合同会社から株式会社への組織変更|流れ・費用・期間を解説 2026年版

合同会社で事業を始めて数年。取引先が増え、金融機関との付き合いも深くなってきた頃に届くご相談があります。「株式会社にしたいのですが、いったん解散して作り直すことになりますか」。

結論から申し上げると、その必要はありません。組織変更という手続きを使えば、法人格を保ったまま会社の種類だけを株式会社に変えることができます。会社を作り直すわけではないので、取引契約も、銀行口座も、そして許認可も、原則としてそのまま引き継がれます。

この記事では、組織変更の全体像と、実際にかかる費用・期間、そして見落とされがちな許認可の扱いをご説明します。

組織変更とは|法人格は消えない

まず、いちばん大事な点を押さえます。組織変更は、会社を解散して新しく作るのではありません。同じ会社が、持分会社(合同会社)という服から株式会社という服に着替えるイメージです。

(持分会社の組織変更の効力の発生等)第747条

1 組織変更をする持分会社は、効力発生日に、株式会社となる。

(中略)

5 前各項の規定は、第七百八十一条第二項において準用する第七百七十九条(第二項第二号を除く。)の規定による手続が終了していない場合又は組織変更を中止した場合には、適用しない。

会社法 第747条第1項・第5項(持分会社の組織変更の効力の発生)

この「法人格が続く」という性質が、実務では非常に大きな意味を持ちます。

  • 取引契約…契約の当事者は変わらないため、巻き直しは原則として不要(商号変更の通知は必要)
  • 銀行口座・借入…同一法人として継続します
  • 従業員…雇用関係はそのまま続きます
  • 許認可…原則として引き継がれます

この点が、新しく株式会社を設立して事業を移す方法(事業譲渡)との決定的な違いです。事業譲渡の場合、許認可は原則として引き継げず、取り直しが必要になります。詳しくは事業譲渡で許認可は引き継げる?で扱っています。

なぜ株式会社にするのか

手続きに入る前に、動機を整理しておきます。合同会社と株式会社の違いを踏まえたうえで、次のような理由で組織変更を選ばれる方が多いです。

  • 信用力…取引先の与信基準や入札の参加要件で、株式会社であることが求められる場合があります
  • 資金調達…株式を発行して外部から出資を受け入れる設計ができます
  • 人材採用…求人の場面で認知されやすいという声があります
  • 事業承継…株式という形で持分を分けやすく、承継の設計がしやすくなります

逆に、決算公告の義務が生じる、役員に任期が生じて重任登記が必要になる、といった負担も増えます。両者の比較は株式会社と合同会社の違いをご覧ください。合同会社の設立方法もあわせて参考になさってください。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

手続きの2つの山|総社員の同意と債権者保護

山その1|総社員の同意

第781条

1 組織変更をする持分会社は、効力発生日の前日までに、組織変更計画について当該持分会社の総社員の同意を得なければならない。

  ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

会社法 第781条第1項(持分会社の組織変更計画の承認)

株式会社の株主総会のような多数決ではなく、社員全員の同意が必要です。ひとり社員の合同会社であれば形式的に済みますが、社員が複数いる場合は、1人でも反対すれば進みません。定款に別段の定めを置いている場合はそれによります。

山その2|債権者保護手続

実務上、期間を決めるのはこちらです。

(債権者の異議)第779条

(中略)

2 組織変更をする株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。

一 組織変更をする旨

(中略)

三 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

3 前項の規定にかかわらず、組織変更をする株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。

会社法 第779条第2項・第3項(債権者の異議。第781条第2項により持分会社の組織変更に準用)

ポイントを整理します。

  • 官報に公告する…組織変更をする旨と、異議を述べられる期間を掲載します
  • 期間は1か月以上…これより短くはできません
  • 知れている債権者には個別に催告する…取引先や金融機関に書面を送ります

第3項の使い方を知っておくと実務が楽になります。定款で公告方法を日刊新聞紙または電子公告と定めている合同会社であれば、官報とその方法の両方で公告することで、知れている債権者への個別の催告を省略できます。債権者が多い会社ほど効果があります。

そしてもうひとつ、絶対に外せない点があります。この債権者保護手続が終わっていないと、効力発生日が来ても組織変更の効力は生じません(会社法第747条第5項)。つまり、効力発生日は公告の開始から1か月以上先に設定しておく必要があるということです。ここを短く設定してしまうと、登記が受理されず日程を組み直すことになります。

