旅館業の営業者変更とは?相続・譲渡・法人成りで許可を引き継ぐ手続きを解説 2026年版
「先代が経営していた旅館を息子が引き継ぎたい」「個人で始めたゲストハウスを法人化したい」「宿泊施設をM&Aで買い取りたい」――このようなとき、気になるのが旅館業の許可をそのまま引き継げるのかという点です。旅館業許可は「施設」ではなく「営業者(その人・その法人)」に与えられるため、営業者が変わると原則として許可も引き継げません。ただし2023年(令和5年)12月の法改正で承継の仕組みが整いました。この記事では、相続・譲渡・法人成りの場合の手続きを行政書士が解説します。
旅館業許可は「営業者」に与えられる
旅館業法の許可は、旅館・ホテル営業や簡易宿所営業を営もうとする営業者(申請した個人または法人)に対して与えられるものです。そのため、営業者が交代すると、建物や設備が同じでも許可は当然には引き継がれません。何もしないまま別の人が営業を続けると、無許可営業になってしまうおそれがあります。
そこで法律には、一定の場合に営業者の地位を引き継げる「承継」の制度が用意されています。パターンは大きく分けて、①相続、②事業譲渡、③法人の合併・分割の3つです。旅館業許可の種類や要件そのものは、簡易宿所の営業許可もあわせてご覧ください。

①相続の場合|死亡後60日以内の承認申請
個人で旅館業を営んでいた方が亡くなり、相続人が営業を続けたいときは、承継の承認を受ける必要があります。ここで最も重要なのが被相続人の死亡後60日以内という期限です。
(相続の承認)第3条の4
営業者が死亡した場合において、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により当該旅館業を承継すべき相続人を選定したときは、その者。以下同じ。)が被相続人の営んでいた旅館業を引き続き営もうとするときは、その相続人は、被相続人の死亡後六十日以内に都道府県知事に申請して、その承認を受けなければならない。
旅館業法 第3条の4第1項(相続の承認)
相続人が複数いる場合は、全員の同意で承継する一人を選定して申請します。なお、申請から承認(または不承認の通知)までの間は、被相続人に対する許可が相続人に対してされたものとみなされるため、その間も営業を止めずに済みます。ただし60日を過ぎると承継できず、あらためて新規許可を取り直すことになりますので、葬儀などで慌ただしい時期ではありますが、早めの着手が肝心です。
②事業譲渡の場合|2023年改正で承認制度が整備
宿泊施設を第三者に売却したり、事業を譲り受けたりする「事業譲渡」については、2023年12月13日施行の改正で新しい承認制度が設けられました。以前は営業者が変われば必ず新規許可の取り直しが必要でしたが、改正により、譲渡人と譲受人が承認を受ければ許可を引き継げるようになったのです。
(譲渡及び譲受けの承認)第3条の2
前条第一項の許可を受けて旅館業を営む者(以下「営業者」という。)が当該旅館業を譲渡する場合において、譲渡人及び譲受人がその譲渡及び譲受けについて都道府県知事の承認を受けたときは、譲受人は、営業者の地位を承継する。
旅館業法 第3条の2第1項(譲渡及び譲受けの承認)
ポイントは、相続と違って「あらかじめ」承認を受ける必要がある点です。承認を受けてから譲渡の効力が生じるよう手続きを進めます。許認可を引き継げるかどうかは業種によって扱いが大きく異なりますので、他業種を含めた全体像は事業譲渡で許認可は引き継げる?もご参照ください。
③法人の合併・分割の場合
営業者である法人が合併・分割をする場合も、あらかじめ都道府県知事の承認を受けることで、存続法人や新設法人、事業を承継した法人が営業者の地位を引き継げます(旅館業法第3条の3)。分割の場合は、分割の登記前までに承認を受ける必要があり、間に合わないと許可が失効しますので注意が必要です。
「個人から法人へ」の法人成りはどう扱う?
個人事業として旅館業を営んでいた方が法人を設立し、その法人で営業を続ける「法人成り」の場合、個人と法人は別人格です。したがって相続や合併には当たりません。従来は法人であらためて新規許可を取り直す必要がありました。
もっとも、2023年改正で事業譲渡の承認制度が整ったことにより、個人事業者から自身が設立した法人への「譲渡」として承認を受け、許可を引き継げる余地が生まれました。ただし、この取扱いや必要書類は都道府県・保健所によって運用が分かれる部分があります。【要確認】法人成りの際に譲渡承認で対応できるか、それとも新規許可が必要かは、営業所を管轄する保健所に事前に確認することを強くおすすめします。
承継手続きの流れ
相続を例に、承継手続きの一般的な流れを示します。
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- ステップ1 保健所への事前相談
- 承継の可否・必要書類・様式を管轄の保健所に確認します。期限が短いため、まずここから動きます。
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- ステップ2 相続人の選定・同意
- 相続人が複数いる場合は、営業を承継する一人を全員の同意で選定します。
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- ステップ3 承認申請書・添付書類の作成
- 戸籍謄本など被相続人と申請人の関係がわかる書類、施設の図面等をそろえます。
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- ステップ4 死亡後60日以内に申請
- 期限内に都道府県知事(保健所)へ承継承認申請を提出します。
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- ステップ5 承認・営業者の地位の承継
- 承認を受けると、正式に営業者の地位を引き継ぎます。
これから新たに宿泊事業を始める方は、民泊(住宅宿泊事業)の始め方もあわせてご確認ください。
費用の目安と注意点
承継の手続きには、承認申請の手数料(自治体により異なります)や、戸籍・登記事項証明書などの取得実費がかかります。法人成りに伴う会社設立をする場合は、別途設立登記の費用が必要です。会社の設立登記は司法書士、税務は税理士の専門分野となりますので、当事務所では各専門家と連携してワンストップでご案内します。
承継のいずれのパターンでも、施設の構造設備・消防・用途地域の要件を満たしていることが前提です。引き継ぐ前に、これらの要件に問題がないかを事前に確認しておくと安心です。当事務所への報酬は事案により異なりますが、正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください。
まとめ|承継には期限がある。早めの相談を
旅館業許可は営業者に与えられるため、営業者が変わるときは承継の手続きが必要です。相続は死亡後60日以内、譲渡・合併分割は事前の承認が必要で、いずれも期限や順序を誤ると許可が失効し営業できなくなります。法人成りは事業譲渡の承認で対応できる余地がありますが自治体で運用差があります。
民泊・旅館業の許可と届出の全体像は、民泊・旅館業許可の総合ガイドでまとめて解説しています。
藤原友行政書士事務所(東京都世田谷区)では、旅館業・民泊の許認可を保健所・消防署・建築指導課への対応を含めてサポートしています。承継のご相談は期限との勝負です。初回無料相談・オンライン対応も可能ですので、お早めにお電話(03-4500-1030)またはお問い合わせフォームからご連絡ください。



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