民泊や簡易宿所で朝食を出すには?飲食店営業許可の要否を解説 2026年版
民泊やゲストハウスを始める方から、「宿泊者に朝食を出したいのですが、届出や許可は別に必要ですか」というご相談をよくいただきます。結論として、調理して宿泊者に食べさせる場合は、原則として保健所の飲食店営業許可が必要です。一方で、包装されたパンをそのまま渡すだけなら許可が不要なこともあり、家主居住型の民泊には家庭用の台所を使える緩和措置もあります。この記事では、線引きの考え方と手続きの流れを、行政書士がわかりやすく解説します。
宿泊者に食事を出すと「飲食店営業」になる
旅館業の許可や住宅宿泊事業(民泊)の届出は、あくまで「人を宿泊させる」ことについての手続きです。食品を調理して客に飲食させる行為は、これとは別に食品衛生法の規制を受けます。宿泊料に朝食代が含まれていて別途料金を取らない場合でも、営業として提供する以上は同じ扱いです。
第55条
前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
食品衛生法 第55条第1項(営業の許可)
ここでいう「前条に規定する営業」=許可が必要な業種は政令で指定されており、その筆頭が飲食店営業です
(営業の指定)第35条
法第五十四条の規定により都道府県が施設についての基準を定めるべき営業は、次のとおりとする。
一 飲食店営業(中略)
十一 菓子製造業(菓子(パン及びあん類を含む。)を製造する営業をいい、第二十六号又は第二十八号に該当するものを除く。)
食品衛生法施行令 第35条第一号・第十一号(営業の指定)
許可を受けずに調理した食事を提供すると、無許可営業として営業停止や罰則の対象になります。飲食店営業許可そのものの手続きは、飲食店営業許可の取り方で詳しく解説しています。

コーヒーやお茶を出す場合も対象になる
かつては「喫茶店営業」という別の許可区分がありましたが、2021年(令和3年)6月1日の食品衛生法改正で喫茶店営業は飲食店営業に統合され、許可が必要な業種は32業種に整理されました。そのため、コーヒーやお茶を淹れて宿泊者に提供する場合も、原則として飲食店営業許可の範囲で考えることになります。あわせて、あらかじめ調理された食品を温めて出すだけといった簡易な営業については、飲食店営業の施設基準が一部緩和されています。
許可がいらないケースと、その境界
次のような提供であれば、調理にあたらないため許可が不要と扱われるのが一般的です。
- 市販の包装された菓子パン・カップの飲み物を、包装のまま宿泊者に渡す
- 宿泊者が自分で使える共用キッチンを用意し、宿泊者自身が調理する(施設側は調理しない)
- 近隣の飲食店を案内する、出前の手配を取り次ぐだけにとどめる
一方で、卵を焼く、パンを切って盛り付ける、コーヒーを淹れて出すといった行為は調理にあたり、許可が必要と判断される方向に傾きます。「無償のサービスだから大丈夫」という理解は誤りで、営業に伴う提供かどうかで判断されます。【要確認】包装食品のみを提供する場合の扱いや、共用キッチンの運用の可否については自治体(保健所)ごとに解釈の幅がありますので、施設所在地の保健所への事前相談から確認まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。
家主居住型の民泊には施設基準の緩和がある
飲食店営業の許可を取る場合、通常は住居と営業施設を区画することが求められます。自宅の台所をそのまま使うことは認められないのが原則で、これが民泊で朝食を出したい家主にとって大きな壁でした。この点について、厚生労働省は2021年(令和3年)8月27日付の通知(薬生食監発0827第2号)で、家主居住型の民泊施設に限った取扱いを示しています。
通知の要点は次のとおりです。
- 対象は、住宅宿泊事業法施行規則第2条第1号に規定される家屋=家主居住型民泊施設
- 宿泊客に対してのみ食品を提供することを目的とした営業許可申請であること
- 適切な衛生管理のもとで、家庭用台所と営業で用いる調理場所の併用等を可能として差し支えない
- 手洗い・便所・更衣場所・床面や内壁の材質の取扱いについても配慮する
- 併用を認めた場合でも、一般衛生管理やHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の規定は遵守が必要
つまり、家主が住みながら営む民泊であれば、家庭の台所を使って朝食を出せる道が開かれたということです。ただし、これは許可が不要になるという意味ではなく、施設基準が緩和されるという意味である点にご注意ください。【要確認】通知を受けた運用(条例改正や弾力的運用の程度、家主居住型であることの確認方法)は自治体ごとに異なりますので、管轄の保健所に相談しましょう。家主居住型と家主不在型の区別は、民泊(住宅宿泊事業)の始め方で整理しています。
簡易宿所・旅館業で食事を出す場合
