金をいくらにするか」という問題です。会社法の改正により、今では資本金1円でも株式会社を設立できます。しかし、「1円で作れる」ことと「1円にすべき」ことは、まったく別の話です。
資本金は、会社の信用力・資金繰り・税金・許認可の要件にまで関わる重要な数字です。この記事では、資本金の決め方の基準を、行政書士がわかりやすく整理します。
そもそも資本金とは
資本金とは、株主(出資者)が会社に出資した元手のことで、会社法では次のように定められています。
(資本金の額及び準備金の額)第四百四十五条
株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
会社法 第445条第1項・第2項(資本金の額及び準備金の額)
ポイントは第2項です。払い込まれた出資額のうち2分の1までは「資本準備金」として計上でき、資本金に組み入れなくてもよいとされています。この仕組みは後ほど活用法を説明します。
1円でも設立できるが、信用と融資で不利になる
資本金1円でも設立は可能ですが、資本金は登記事項として誰でも閲覧できる会社の「体力」の目安になります。取引先が新規の会社を調べたとき、資本金が極端に少ないと「事業を続けられるのか」と不安を持たれることがあります。
また、金融機関からの融資や事務所の賃貸契約などの場面でも、資本金の少なさが不利に働くことがあります。設立時の資本金は、こうした対外的な信用と、当面の運転資金をまかなえるかという実務的な観点の両方から考える必要があります。
消費税の免税は「資本金1,000万円未満」がカギ
資本金の額は、設立初期の消費税にも直結します。新しく設立した会社は、原則として1期目・2期目の消費税の納税義務が免除されますが、設立時の資本金が1,000万円以上だと、1期目から消費税の課税事業者となり、この免税メリットを受けられません。
そのため、資本金は1,000万円未満に設定するのが一般的です。ちょうど1,000万円にすると免税の対象外になる点に注意してください。ただし次の2つは覚えておきましょう。
- 2期目の判定:2期目も免税を続けるには、前事業年度開始から6か月間(特定期間)の課税売上高や給与支払額が1,000万円以下である必要があります。
- インボイス制度の影響:適格請求書(インボイス)を発行するために課税事業者を選ぶと、資本金にかかわらず消費税を納めることになります。取引先との関係で登録が必要かどうかを見極めることが大切です(負担を軽くする「2割特例」は経過措置で、対象期間が限られます)。

許認可には「財産的要件」がある業種も
営む事業に許認可が必要な場合、資本金や自己資本の額そのものが許可の要件になることがあります。代表的なものは次のとおりです。
- 建設業許可(一般):自己資本500万円以上、または500万円以上の資金調達能力があること
- 労働者派遣事業:資産の総額から負債を引いた基準資産額が2,000万円以上(1事業所あたり)などの要件
- 有料職業紹介事業:基準資産額500万円以上(1事業所あたり)などの要件
これらの業種で起業するなら、要件を満たす資本金でスタートするほうが、あとから増資する手間を省けます。建設業許可の要件は建設業許可の要件の記事で詳しく解説しています。設立と許認可をどう組み合わせるかは、許認可が必要な事業の会社設立もご覧ください。
資本金1,000万円超で増える「均等割」の負担
資本金は、毎年かかる法人住民税の均等割にも影響します。均等割は赤字でも必ず課される固定額の地方税で、資本金等の額と従業員数で金額の区分が決まります。資本金等が1,000万円を超える(こちらは「以上」でなく、超えた場合なので1,000万1円からですね)と、この均等割の負担が一段上がるため、税負担の面からも1,000万円は一つの節目になります。消費税の免税ライン(1,000万円未満)とあわせて考えると、資本金1,000万円未満が多くの中小企業にとって無難な水準といえます。
運転資金「3〜6か月分」が一つの目安
実務では、当面の運転資金3〜6か月分を目安に資本金を決めることが多いです。売上が安定するまでの家賃・仕入れ・人件費などをまかなえる金額があれば、資金ショートのリスクを下げられます。たとえば、毎月の家賃・人件費・仕入れなどの固定費が月50万円なら、その3〜6か月分にあたる150万〜300万円程度が一つの目安になります。売上の入金が遅れても、この間の支払いに耐えられる備えがあると安心です。
手元資金が多い場合でも、そのすべてを資本金にする必要はありません。先ほどの会社法445条2項のとおり、出資額の2分の1までは資本準備金にできるため、資本金を1,000万円未満に抑えつつ会社の資金は厚くする、といった設計も可能です。また、役員からの借入金で運転資金を回す方法もあります。信用面では資本金の額が見えやすい一方、税務・消費税の面では1,000万円未満に抑える利点があるため、この2つのバランスをどう取るかが資本金設計の勘所です。
よくある疑問:資本金は使ってしまってよい?
「資本金は銀行に置いたまま手をつけてはいけないのでは」と誤解される方がいますが、そうではありません。資本金は会社の事業に使うための元手です。設立後は、仕入れ・家賃・設備・人件費など、事業のための支出に自由に使えます。金庫に眠らせておく必要はなく、むしろ運転資金として活用するのが本来の姿です。ただし、許認可の財産的要件(建設業の自己資本500万円など)は申請時点で満たしているかが問われるため、許認可を予定している場合は資金の使い方とタイミングに注意しましょう。
増資・減資は後から費用がかかる
「とりあえず少なめに」と考えがちですが、あとで資本金を増やす(増資)・減らす(減資)には、登記や手続きの費用がかかります。特に増資は登録免許税が必要です。将来の許認可取得や取引拡大の見通しがあるなら、最初から適切な額でスタートするほうが、結果的に手間もコストも少なくて済みます。
まとめ|資本金は「信用・税金・許認可」の3点で決める
資本金は、①対外的な信用と運転資金、②消費税の免税ライン(1,000万円未満)、③許認可の財産的要件、という3つの観点から総合的に決めるのがおすすめです。1円設立は可能でも最適とは限りません。株式会社と合同会社の違いや事業計画とあわせて、無理のない金額を設計しましょう。世田谷区大原の当事務所では、資本金の考え方から定款作成・許認可まで、初回無料でご相談を承っています(電話03-4500-1030・LINE・オンライン対応)。税務の詳細な判断は税理士と連携してご案内しますので、ご安心ください。
会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。




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