経審のX1点・X2点とは?完成工事高と自己資本額・平均利益額 2026年度

「経審の点数を上げたい」というご相談をいただくとき、話題になりやすいのは技術者の資格や社会保険、建設機械といった項目です。ところが実際に総合評定値(P点)を大きく動かしているのは、決算書に載っている2つの数字であることが少なくありません。

それがX1点(完成工事高)とX2点(自己資本額および平均利益額)です。この記事では、この2つの点数がどのような仕組みで計算されるのか、そして決算前に選べる余地がどこにあるのかを整理します。

結論|P点の4割はX1とX2で決まります

総合評定値P点の計算式は、建設業法施行規則にはっきり書かれています。

(総合評定値の算出)第21条の3

法第二十七条の二十九第一項の総合評定値は、次の式によつて算出するものとする。

P=0.25X1+0.15X2+0.2Y+0.25Z+0.15W

(この式において、P、X1、X2、Y及びWは、それぞれ次の数値を表すものとする。

P 総合評定値

X1 経営規模等評価の結果に係る数値のうち、完成工事高に係るもの

X2 経営規模等評価の結果に係る数値のうち、自己資本額及び利益額に係るもの

Y 経営状況分析の結果に係る数値

Z 経営規模等評価の結果に係る数値のうち、技術職員数及び元請完成工事高に係るもの

W 経営規模等評価の結果に係る数値のうち、X1、X2、Y及びZ以外に係るもの)

建設業法施行規則 第21条の3(総合評定値の算出)

X1のウェイトが0.25、X2のウェイトが0.15ですので、合わせて0.40。つまりP点の4割は、決算書に書かれた完成工事高と純資産・利益の数字だけで決まります。技術者を増やすよりも、決算の締め方を見直すほうが効く場面があるのはこのためです。

5つの評点の最高点と最低点

令和8年7月1日以降に申請する経審では、それぞれの評点の幅は次のとおりです。

区分審査項目最高点/最低点ウェイト
X1完成工事高(許可業種別)2,309点/397点0.25
X2自己資本額・利払前税引前償却前利益2,280点/454点0.15
Y経営状況(負債抵抗力・収益性ほか)1,595点/0点0.20
Z技術職員数・元請完成工事高2,441点/456点0.25
Wその他の審査項目(社会性等)2,073点/▲788点0.15

ここで目を引くのが最低点です。X1もX2も、たとえ完成工事高がごくわずかでも400点前後は付きます。逆にいえば、規模を大きくしても点数は青天井には伸びず、上に行くほど伸びが鈍くなる設計になっています。経審全体の仕組みは経営事項審査(経審)とは?で解説しています。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

X1点|完成工事高をどう評価するか

X1点は、許可を受けた建設業の種類ごとの年間平均完成工事高を、国土交通大臣の告示に定められた区分にあてはめて算出します。区分は1,000万円未満から1,000億円以上までの42段階に分かれており、それぞれに評点の計算式が用意されています。

いちばん下の区分でも397点、いちばん上の区分で2,309点です。評点に小数点以下の端数が出た場合は切り捨てられます。

2年平均か3年平均かを選べます

X1点でまず判断が必要になるのが、平均する期間です。国土交通省の通知「経営事項審査の事務取扱いについて」は、年間平均完成工事高を申請をする日の属する事業年度の開始の日の直前2年、または直前3年の平均とすると定めています。

売上が伸びている会社なら直前2年、直近で落ち込んだ会社なら好調だった年を含む直前3年、というように有利なほうを選べます。ただし、ここに大きな制約があります。

同じ通知は「審査対象建設業ごとに直前2年又は直前3年の年間平均完成工事高を選択できることとはせず、すべての審査対象建設業において同一の方法によることとする」と定めています。業種ごとに有利なほうを選び分けることはできません。複数業種で経審を受ける会社は、全体の合計で考える必要があります。

