遺留分とは?割合の計算と遺留分侵害額請求の期限1年を解説 2026年版
「長男にすべての財産を相続させる」という遺言が出てきたとき、ほかの相続人は何も受け取れないのでしょうか。実は、兄弟姉妹以外の相続人には遺留分という最低限の取り分が法律で保障されており、遺言によっても奪うことができません。この記事では、遺留分がある人・ない人、割合の計算方法、2019年の改正で金銭の請求に変わった遺留分侵害額請求の流れと期限、そして遺言を作る側の備えまで、行政書士がわかりやすく解説します。
遺留分とは?遺言でも奪えない最低限の取り分
遺留分とは、一定の範囲の相続人に保障された、遺産の最低限の取り分です。被相続人は遺言で自由に財産の行き先を決められますが、遺留分を侵害された相続人は、その分に相当する金銭を請求できます。民法は遺留分の権利者と割合を次のように定めています。
(遺留分の帰属及びその割合)第1042条
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一2 相続人が数人ある場合には、前項各号に定める割合は、これらに第九百条及び第九百一条の規定により算定したその各自の相続分を乗じた割合とする。
民法 第1042条第1項第一号・第二号、第2項(遺留分の帰属及びその割合)
ポイントは2段階で考えることです。まず相続人全体で見た取り分(総体的遺留分)が2分の1、相続人が父母などの直系尊属だけの場合は3分の1。次に、それぞれの相続人の遺留分は、この割合に法定相続分を掛けて計算します。法定相続分の考え方は相続する人の順番・範囲と相続する割合で解説しています。
遺留分がある人・ない人
遺留分を持つのは、配偶者・子(代襲相続する孫を含む)・直系尊属(父母や祖父母)です。条文が「兄弟姉妹以外の相続人」と定めているとおり、兄弟姉妹(およびその子である甥・姪)には遺留分がありません。おひとりさまや子のいないご夫婦で、財産を配偶者や特定の方に集めたい場合、相続人が兄弟姉妹だけであれば遺言で希望どおりに分けられるということです。相続放棄をした人や、相続欠格・排除に該当した人も遺留分を持ちません。

遺留分の割合と計算方法
よくあるご家族の形での遺留分は次のとおりです。
| 相続人 | 総体的遺留分 | 一人あたりの遺留分 |
|---|---|---|
| 配偶者のみ | 2分の1 | 配偶者 2分の1 |
| 配偶者と子1人 | 2分の1 | 配偶者 4分の1/子 4分の1 |
| 配偶者と子2人 | 2分の1 | 配偶者 4分の1/子 各8分の1 |
| 子2人のみ | 2分の1 | 子 各4分の1 |
| 父母のみ | 3分の1 | 父母 各6分の1 |
| 配偶者と兄弟姉妹 | 2分の1 | 配偶者 2分の1/兄弟姉妹 なし |
たとえば遺産が4,000万円で相続人が配偶者と子2人の場合、配偶者の遺留分は1,000万円、子はそれぞれ500万円です。「全財産を長男へ」という遺言があっても、配偶者は1,000万円、二男は500万円を金銭で請求できることになります。
計算のもとになる財産には生前贈与も入る
遺留分を計算するもとになる財産は、亡くなった時点の財産に生前贈与を加え、そこから債務の全額を差し引いた額です(民法第1043条第1項)。加算される贈与の範囲には期間の制限があり、第三者への贈与は相続開始前の1年間のものが対象です。一方で、相続人に対する結婚や生計の資本としての贈与は、10年分までさかのぼって算入される点に注意が必要です(同法第1044条第3項)。「何十年も前に家の購入資金を出してもらった」というケースが争点になるのは、この規定があるためです。
2019年の改正で「金銭の請求」に変わった
2019年(令和元年)7月1日に施行された相続法の改正で、遺留分の制度は大きく変わりました。かつては「遺留分減殺請求」と呼ばれ、不動産などの持分そのものを取り戻す権利でしたが、改正後は金銭の支払いを求める権利に整理されました。
(遺留分侵害額の請求)第1046条
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
民法 第1046条第1項(遺留分侵害額の請求)
この改正には実務上の大きな意味があります。以前は請求によって不動産が共有状態になり、事業用の土地や自宅の利用が難しくなることがありました。改正後はお金で解決する形になったため、事業や自宅を承継させたい場合の設計がしやすくなっています。反面、請求を受けた側には現金を用意する必要が生じるため、遺言を作る段階で生命保険を活用して支払い資金を準備しておくといった対策が重要になりました。
遺留分侵害額請求の流れ
遺留分は、請求しなければ自動的に実現するものではありません。次の順で進めるのが一般的です。
-
- ステップ1 相続人と財産を確認する
- 戸籍で相続人を確定し、遺言書の内容と財産の全体像(不動産・預貯金・生前贈与)を把握して、自分の遺留分額を試算します。
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- ステップ2 請求する意思を伝える
