経審のW点改正|自主宣言制度5点の新設と社会保険項目の削除を解説 2026年度
令和8年7月1日以降に申請する経営事項審査(経審)から、W点(その他の審査項目=社会性等)の中身が変わりました。改正の内容は令和8年2月6日に公布され、すでに施行されています。3月決算の会社であれば、この夏に受ける経審から新しい基準が適用されます。
「社会保険の項目が消えたらしい」「宣言すれば5点もらえるらしい」という断片的な話は聞こえてくるものの、結局のところ自社の点数は上がるのか下がるのか、そこがいちばん知りたいところだと思います。この記事では、改正の3点を整理したうえで、点数がどう動くのかを具体的に説明します。

そもそもW点とは何か
経審は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査です。
(経営事項審査)第27条の23
公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。
2 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。
一 経営状況
二 経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項
3 前項に定めるもののほか、経営事項審査の項目及び基準は、中央建設業審議会の意見を聴いて国土交通大臣が定める。
建設業法 第27条の23第1項〜第3項(経営事項審査)
ここで注目していただきたいのが第3項です。審査の項目と基準は、法律ではなく国土交通大臣の告示で決まります。だからこそ、法律の改正を待たずに数年おきに配点が動くのです。今回の改正も、告示(令和8年国土交通省告示第262号)と通知の改正として行われました。
経審の総合評定値Pは、完成工事高(X1)・自己資本と利益(X2)・経営状況(Y)・技術力(Z)・その他の審査項目(W)の5つを組み合わせて計算されます。W点のウェイトは0.15で、経審の詳しい仕組みは経営事項審査(経審)とはで解説しています。
令和8年7月1日からの改正は3点
国土交通省が公表した改正資料では、今回の改正は次の3点にまとめられています。
- 「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」の宣言の有無を新設(5点)。あわせて就業履歴を蓄積するための措置の配点を見直し
- 建設機械の加点対象を拡大(不整地運搬車、アスファルト・フィニッシャを追加)
- 社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険)の加入に関する評価項目を削除
この改正により、W点の素点合計の下限が変わりました。改正前は最高237点・最低▲210点だったものが、改正後は最高237点・最低▲90点になっています。これに伴い、W点は最高2,073点・最低▲788点、総合評定値Pは最高2,159点・最低163点に変わりました。上限は動いていません。
いちばん影響が大きいのは「就業履歴」の配点引下げ
報道では自主宣言制度の新設が目立ちますが、実務上いちばん効くのは、あわせて行われた就業履歴の配点見直しです。
| 審査項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 就業履歴を蓄積するために必要な措置(民間工事を含む全ての建設工事で実施) | 15点 | 10点 |
| 就業履歴を蓄積するために必要な措置(全ての公共工事で実施) | 10点 | 5点 |
| 建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無 | — | 5点(新設) |
お気づきでしょうか。就業履歴の加点が5点下がり、その5点が自主宣言制度に付け替えられた形です。現に建設キャリアアップシステム(CCUS)で就業履歴を蓄積して加点を受けていた会社が、自主宣言をしないまま次の経審を受けると、素点で5点分そのまま下がります。
素点5点がどれくらいの影響かというと、公表されている最高点・最低点から逆算すると素点1点はおおむねW点で8.75点、総合評定値Pではおよそ1.3点にあたります。つまり素点5点の差は、Pでおよそ6点から7点の差になります。等級(ランク)の境目にいる会社にとっては無視できない幅です。等級と点数の関係は公共工事のランク(等級格付)とはで解説しています。
逆にいえば、自主宣言さえしておけば差引きゼロで着地する設計になっています。今回の改正で点数を落とすのは、宣言という一手間をかけなかった会社だけ、ということです。就業履歴の蓄積そのものについては建設キャリアアップシステム(CCUS)とはをご覧ください。