手続きの流れ

  1. ステップ1 組織変更後の会社の内容を決める
    商号(末尾を株式会社に)、目的、本店、発行可能株式総数、取締役などの機関設計、そして効力発生日を決めます。効力発生日は、債権者保護手続に1か月以上かかることを前提に、余裕をもって設定してください。
  2. ステップ2 組織変更計画書を作成する
    会社法第746条が定める事項を漏れなく記載します。社員が取得する株式の数と割当てに関する事項、効力発生日などが必須です。組織変更後の株式会社の定款も、この段階で内容を固めます。
  3. ステップ3 総社員の同意を得る
    効力発生日の前日までに、社員全員の同意を書面で残します。同意書は登記の添付書類になります。
  4. ステップ4 債権者保護手続を行う
    官報に公告を出し、知れている債権者へ個別に催告します。異議申述期間は1か月以上です。官報は申込みから掲載までに日数がかかるため、逆算して手配してください。
  5. ステップ5 異議への対応
    期間内に異議が出た場合は、弁済するか、相当の担保を提供するなどの対応が必要です。異議がなければ承認したものとみなされます。
  6. ステップ6 効力発生日を迎え、登記を申請する
    効力発生日から2週間以内に、合同会社の解散登記と株式会社の設立登記を同時に申請します。登記申請の代理は司法書士の業務です。
  7. ステップ7 許認可と各種届出を整える
    税務署・都道府県税事務所・市区町村への異動届出、年金事務所や労働基準監督署への届出を行います。許認可を持っている場合は、それぞれの窓口への変更届も必要です。

登記の期限は効力発生日から2週間以内です(会社法第920条)。この期間を過ぎると過料の対象になり得ますので、効力発生日が決まった段階で登記の準備も並行して進めてください。

費用と期間の目安

項目目安
登録免許税(合同会社の解散登記)3万円
登録免許税(株式会社の設立登記)資本金の額の1,000分の1.5(最低3万円)
官報公告の掲載料掲載行数によって変わります(数万円)
登記事項証明書・印鑑証明書など数千円程度
期間準備から登記完了までおおむね2か月前後(債権者保護手続の1か月を含む)

登録免許税だけを見ると最低6万円からということになります。株式会社を新しく設立する場合の登録免許税が資本金の1,000分の7(最低15万円)であることと比べると、組織変更のほうが軽い設計になっています。

なお、定款認証は不要です。株式会社を新規に設立する場合と違い、組織変更では公証人による定款認証の手続きがありません。この点も費用面では有利に働きます。

見落とされがちな「その後」

登記が終われば完了、ではありません。許認可を持っている会社ほど、後工程が重要です。

  • 建設業許可…法人格は継続するので許可自体は続きますが、商号や役員の変更として届出が必要です
  • 宅地建物取引業免許・産業廃棄物収集運搬業許可など…それぞれの窓口へ変更の届出をします。届出期限は許可の種類ごとに異なります
  • 税務・社会保険…異動届出書の提出が必要です
  • 役員の任期…株式会社になると取締役に任期が生じます。任期満了ごとの重任登記を忘れないよう、管理の仕組みを作っておいてください
  • 決算公告…株式会社には決算公告の義務があります

設立直後にやることの全体像は会社設立後にやること一覧が参考になります。組織変更の場合も、届出先の顔ぶれはおおむね共通しています。

専門家の役割

この手続きは複数の専門資格にまたがります。

  • 行政書士…組織変更計画書・総社員の同意書・定款などの書類作成、許認可の変更届出
  • 司法書士…登記申請の代理
  • 税理士…税務上の取扱いと税務署への届出

当事務所は、書類作成と許認可の側から全体の段取りをお手伝いします。登記と税務については、連携している司法書士・税理士をご案内できますので、窓口を分ける手間はかかりません。

まとめ

  • 組織変更は法人格が継続する手続きで、契約・口座・許認可が原則そのまま残ります
  • 総社員の同意が必要です(定款に別段の定めがあればそれによります)
  • 債権者保護手続に1か月以上かかり、これが終わるまで効力は生じません
  • 登記は効力発生日から2週間以内に、解散と設立を同時に申請します
  • 登録免許税は最低6万円。定款認証は不要です
  • 登記後の許認可の変更届を忘れないでください

当事務所は東京都行政書士会世田谷支部に所属し、法人の設立から組織の変更、許認可までを一貫してお手伝いしています。「株式会社にしたほうがよいか」という段階からのご相談で構いません。お電話(03-4500-1030)またはお問い合わせフォームからどうぞ。初回のご相談は無料で、オンラインにも対応しています。正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください。

会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。

出典