年間180日の制限を超えて通年営業する簡易宿所や旅館・ホテル営業でも、考え方は同じです。宿泊者に朝食や夕食を提供するなら飲食店営業許可が必要で、家主居住型民泊の台所の緩和は旅館業の施設には適用されません。厨房は客室や住居と区画し、二槽式の流し・手洗い設備・冷蔵設備・床や内壁の材質など、都道府県の条例で定める施設基準を満たす必要があります。厨房の位置と区画は、物件を借りる前・改装する前に保健所へ相談しておくのが結局いちばん早道です。旅館業許可そのものの要件は簡易宿所の営業許可とはをご覧ください。
また、宿泊施設内でパンや焼き菓子を製造して販売したい場合は菓子製造業、酒類を提供して深夜も営業する場合は深夜酒類提供飲食店営業開始届出など、内容によって別の手続きが加わります。
食品衛生責任者と衛生管理計画への対応
飲食店営業許可を受ける施設には、食品衛生責任者を置かなければなりません。調理師や栄養士などの資格がなければ、各都道府県の食品衛生協会が実施する養成講習会(1日程度)を受講して資格を得ます。宿泊施設の場合、家主自身が受講するケースが一般的です。
あわせて、2021年6月からすべての食品等事業者に衛生管理計画の作成と記録が義務づけられています。小規模な事業者は、業界団体が作成した手引書に沿った簡略化された方法で対応できます。宿泊者への食事提供は少人数でも義務の対象ですから、開業時に様式をそろえておくと運用が楽になります。
朝食提供までの手続きの流れ
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- ステップ1 提供する内容を決める
- 調理して出すのか、包装食品を渡すだけか、共用キッチンで宿泊者に調理してもらうのかを決めます。ここで許可の要否が変わります。
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- ステップ2 保健所に事前相談する
- 図面を持参し、厨房の位置・設備・住居との区画について相談します。家主居住型民泊の場合は、台所の併用が認められるかもこの段階で確認します。
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- ステップ3 設備を整え、食品衛生責任者を確保する
- 手洗い設備・シンク・冷蔵設備などを基準に合わせて設置し、養成講習会の受講などで責任者を確保します。
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- ステップ4 営業許可を申請する
- 申請書・施設の図面・食品衛生責任者の資格を示す書類などを保健所へ提出し、手数料を納付します。
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- ステップ5 施設検査を受けて営業開始
- 保健所の担当者が現地を確認し、基準に適合していれば許可証が交付されます。交付後に朝食の提供を始められます。
費用と期間の目安
飲食店営業許可の申請手数料は自治体により異なりますが、おおむね1万6,000円〜1万8,000円程度が目安です。食品衛生責任者の養成講習会は1万円台が一般的です。事前相談から許可証の交付までは、施設が基準を満たしている場合でおおむね2週間〜1か月程度を見ておくとよいでしょう。改装が必要な場合は工事期間が加わります。
民泊の届出や旅館業許可と同時に進める場合、保健所・消防署・建築指導課への対応が重なります。当事務所にご依頼いただく場合の費用は、施設の規模や同時に進める手続きにより幅がありますが、正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください。
よくある失敗
- 宿泊の手続きだけで開業する:民泊の届出は済ませたのに食品の許可を取らずに朝食を出し、指導を受ける。
- 改装後に相談する:厨房を作ってから保健所に相談し、区画や手洗い設備の不足で追加工事になる。
- 無償だから不要と考える:宿泊料に含めた「サービスの朝食」でも営業に伴う提供として許可が必要になる。
- 衛生管理の記録を残さない:衛生管理計画を作らず、立入検査で指摘を受ける。
まとめ|「調理するかどうか」で手続きが変わる
民泊や簡易宿所で朝食を出すには、調理を伴うなら飲食店営業許可が原則として必要です。包装された食品を渡すだけなら不要と扱われることが多く、家主居住型の民泊では家庭用台所の併用を認める緩和もあります。判断が分かれる部分は自治体の運用によりますので、物件を改装する前の事前相談が何よりの近道です。藤原友行政書士事務所(東京都世田谷区大原)では、民泊の届出・旅館業許可と飲食店営業許可をまとめてご相談いただけます(初回無料・電話:03-4500-1030・オンライン相談可)。
民泊・旅館業の許可と届出の全体像は、民泊・旅館業許可の総合ガイドでまとめて解説しています。




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