「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」とは
今回新設された5点の対象は、国土交通省が実施している「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」(職人いきいき宣言)です。技能者を大切にし、処遇改善に積極的に取り組む事業者が、その姿勢を代表者の名前で宣言し、国土交通省のポータルサイトに公開される仕組みです。
宣言は元請事業者・下請事業者・発注者のいずれかの立場を選んで行います。重複しての宣言はできません。経審の加点は、元請・下請いずれの立場の宣言でも対象になります。
賛同が必要な必須項目は、大きく3つです。
- 労務費の確保・賃金支払い等のための取組:労務費や材料費の内訳を明示した見積書を作成すること、下請から出てきた内訳明示の見積書を考慮・尊重すること、技能者の処遇確保や担い手の育成に取り組むこと、国の調査に協力すること
- 建設キャリアアップシステムの活用:元請は現場での就業履歴の蓄積に向けた環境整備など、下請は雇用する全ての技能者について詳細型の技能者登録を行うこと
- 宣言企業との取引の優先:取引先を選ぶときに、宣言をしていることを考慮すること
申請できるのは、事業規模や建設業許可の有無を問いません。ただし、役員に暴力団員等がいないこと、建設業法に基づく指示処分以上の行政処分から1年以上経過していることなどの要件があります。監督処分の内容は建設業許可の欠格要件とはもあわせてご確認ください。
自主宣言から経審の加点までの流れ
加点を受けるには、審査基準日(=決算日)が宣言日以降であることが必要です。決算日を過ぎてから宣言しても、その期の経審には間に合いません。ここが最大の注意点です。
-
- ステップ1 宣言する立場を決める
- 元請事業者・下請事業者・発注者のいずれか一つを選びます。重複しての宣言はできません。
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- ステップ2 必須項目に賛同できるかを社内で確認する
- 見積書の内訳明示、技能者の処遇確保、就業履歴の蓄積、取引先の選定など、実際に取り組めるかを検討します。代表者の名前で宣言し、企業名と代表者名が公開されます。
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- ステップ3 取組開始日を決める
- これから始める取組を宣言することもできますが、開始が最も遅い取組の日を取組開始日とし、申請日から1年以上先には設定できません。
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- ステップ4 ポータルサイトから申請する
- 国土交通省の自主宣言制度のポータルサイトから申請します。登録されると宣言企業として公開されます。
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- ステップ5 決算を迎える(審査基準日)
- 宣言日以降に到来した決算日が審査基準日であることが加点の条件です。順番を逆にしないでください。
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- ステップ6 経審の申請時に宣言内容の写しと誓約書を提出する
- ポータルサイトの詳細ページから宣言内容をダウンロードした写しと、通知別記様式第7号の誓約書を添えて提出します。
なお、宣言の有効期間は申請日の翌月を起算日として2年経過後の最初の12月末までです。取組開始日までに取組が実施できていない場合は取下げが必要で、取り下げないままにすると1年間は再度の申請ができなくなることがあります。宣言は「とりあえず出しておく」性質のものではありません。
社会保険の審査項目が削除された理由
改正前のW1には、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の未加入についてそれぞれ▲40点、合計で最大▲120点という減点項目がありました。今回、この3項目がまるごと削除されています。
理由は明快です。令和2年10月1日から社会保険への加入が建設業許可の要件になり、許可の有効期間が5年であることから、令和7年10月1日以降に許可を持っている業者は当然に社会保険に加入していることになるためです。経審の段階で改めて確認する必要性が乏しくなった、という整理です。
