無許可民泊(ヤミ民泊)の罰則とは?100万円以下の罰金と是正手順 2026年版

「知人に部屋を貸していたら、いつの間にか旅行者が泊まっていたようです。保健所から連絡が来たのですが、私も罰せられるのでしょうか」。

民泊をめぐるご相談は、これから始めたい方からのものばかりではありません。気づかないうちに違法な状態になっていた、という形で持ち込まれることも少なくありません。

この記事では、許可も届出もない民泊がどの法律のどの条文に違反し、どのような罰則と不利益があるのか、そして行政がどういう順序で是正を進めるのかを、条文に沿ってご説明します。

結論|無許可の民泊は旅館業法違反です

宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業を反復継続して行うには、旅館業法の許可が必要です。

第三条

旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第四項を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。ただし、旅館・ホテル営業又は簡易宿所営業の許可を受けた者が、当該施設において下宿営業を営もうとする場合は、この限りでない。

旅館業法 第3条第1項(営業の許可)

では、住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出をした人はなぜ許可がいらないのか。それは、この許可制の例外として明文で定められているからです。

(届出)第三条

都道府県知事(中略)に住宅宿泊事業を営む旨の届出をした者は、旅館業法第三条第一項の規定にかかわらず、住宅宿泊事業を営むことができる。

住宅宿泊事業法 第3条第1項(届出)

この条文の読み方が要点です。届出があってはじめて旅館業法の許可制が外れるのであって、届出がなければ原則に戻り、旅館業法の許可が必要な無許可営業になります。「民泊は届出だけだから軽い」のではなく、届出という条件を欠けば旅館業法違反になる、という構造です。

日本で適法に人を泊める道は、次の3つしかありません。それぞれの違いは旅館業許可と民泊届出の違いとは?で詳しく解説しています。

  • 旅館業法の許可(旅館・ホテル営業/簡易宿所営業)
  • 住宅宿泊事業法の届出(年間180日以内)
  • 国家戦略特別区域法の認定(特区民泊)

「ヤミ民泊」になってしまう典型パターン

悪意がなくても違法状態になる場面があります。よくあるものを整理しました。

状態問題になる点
そもそも届出も許可もない旅館業法第3条第1項違反(無許可営業)
届出はしたが年間180日を超えた超過部分は住宅宿泊事業ではなく、旅館業法の許可が必要な営業に当たる
届出はしたが標識を掲げていない住宅宿泊事業法第13条違反(30万円以下の罰金)
届出はしたが定期報告をしていない住宅宿泊事業法第14条違反(30万円以下の罰金)
届出書に事実と違うことを書いた住宅宿泊事業法第73条第一号(虚偽の届出)
管理規約で禁止されている分譲マンションで営業規約違反として使用差止めの対象。届出自体も受理されない
賃貸物件で貸主に無断で転貸賃貸借契約の解除事由。届出には転貸の承諾を示す書類が必要

180日の数え方には正午起算・4月1日区切りといった独自のルールがあり、意図せず超過している例が実際にあります(民泊の180日の数え方)。分譲マンションでの可否は分譲マンションで民泊はできる?、区ごとの上乗せ条例は東京23区の民泊 上乗せ条例まとめをご覧ください。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

罰則|100万円以下の罰金は平成30年の改正で引き上げられました

無許可営業の罰則は、旅館業法第10条に定められています。

第十条

次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

一 第三条第一項の規定に違反して同項の規定による許可を受けないで旅館業を営んだ者

二 第八条の規定による命令に違反した者

旅館業法 第10条第一号(無許可営業の罰則)

この罰金の上限は、かつて3万円でした。違法な民泊の広がりを受けた平成29年の旅館業法改正(平成29年12月15日公布・平成30年6月15日施行)で、100万円へと引き上げられています。「見つかっても数万円で済む」という古い理解は、8年前に通用しなくなりました。しかも拘禁刑と罰金を併科できる規定です。

関係する罰則をまとめます。

行為根拠罰則
無許可で旅館業を営む旅館業法第10条第一号6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)
営業停止命令に違反旅館業法第10条第二号6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)
報告をせず、立入検査を拒む旅館業法第11条第二号50万円以下の罰金
緊急停止命令等に違反旅館業法第11条第三号50万円以下の罰金
民泊の届出で虚偽の記載住宅宿泊事業法第73条第一号6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(併科あり)
標識の未掲示・定期報告の懈怠住宅宿泊事業法第76条30万円以下の罰金

加えて、旅館業法第13条と住宅宿泊事業法第78条には両罰規定があります。従業員が違反行為をした場合、行為者本人が罰せられるほか、法人にも各本条の罰金刑が科されます。

行政はどういう順序で是正を進めるのか

平成29年の改正では、罰金の引上げと同時に、無許可営業者に対する調査と命令の権限が新設されました。それまでは、許可を受けた営業者にしか立入検査ができず、無許可の施設に入れないという矛盾があったのです。

まず、無許可で営まれている施設への立入検査は旅館業法第7条第2項に根拠があります。そして、緊急に止めさせる命令が第7条の2第3項です。

第七条の二

(中略)

3 都道府県知事は、この法律の規定に違反して旅館業が営まれている場合であつて、当該旅館業が営まれることによる公衆衛生上の重大な危害の発生若しくは拡大又は著しく善良の風俗を害する行為の助長若しくは誘発を防止するため緊急に措置をとる必要があると認めるときは、当該旅館業を営む者(営業者を除く。)に対し、当該旅館業の停止その他公衆衛生上又は善良の風俗の保持上必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

