経営状況分析(Y点)とは?8つの指標と分析機関への申請を解説 2026年度

公共工事の入札に参加するために経営事項審査(経審)を受けようとすると、最初に出てくるのが経営状況分析という耳慣れない手続きです。しかも申請先は、都庁でも整備局でもなく民間の会社。ここで戸惑われる事業者様は少なくありません。

経営状況分析は、経審の評点のうちY点を決める手続きです。そして経審の5つの評点のなかで、Y点だけは行政庁ではなく国土交通大臣の登録を受けた民間機関が審査します。この記事では、Y点が何を見ているのか、どこにどう申請するのか、そして点数を上げるには何を考えればよいのかを整理します。

経営状況分析はなぜ民間機関が行うのか

経審は、建設業法第27条の23第2項により、「経営状況」「経営規模、技術的能力その他の客観的事項」という2つの事項を数値で評価する仕組みとされています。このうち前者の「経営状況」=Y点の分析だけが、別の条文で分析機関に委ねられています。

(経営状況分析)第27条の24

前条第二項第一号に掲げる事項の分析(以下「経営状況分析」という。)については、第二十七条の三十一の規定及び第二十七条の三十二において準用する第二十六条の七の規定により国土交通大臣の登録を受けた者(以下「登録経営状況分析機関」という。)が行うものとする。
建設業法 第27条の24第1項(経営状況分析)

財務諸表の分析という、決まった算式で機械的に処理できる部分を専門機関に委ねることで、審査を早く・全国一律に行える仕組みになっています。したがって経審は「分析機関へのY点の申請」と「行政庁への経営規模等評価の申請」の二本立てで進みます。制度の全体像は経営事項審査(経審)とは?で解説しています。

経審全体のなかでのY点の位置づけ

総合評定値(P点)は、5つの評点を重み付けして合計したものです。

P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W

Y点のウェイトは0.20。完成工事高(X1)と技術力(Z)の0.25に次ぐ大きさで、決して脇役ではありません。国土交通省の資料によると、令和8年7月1日以降の申請に適用される点数は次のとおりです。

審査項目 内容 最高点/最低点 ウェイト 審査する機関
X1 完成工事高(業種別) 2,309/397 0.25 許可行政庁
X2 自己資本額・利払前税引前償却前利益 2,280/454 0.15 許可行政庁
Y 経営状況 1,595/0 0.20 登録経営状況分析機関
Z 技術職員数・元請完成工事高 2,441/456 0.25 許可行政庁
W その他の審査項目(社会性等) 2,073/▲788 0.15 許可行政庁

注目していただきたいのはY点の最低点が0点であることです。他の項目には数百点の下限がありますが、Y点だけは下限がありません。財務内容が悪いと、この0.20のウェイトぶんがまるごと失われることになります。

なお令和8年7月1日施行の改正で、W点の社会保険加入に関する減点項目が削除されるなどの見直しがあり、W点と総合評定値の最低点が変更されました。Y点の点数の幅そのものに変更はありません。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

Y点が見ている8つの指標

Y点は、決算書から計算される8つの指標で決まります。8つは4つの区分に整理されています。

区分 指標 ざっくり言うと
負債抵抗力 純支払利息比率/負債回転期間 借入れの重さに耐えられるか
収益性・効率性 総資本売上総利益率/売上高経常利益率 資産をうまく使って利益を出せているか
財務健全性 自己資本対固定資産比率/自己資本比率 自前の資本で支えられているか
絶対的力量 営業キャッシュフロー/利益剰余金 手元の現金と、積み上げた利益の厚み

この並びを見ると、Y点の設計思想がわかります。売上の大きさではなく、借入れと利益の質を見ているのです。完成工事高はX1で評価されるため、Y点では規模の大小はほとんど関係ありません。

8つの指標から計算した経営状況点数(A)を所定の算式で換算したものが、0点から1,595点までのY点になります。指標ごとに上限・下限が設けられているため、ひとつの数値を極端に良くしても、そこから先は点数が伸びない仕組みです。