したがって、すでに加入している会社にとっては、点数への影響はありません(もともと減点ゼロだったためです)。変わるのは、経審の際に提出していた確認資料が減り、事務が軽くなる点です。社会保険の加入が許可の要件であること自体は、まったく変わっていません。詳しくは建設業許可と社会保険の加入義務とはをご覧ください。
建設機械の加点対象が2機種増えた
従来9機種だった加点対象の建設機械に、不整地運搬車とアスファルト・フィニッシャが追加されました。令和6年能登半島地震の応急復旧工事での活用実績を踏まえた、災害対応力の評価という位置づけです。
加点を受けるには、審査基準日において自ら所有しているか、審査基準日から1年7か月以上の使用期間が定められたリース契約を結んでいること、そして必要な検査が行われていることが条件です。申請では売買契約書またはリース契約書の写しと、特定自主検査記録表または自動車検査証の写しを提出します。建設機械の保有状況は最大15点(14台以上保有する場合)の評価です。
すでに不整地運搬車やアスファルト・フィニッシャを持っている会社は、これまで点数にならなかった機械が加点対象になります。書類をそろえるだけで点数が増える、数少ない改正ですので、車検証の車体の形状欄を一度確認してみてください。
自社の点数はどう動くか
典型的なパターンで整理すると、次のようになります。
| 自社の状況 | 今回の改正での動き |
|---|---|
| 社会保険に加入済み・就業履歴の加点なし・宣言なし | 変化なし(提出書類が少し減る) |
| 就業履歴で加点を受けていた・宣言なし | 素点5点の減点(Pでおよそ6〜7点のマイナス) |
| 就業履歴で加点を受けていた・宣言あり | 差引きゼロ |
| 就業履歴の加点なし・宣言あり | 素点5点の加点 |
| 不整地運搬車やアスファルト・フィニッシャを保有 | 台数に応じて加点の可能性 |
点数を積み上げる考え方全体は経営事項審査(経審)の点数を上げる方法で、経営状況分析(Y点)の仕組みは経営状況分析(Y点)とはで解説しています。
よくある失敗3つ
①決算日を過ぎてから宣言してしまう。加点の条件は「審査基準日が宣言日以降であること」です。3月決算の会社が4月に宣言しても、その期の経審では加点されません。次の期まで1年待つことになります。
②宣言はしたが誓約書を出し忘れる。加点には、宣言していることを証する書面の写しと、通知別記様式第7号の誓約書の両方が必要です。宣言しただけでは自動的に加点されません。
③改正前の配点で受けたかったのに間に合わなかった。国土交通省は、改正前の加点で審査を受けたい場合は令和8年7月1日より前に申請するよう案内していましたが、この期限はすでに過ぎています。今後の申請はすべて新しい基準で処理されます。
費用と期間の目安
自主宣言制度の申請自体に手数料はかかりません。ポータルサイトからの申請で、宣言の内容を検討する時間が実質的なコストです。社内で必須項目に賛同できるかを確認する時間を含めても、数日から2週間程度を見ておけば足ります。
経審そのものの手数料や流れは従来どおりで、決算確定から経営状況分析、経営規模等評価の申請、結果通知までおおむね2か月から3か月です。経審の結果通知書の有効期間は経審の有効期限は1年7か月で解説しているとおりで、空白期間を作らないスケジュールが大切です。
自主宣言制度の宣言内容の具体的な選択肢や、経審申請時の添付書類の様式・部数は、制度の運用や許可行政庁によって取扱いが異なる場合があります。実際の申請にかかる費用・期間は、最新の案内で示されています。当事務所にご依頼いただく場合の報酬は、自主宣言の準備から経審の申請まで含めてお見積りします(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。
まとめ
令和8年7月1日以降の経審では、自主宣言制度の5点が新設され、就業履歴の配点が5点下がり、社会保険の減点項目が消えました。全体としては「宣言をすれば従来どおり、しなければ5点減る」という設計です。すでに就業履歴で加点を受けていた会社ほど、宣言の有無が点数に直結します。次の決算日が来る前に、宣言を済ませておくことが今できる最も確実な対策です。
建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。
自主宣言の準備から経審の申請まで、まとめてお引き受けできます。初回のご相談は無料、お電話(03-4500-1030)のほかオンラインでも承っています。




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