旅館業法 第7条の2第3項(無許可営業者に対する緊急の停止命令)

括弧書きの「営業者を除く」が、この規定の性格を表しています。許可を受けた営業者ではない者、すなわち無許可で営んでいる者に向けられた命令です。厚生労働省が発出した通知(平成30年5月21日薬生衛発0521第1号「旅館業法の許可を得ないで旅館業を行っている者に対する取締りについて」)では、これらの権限を活用した調査と改善指導を進め、繰り返しの指導にもかかわらず違法な民泊サービスを提供し続ける悪質な無許可営業者については、警察への情報提供と連携を積極的に図るよう求められています。

  1. ステップ1 情報が寄せられる
    近隣住民からの苦情、管理組合からの相談、仲介サイトの掲載情報、観光庁からの情報提供などが端緒になります。
  2. ステップ2 保健所が事実関係を調べる
    登記や賃貸借の状況、掲載内容、宿泊の実態を確認します。
  3. ステップ3 報告徴収・立入検査が行われる
    旅館業法第7条第2項により、無許可で営んでいる者にも報告を求め、施設に立ち入って質問することができます。拒めば50万円以下の罰金です。
  4. ステップ4 改善の指導を受ける
    営業の停止、許可の取得、届出への切替えなど、適法化に向けた指導が行われます。多くの事案はこの段階で解決します。
  5. ステップ5 緊急の停止命令が出る
    公衆衛生上の重大な危害や風俗上の問題があり緊急を要する場合、第7条の2第3項により営業の停止が命じられます。
  6. ステップ6 警察へ情報提供・告発される
    指導に従わない悪質な事案は、警察との連携により取締りの対象になります。
  7. ステップ7 刑事事件として処理される
    無許可営業として立件されると、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。

罰金よりも重い「その後」の不利益

実務でご相談を受けていて、依頼者が最も驚かれるのはここです。

旅館業法第3条第2項第三号は、同法または同法に基づく処分に違反して罰金以下の刑に処せられ、その執行を終わった日などから3年を経過していない者には許可を与えないことができると定めています。住宅宿泊事業法第4条第四号も同様に、この法律または旅館業法の規定により罰金の刑に処せられてから3年を経過しない者は住宅宿泊事業を営んではならないとしています。

つまり、一度罰金を受けると、その後3年間は許可も届出もできません。物件を持ったまま、合法的に営業する道が3年間ふさがれます。さらに法人の場合は役員も対象になりますので、その役員が関わる別の会社の申請にも影響します。

このほか、仲介サイトからの掲載削除、管理規約違反を理由とする使用差止め、賃貸借契約の解除、近隣との関係の悪化といった不利益が重なります。罰金100万円は損害の一部にすぎず、事業そのものが3年止まることのほうが、経営上ははるかに大きな打撃です。

心当たりがある場合にどうするか

「知らないうちに違法だったかもしれない」と気づかれた場合、いちばんしてはいけないのは、そのまま営業を続けることです。

第一に、予約の受付を止めてください。違反の状態が続いている間は、指導が命令へ、命令が告発へと進む可能性が高まります。

第二に、どの類型なら適法にできるかを確かめましょう。用途地域と条例で住宅宿泊事業の届出が可能なら民泊(住宅宿泊事業)の始め方の手順で、日数制限なく営みたいなら簡易宿所の許可で、というように出口は複数あります。

第三に、保健所への相談から是正の届出まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。自ら止めて適法化を目指している事業者と、指導を無視して続ける事業者とでは、行政の対応が変わります。窓口と運用は自治体ごとに異なります。

よくある失敗

「宿泊料ではなく管理費として受け取れば旅館業ではない」という説明を受けて始めてしまう例があります。名目を変えても、実質的に宿泊の対価であれば宿泊料と判断されます。

次に「1か月以上の契約なので賃貸借だ」という整理です。契約書の形式ではなく、生活の本拠を移す実態があるかどうかで判断されます。短期の滞在者を入れ替わりで泊めていれば、旅館業に当たり得ます。

そして届出後の義務を軽く見ることです。届出を済ませても、標識の掲示、宿泊者名簿の作成、2か月ごとの定期報告といった義務が続きます(民泊(住宅宿泊事業)の運営義務とは?)。届出は出発点であって、ゴールではありません。

まとめ

許可も届出もない民泊は、旅館業法第3条第1項に違反する無許可営業であり、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。罰金の上限は平成30年6月15日の改正で3万円から100万円に引き上げられ、あわせて無許可営業者への立入検査と緊急停止命令の権限が行政に与えられました。そして罰金を受けると、その後3年間は許可も届出もできません。民泊は「取り締まりが緩い副業」ではなく、届出という条件を満たしてはじめて許可制の例外になる、法律に組み込まれた事業です。始める前の確認と、始めた後の義務の履行が、そのまま資産を守ることにつながります。

民泊・旅館業の許可と届出の全体像は、民泊・旅館業許可の総合ガイドでまとめて解説しています。

当事務所では、保健所・消防署・建築指導課への事前相談から、届出・許可申請の書類作成までお手伝いしています。すでに営業を始めていて不安がある、というご相談も承ります。お電話(03-4500-1030)またはオンラインでの無料相談をご利用ください。(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)なお、すでに刑事事件となっている場合の弁護活動は弁護士の業務ですので、必要に応じてご紹介いたします。

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