どこに申請するのか

申請先は、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関です。国土交通省が公表している一覧(令和7年1月現在)には、次の10機関が掲載されています。

  • 登録番号1 一般財団法人建設業情報管理センター
  • 登録番号2 株式会社マネージメント・データ・リサーチ
  • 登録番号4 ワイズ公共データシステム株式会社
  • 登録番号5 株式会社九州経営情報分析センター
  • 登録番号7 株式会社北海道経営情報センター
  • 登録番号8 株式会社ネットコア
  • 登録番号9 株式会社経営状況分析センター
  • 登録番号10 経営状況分析センター西日本株式会社
  • 登録番号11 株式会社NKB
  • 登録番号22 株式会社建設業経営情報分析センター

ここで大切なのは、どの機関に申請するかは事業者が自由に選べるということ、そしてどの機関に出しても算式は同じなので、Y点の結果は変わらないということです。機関によって違うのは、手数料・処理の早さ・電子申請への対応といったサービス面です。

申請の時期や方法は、建設業法施行規則第19条の2により各分析機関が定めて公示することとされています。手数料や提出方法、電子申請への対応は機関ごとに異なります。分析機関の選定から申請の代行まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。

提出する書類は「直前3年分」

ここが実務上つまずきやすいところです。許可申請では直前1年分の決算書で足りますが、経営状況分析では直前3年分が必要になります。

(経営状況分析申請書の添付書類)第19条の4

法第二十七条の二十四第三項の国土交通省令で定める書類は、次のとおりとする。

(中略)

二 前号の会社以外の法人である場合においては、別記様式第十五号から第十七号の二までによる直前三年の各事業年度の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び注記表
建設業法施行規則 第19条の4第1項第二号(経営状況分析申請書の添付書類)

提出するのは税務署に出した決算書そのものではなく、建設業法の様式に組み替えた財務諸表です。完成工事高・完成工事原価・未成工事支出金といった建設業特有の勘定科目に置き換える作業が必要になります。この組替えの実務は建設業の財務諸表(決算変更届の様式)で詳しく解説しています。

建設業以外の事業も営んでいる場合は、その部門の売上原価報告書も直前3年分添付します。なお、すでに提出済みで内容に変更がないものは、添付を省略できます。

申請から結果通知までの流れ

決算が確定してから経審の結果が出るまで、次の順序で進みます。

  1. ステップ1 決算を確定させ、建設業の財務諸表に組み替える
    税務申告用の決算書を、建設業法の様式に置き換えます。この組替えの精度がY点を左右します。勘定科目の振り分けを誤ると、実態より低い点数が出てしまいます。
  2. ステップ2 決算変更届を提出する
    事業年度終了後4か月以内に、許可行政庁へ決算変更届を出します。これが未提出だと、その先の経審に進めません。詳しくは建設業の決算変更届とはをご覧ください。
  3. ステップ3 登録経営状況分析機関へ申請する
    10機関から1つを選び、経営状況分析申請書(様式第25号の11)に直前3年分の財務諸表を添えて提出します。
  4. ステップ4 経営状況分析結果通知書を受け取る
    分析機関から通知書(様式第25号の13)が届きます。ここにY点が記載されています。
  5. ステップ5 行政庁へ経営規模等評価を申請する
    X・Z・Wの評価を、東京都知事許可なら東京都へ申請します。ステップ4の通知書を添付する必要があるため、順序を飛ばすことはできません。
  6. ステップ6 総合評定値(P点)を請求する
    経営規模等評価の申請とあわせて総合評定値を請求すると、YとX・Z・Wを合算したP点が通知されます。入札参加資格審査ではこのP点が使われます。

スケジュールで注意したいのは、経審の結果には有効期間があることです。

(経営事項審査の受審)第18条の2

法第二十七条の二十三第一項の建設業者は、同項の建設工事について発注者と請負契約を締結する日の一年七月前の日の直後の事業年度終了の日以降に経営事項審査を受けていなければならない。
建設業法施行規則 第18条の2(経営事項審査の受審)