業種の振り分けが点数を左右します

もうひとつ効いてくるのが、工事をどの業種に計上するかです。通知は、審査対象が土木工事業・建築工事業(一式工事業)である場合、許可を受けている一式工事業以外の業種の完成工事高を、その内容に応じて一式工事業の完成工事高に含めることができるとしています。逆に、一式工事業以外の業種どうしで工事の性質に応じて振り替えることも認められています。

ただし1つの請負契約に係る完成工事高を、2以上の業種に分割したり重複して計上したりすることはできません。積み上げを大きく見せるための水増しは虚偽記載であり、許可の取消しにつながります。振替は「実態に合わせて正しく分類し直す」作業であって、増やす作業ではありません。財務諸表の組替えについては建設業の財務諸表の作り方で解説しています。

X2点|自己資本額と平均利益額の平均です

X2点は、自己資本額の点数と平均利益額の点数を出し、その合計を2で割った数値(小数点以下切り捨て)です。片方だけが高くても、もう片方が低ければ真ん中に引き戻されます。

自己資本額は基準決算か2期平均かを選べます

自己資本の額とは、審査基準日(申請をする日の直前の事業年度の終了の日)の決算における純資産合計の額です。これを「基準決算」と呼びます。

ここでも選択肢があります。通知は、自己資本の額について「基準決算における純資産合計の額又は基準決算及び基準決算の直前の審査基準日における自己資本の額の平均の額」と定めています。つまり直近1期の数字と、直近2期の平均のどちらかを選べます。前期のほうが純資産が厚かった会社は、2期平均を選ぶことで点数を保てる場合があります。なお、自己資本の額が0円に満たない場合は0円とみなして審査されます。

平均利益額は営業利益に減価償却を足した2期平均です

もう一方の平均利益額は、少し独特の考え方をします。

まず利払前税引前償却前利益=営業利益の額+減価償却実施額と定義されます。減価償却実施額には、未成工事支出金に係る減価償却費、販売費および一般管理費に係る減価償却費、完成工事原価に係る減価償却費などが含まれます。そのうえで、審査対象事業年度とその直前の事業年度の2期の平均をとります。こちらも0円に満たない場合は0円とみなされます。

注目していただきたいのは、減価償却費を足し戻して評価する点です。減価償却を計上しないでおくと営業利益は大きく見えますが、足し戻す額がないため利払前税引前償却前利益はさほど変わりません。反対に、設備投資をして減価償却をきちんと計上している会社は、営業利益が小さくても平均利益額では評価されます。設備投資に前向きな会社が不利にならないよう組まれた仕組みだとお考えください。

そもそも経審は何のための手続きか

(経営事項審査)第27条の23

公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを発注者から直接請け負おうとする建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その経営に関する客観的事項について審査を受けなければならない。

2 前項の審査(以下「経営事項審査」という。)は、次に掲げる事項について、数値による評価をすることにより行うものとする。

一 経営状況

二 経営規模、技術的能力その他の前号に掲げる事項以外の客観的事項

3 前項に定めるもののほか、経営事項審査の項目及び基準は、中央建設業審議会の意見を聴いて国土交通大臣が定める。

建設業法 第27条の23(経営事項審査)

第3項に注目してください。審査の項目と基準は法律ではなく国土交通大臣の告示で定められます。だからこそ数年おきに配点が動きます。令和8年7月1日施行の改正でも、W点の項目が入れ替わりました。改正の中身は経審のW点が変わりましたで解説しています。