- 期限内に請求したことを残すため、配達証明付きの内容証明郵便で意思表示を行うのが一般的です。金額の計算根拠も添えます。
-
- ステップ3 当事者間で話し合う
- 支払額と支払方法(分割・期限)を協議します。合意できたら合意書を作成し、後の紛争を防ぎます。
-
- ステップ4 家庭裁判所の調停・訴訟
- 話し合いがつかない場合は家庭裁判所の「遺留分侵害額の請求調停」を申し立て、不成立なら訴訟へ進みます。代理や裁判所提出書類の作成は弁護士の業務です。
なお、遺産の分け方そのものを話し合う遺産分割協議とは別の手続きです。遺産分割の進め方は遺産分割協議書の作り方をご覧ください。
期限は「知ってから1年」「相続開始から10年」
遺留分侵害額請求には短い期限があります。
(遺留分侵害額請求権の期間の制限)第1048条
遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。
民法 第1048条(遺留分侵害額請求権の期間の制限)
相続の開始と遺留分の侵害を知ってから1年を過ぎると、請求できなくなります。相続開始から10年という期限もあり、こちらは知らなかった場合でも進みます。遺言の内容を知って納得できない気持ちのまま時間が過ぎてしまうと、権利そのものを失いますので、まずは期限内に意思表示をしておくことが大切です。相続全体の期限は相続手続きの流れと期限で一覧にしています。
遺言を作る側の備え
遺留分の争いは、遺言を作る段階でかなり防げます。遺留分に配慮した内容にしておくことが、最も確実な争い予防です。具体的には、遺留分に相当する額は金銭で渡せるようにしておく、生命保険の受取人を承継者にして支払い資金を用意する、なぜその分け方にしたのかを付言事項で伝える、といった工夫があります。遺言の方式の選び方は自筆証書遺言と公正証書遺言の違いで比較しています。
生前に遺留分を放棄してもらう方法
相続が始まる前に遺留分を放棄することもできますが、本人の意思が守られるよう家庭裁判所の許可が必要とされています(民法第1049条第1項)。相続開始後の放棄は当事者の意思表示で足りますが、生前は裁判所の関与が前提となる点が異なります。
事業承継には民法の特例がある
会社の株式や事業用資産を後継者に集中させたい場合、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律の遺留分に関する民法の特例を使える場合があります。推定相続人全員の合意により、後継者が取得した株式等を遺留分算定の対象から外す「除外合意」や、価額を合意時点に固定する「固定合意」を定める仕組みです(同法第4条第1項)。この合意は、経済産業大臣の確認を受けたうえで家庭裁判所の許可を得て初めて効力が生じ、確認の申請は合意から1か月以内という期限もあります(同法第7条第3項・第8条第1項)。建設会社などの事業承継では有力な選択肢です。許可の引き継ぎとあわせた検討は建設業許可の事業承継・相続もご参照ください。
行政書士に頼めること・専門家の分担
遺留分をめぐって当事者の意見が対立し、交渉や調停・訴訟に進む場面では、代理人となれるのは弁護士です。家庭裁判所に提出する申立書などの作成も弁護士・司法書士の業務であり、当事務所で代行することはできません。一方で、遺言書の作成支援(遺留分に配慮した設計・公正証書遺言の原案作成と公証役場との調整)、相続人調査のための戸籍収集、財産目録の作成、争いのない場合の遺産分割協議書の作成は行政書士がお手伝いできる分野です。当事務所では、争いになる前の予防と、必要な場合の弁護士のご紹介まで含めてご案内しています。
よくある失敗
- 期限を過ぎる:遺言の内容に納得できないまま1年が経過し、請求できなくなる。
- 口頭だけで請求する:期限内に請求したことを証明できず、後で争いになる。
- 生前贈与を計算に入れない:相続人への10年分の贈与を見落とし、遺留分額を過小に見積もる。
- 遺言で支払い資金を用意しない:不動産だけを承継させた結果、後継者が金銭を用意できず売却に追い込まれる。
まとめ|遺留分は「割合」と「期限」を先に押さえる
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の取り分で、総体的遺留分(2分の1または3分の1)に法定相続分を掛けて計算します。2019年の改正で金銭請求に一本化され、請求できる期間は知ってから1年・相続開始から10年です。請求する側は期限、遺言を作る側は支払い資金の準備が要点になります。藤原友行政書士事務所(東京都世田谷区大原)では、相続相談400件超の経験をもとに、遺留分に配慮した遺言書の作成から相続人調査までを初回無料でご相談いただけます(電話:03-4500-1030・オンライン相談可)。
相続手続き全体の進め方は、相続手続きの総合ガイドでまとめて解説しています。




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