審査基準日(原則として直前の決算日)から1年7か月。この期間が切れると公共工事を直接請け負えなくなります。決算日から4か月ほどで経審申請までたどり着ければ、空白は生じません。時間軸の詳しい考え方は経審の有効期限と決算後スケジュールで解説しています。

Y点を上げるにはどう考えるか

Y点は決算書から機械的に計算されるため、申請の書き方で点数が変わることはありません。上げるとすれば決算そのものを変えるしかなく、それも一朝一夕にはいきません。考え方の軸は3つです。

  • 借入れを減らす、または短期借入を長期に組み替える:負債抵抗力の2指標に効きます。支払利息の圧縮は純支払利息比率に直結します
  • 利益を残して自己資本を厚くする:財務健全性と絶対的力量の4指標に効きます。役員報酬と利益のバランスは、税務とあわせて設計が必要です
  • 不要な資産を持たない:総資本売上総利益率は分母が総資本です。使っていない資産を整理すると指標が改善します

決算が締まってしまった後にできることはほとんどありません。Y点対策は、決算日の数か月前から顧問税理士と方針を共有しておくことが実質的な出発点です。P点全体での対策は経審の点数を上げる方法にまとめています。

【要確認】自己資本額や利益の調整は税務上の取扱いと密接に関わります。具体的な処理の可否や有利不利の判断は税理士の専門分野のため、顧問税理士がいらっしゃらない場合は当事務所が提携税理士と連携してご案内します。まずはご相談ください。当事務所は税務代理を行いません。

よくある失敗

  • 直前1年分の決算書しか用意していなかった:分析機関へは直前3年分が必要です
  • 決算変更届を出さずに分析を申請した:先に決算変更届を出さないと、経審全体が進みません
  • 税務用の決算書をそのまま出した:建設業法の様式への組替えが必要です
  • 分析機関を変えれば点数が上がると思っていた:算式は共通のため結果は同じです
  • 結果通知書が届く前に経営規模等評価を申請しようとした:通知書は添付書類です。順序は飛ばせません
  • 審査基準日を取り違えた:原則は直前の決算日です。申請日ではありません

費用と期間の目安

経営状況分析の手数料は、各分析機関が定めて公示しています。直前3年分を提出する通常の申請で1万円台からが一般的ですが、機関や申請方法(電子か紙か)による幅は、選んだ機関の公示で定められています。これとは別に、行政庁へ支払う経営規模等評価の申請手数料(審査対象の業種数に応じて加算される仕組み)が必要です。

期間は、分析機関に申請してから結果通知書が届くまでおおむね1週間前後、その後の経営規模等評価の審査を含めると、決算確定から経審の結果が出るまで2〜3か月をみておくと計画が立てやすくなります。

当事務所にご依頼いただく場合の報酬の目安は、決算変更届と経営状況分析、経営規模等評価をまとめてお引き受けする形で15万円台からです(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。財務諸表の組替えからスケジュール管理まで一括して対応します。

まとめ

経営状況分析(Y点)で押さえるべき点は3つです。

  • Y点だけは民間の登録経営状況分析機関が審査する。機関は10あり、どこを選んでも点数は同じ
  • 提出するのは建設業の様式に組み替えた直前3年分の財務諸表。決算変更届が先
  • Y点は借入れと利益の質を見ている。売上の大きさではなく、財務体質が問われる

そしてY点は、決算が締まった後では動かせません。公共工事を継続的に受注していく計画があるなら、決算対策の段階から経審を意識しておくことが、結果的にいちばん点数を伸ばす近道になります。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。

行政書士 藤原友事務所(東京都世田谷区大原)では、決算変更届から経営状況分析、経営事項審査、入札参加資格申請まで一貫してお手伝いしています。初回のご相談は無料で、お電話(03-4500-1030)のほか、オンラインでのご相談にも対応しています。公共工事へこれから参入される事業者様も、お気軽にご相談ください。

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