決算から逆算する手順

X1点とX2点は決算書の数字で決まりますので、動かせるのは決算を締める前です。次の順序で考えると整理しやすくなります。

  1. ステップ1 直近3期の完成工事高を業種別に並べる
    審査を受けたい業種ごとに、直前2年の平均と直前3年の平均の両方を計算します。全業種で同じ方法によらなければなりませんので、合計でどちらが有利かを見ます。
  2. ステップ2 工事の業種分類を実態に合わせて点検する
    工事経歴書の分類が施工の実態と合っているかを確認します。一式工事業への振替が可能な工事がないかもあわせて見ます。分割・重複計上は認められません。
  3. ステップ3 純資産の額を基準決算と2期平均で比べる
    自己資本額は直近1期か2期平均かを選べます。どちらが高いかを計算し、有利なほうを選びます。
  4. ステップ4 営業利益と減価償却実施額を確認する
    2期分の営業利益に減価償却実施額を足し、平均を出します。この段階で赤字が見込まれるなら、期中のうちに打てる手があるかを顧問税理士と相談します。
  5. ステップ5 決算を確定し、建設業会計へ組み替える
    税務署へ提出する決算書とは別に、建設業許可の様式に沿った財務諸表を作成します。ここでの区分がY点にも影響します。
  6. ステップ6 経営状況分析を受け、経営規模等評価を申請する
    登録経営状況分析機関の分析結果(Y点)を添えて、許可行政庁へ経営規模等評価を申請し、あわせて総合評定値を請求します。

Y点の中身は経営状況分析(Y点)とは?で、点数全体を上げる考え方は経審の点数を上げる方法で解説しています。

費用と期間の目安

経営規模等評価の申請手数料は、建設業法施行令により8,100円に審査を受ける建設業1種類につき2,300円を加えた額と定められています。総合評定値の請求はこれとは別に400円に1種類につき200円を加えた額です。3業種で受ける場合、8,100円+6,900円=1万5,000円に、総合評定値の400円+600円=1,000円を加えた1万6,000円が目安になります。手数料の額は知事許可の場合には各都道府県の条例で定められています。

このほかに登録経営状況分析機関へ支払う分析料金がかかります。決算確定から結果通知までは、分析におおむね1週間から2週間、経営規模等評価に3週間から1か月程度をみておくと安心です。経審の結果が使える期間については経審の有効期間をご覧ください。

当事務所にご依頼いただく場合の報酬は、経営規模等評価申請と総合評定値請求をあわせて10万円程度からを目安としています。決算前の点数シミュレーションのみのご依頼も承っています。(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)

よくある失敗

ひとつめは、決算を締めてから2年平均か3年平均かを考えることです。選択そのものは申請時に行いますが、どちらが有利かは決算の数字が固まる前に分かります。期中に把握しておけば、完成工事高の計上時期の判断にも活かせます。

ふたつめは、工事経歴書の業種分類を毎年なんとなく踏襲してしまうことです。実態と分類がずれたまま数年が経つと、主力業種の完成工事高が伸びず、点数が頭打ちになります。分類の見直しは、増やす作業ではなく正しくする作業です。

みっつめは、節税のための処理が経審では不利に働く場合があることを見落とすことです。利益を圧縮すれば法人税は下がりますが、平均利益額と自己資本額はともに下がります。公共工事の受注を増やしたい年の決算では、この2つを並べて判断してください。自己資本額の選択や減価償却の計上が税務上どのような影響を及ぼすかは税理士の業務です。当事務所は税理士を交えた相談にも対応しています。

まとめ

X1点は業種別の年間平均完成工事高を42区分にあてはめて算出し、X2点は自己資本額の点数と平均利益額の点数の平均で決まります。この2つでP点の4割を占めますので、経審対策は決算対策とほとんど同じ意味だとお考えください。完成工事高は2年平均か3年平均かを全業種同一で選べ、自己資本額は基準決算か2期平均かを選べます。選べる余地があるのは、いずれも決算を締める前です。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。

当事務所では、決算前の点数シミュレーションから工事経歴書の業種分類の点検、経営規模等評価の申請までお手伝いしています。直近3期分の決算書と工事経歴書をお見せいただければ、いまの点数と、決算までに動かせる余地をその場で整理してご説明します。お電話(03-4500-1030)またはオンラインでの無料相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

出典