民泊の180日の数え方|正午起算・4月1日区切りと実績報告のミスを解説 2026年版

住宅宿泊事業(民泊)を始めると、必ず気になるのが年間180日という上限です。ところがこの180日、「泊まった日を素直に数えればよい」というものではありません。数え方のルールは省令で決まっており、1日の区切りは深夜0時ではなく正午です

この数え方を誤ったまま運営し、2か月ごとの実績報告で数字が合わなくなる、あるいは知らないうちに180日を超えてしまう、というご相談は少なくありません。この記事では、180日の正しい数え方を条文で確認したうえで、連泊や複数室の扱い、報告の実務、超えてしまった場合の対応までを整理します。

180日という上限はどこから来ているのか

そもそも180日は、住宅宿泊事業の定義そのものに組み込まれています。

(定義)第2条

(中略)

3 この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。
住宅宿泊事業法 第2条第3項(住宅宿泊事業の定義)

ここが重要なところです。180日は「守るべき制限」であると同時に、住宅宿泊事業であるための条件です。つまり180日を超えた時点で、その営業は住宅宿泊事業ではなくなり、旅館業法上の無許可営業と評価されるおそれがあります。単なる「ノルマ超過」ではないという理解が出発点です。

そして条文が「国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数」と書いているとおり、数え方そのものが省令で決められています

数え方の核心 正午から翌日の正午までが1日

算定方法を定めているのが、住宅宿泊事業法施行規則の第3条です。

(人を宿泊させる日数の算定)第3条

法第二条第三項の国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数は、毎年四月一日正午から翌年四月一日正午までの期間において人を宿泊させた日数とする。この場合において、正午から翌日の正午までの期間を一日とする。
住宅宿泊事業法施行規則 第3条(人を宿泊させる日数の算定)

この短い条文に、実務で必要なことがすべて入っています。押さえるべきは2点です。

  • 1年間の区切りは4月1日の正午から翌年4月1日の正午まで。暦年(1月〜12月)でも、届出をした日から1年でもありません
  • 1日の区切りは正午から翌日の正午まで。午前0時ではありません

正午が基準になっているのは、宿泊施設のチェックアウトがおおむね午前中に設定されているためです。チェックイン日の正午からチェックアウト日の正午までが1つの区切りと考えると、実際の運用に近い数え方になります。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

具体的にどう数えるのか

ケース別に確認します。

ケース 日数 考え方
4月10日15時チェックイン→4月11日10時チェックアウト 1日 4月10日正午からの1区間に収まる
4月10日15時チェックイン→4月13日10時チェックアウト(3泊) 3日 10日・11日・12日の各正午起点の3区間
同じ日に3部屋を別のグループへ提供 1日 届出住宅ごとに数えるため、部屋数・組数は影響しない
同じ日に1部屋へ4人が宿泊 1日 宿泊人数は日数に影響しない
3月31日15時チェックイン→4月2日10時チェックアウト(2泊) 前年度1日+新年度1日 3月31日正午起点の区間は前年度、4月1日正午起点の区間は新年度に振り分ける

ここで最も誤解が多いのが「複数の部屋を貸しても1日は1日」という点です。1棟に4部屋あり、それぞれ別のグループに1年間貸したとしても、上限は延べ720日ではなく180日です。日数は届出住宅の単位で数えるため、部屋数を増やしても営業できる日数は増えません。収益を伸ばしたい場合は、日数ではなく1日あたりの単価と稼働率で考えることになります。

年度をまたぐ予約も注意が必要です。3月末に長期滞在の予約が入ると、4月1日正午を境に前年度分と新年度分に分かれます。前年度の残日数がわずかな時期に長期予約を受けると、思わぬ超過につながります。

条例による上乗せがある地域は180日より短い

ここまでは法律・省令の話ですが、実際に営業できる日数はさらに短くなることがあります。都道府県や区市町村の条例で、区域や期間を限って住宅宿泊事業を制限できると法律が認めているためです。

東京23区では多くの区が上乗せ条例を設けています。世田谷区の場合、住居専用地域では月曜日の正午から金曜日の正午までの営業が制限され、実質的に営業できるのは週末が中心となります。年間の実質日数はおおむね100日前後まで下がります。条例の制限も正午を境にしている点が、省令の数え方と一致していることに注目してください。

お住まいの区の具体的な制限は、東京23区の民泊 上乗せ条例まとめ世田谷区の民泊ルールで解説しています。「180日使えるつもりで収支計画を立てたら、条例で半分近くまで削られた」というのは、開業前のご相談で最も多いつまずきです。

2か月ごとの実績報告でつまずかないために

住宅宿泊事業者には、宿泊日数などを定期的に報告する義務があります。

(住宅宿泊事業者の報告)第12条

(中略)

2 住宅宿泊事業者は、毎年二月、四月、六月、八月、十月及び十二月の十五日までに、それぞれの月の前二月における前項各号に掲げる事項を都道府県知事に報告しなければならない。
住宅宿泊事業法施行規則 第12条第2項(定期報告の時期)

報告する内容は、①届出住宅に人を宿泊させた日数、②宿泊者数、③延べ宿泊者数、④国籍別の宿泊者数の内訳の4つです。報告の時期と対象期間は次のとおりです。

報告期限 対象期間
2月15日まで 12月・1月
4月15日まで 2月・3月
6月15日まで 4月・5月
8月15日まで 6月・7月
10月15日まで 8月・9月
12月15日まで 10月・11月

報告でよくある間違いが、「宿泊日数」と「延べ宿泊者数」の混同です。1日に4人が泊まれば、宿泊日数は1日、延べ宿泊者数は4人です。ここを取り違えると、報告上の日数が実際の数倍にふくらみ、行政から照会を受けることになります。

もうひとつが、報告の区切り(暦月)と日数算定の区切り(4月1日正午起算の年度)がずれていることです。報告は暦の月ごとですが、180日のカウントは年度単位です。報告の数字をそのまま足しても、年度の残日数は出ません。日々の管理台帳では、年度の通算日数を別に持っておく必要があります。

日数管理の実務手順

超過を防ぐ管理は、次の流れで組み立てます。

  1. ステップ1 年度の上限日数を確定する
    法律上の180日から、条例による制限を差し引いた実質の営業可能日数を最初に計算します。世田谷区の住居専用地域なら、週末中心でおおむね100日前後が目安です。
  2. ステップ2 正午起算で日数を記録する台帳をつくる
    予約管理システムの「泊数」をそのまま使わず、正午から翌日正午までを1日とする自前の一覧を持ちます。宿泊者名簿と同じファイルで管理すると転記ミスが減ります。
  3. ステップ3 年度の通算日数を毎月締める
    月末に「今年度の累計日数」と「残日数」を確定します。残日数が30日を切ったら、長期予約の受付を止めるなど、あらかじめルールを決めておきます。
  4. ステップ4 2か月ごとに実績報告を提出する
    2月・4月・6月・8月・10月・12月の各15日までに、前2か月分を報告します。宿泊日数・宿泊者数・延べ宿泊者数・国籍別内訳の4項目を、台帳から転記します。
  5. ステップ5 4月1日正午でリセットする
    年度が替わったら累計をゼロに戻します。3月末から4月頭にまたがる予約は、正午を境に前年度分と新年度分へ振り分けてから集計します。

180日を超えてしまったらどうなるか

超過が判明した場合、まず行政から事実確認の照会や指導があり、改善が見られなければ業務改善命令、さらに業務停止命令や事業廃止命令へと進みます。命令に違反した場合には罰則も定められています。

より重いのは、冒頭で触れた旅館業法との関係です。180日を超えた営業は住宅宿泊事業の定義から外れるため、旅館業の許可を受けずに宿泊営業をしたという評価につながりえます。旅館業法違反の無許可営業には、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が定められています。

「180日では収支が合わない」という場合の正攻法は、日数制限のない類型へ切り替えることです。

  • 簡易宿所の営業許可を取る:日数制限がなく通年営業できます。ただし構造設備基準・消防設備・用途地域の制約があります。簡易宿所の営業許可とは?で解説しています
  • 特区民泊(国家戦略特区)を利用する:認定を受ければ日数制限なく営業できます。区域が限られ、最低宿泊日数の要件があります。特区民泊とは?をご覧ください

どちらが向くかは、物件の用途地域・構造・規模と、想定する客層によって変わります。物件を取得する前に、どの類型で運営するかを決めておくことが、遠回りのようで最短の進め方です

よくある失敗

  • 暦年(1月〜12月)でカウントしていた:年度は4月1日正午起算です。12月末でリセットしていると、年明けに一気に超過します
  • 部屋数を掛け算していた:4部屋あっても上限は180日のままです
  • 延べ宿泊者数を宿泊日数として報告した:報告書の数字が実態と大きくずれ、照会の対象になります
  • 条例の制限を計算に入れていなかった:東京23区の多くは180日より短くなります
  • 報告を忘れた:報告義務違反は罰則の対象です。カレンダーに6回の期限を先に入れておいてください
  • 年度末の長期予約でオーバーした:3月末は残日数が少ない時期です。予約サイトの受付上限を早めに絞ります

費用と期間の目安

日数の管理そのものに費用はかかりませんが、届出や類型の切り替えには実費が必要です。住宅宿泊事業の届出自体に手数料はかからないのが一般的で、消防法令適合通知書の取得や図面作成などの実費が中心になります。簡易宿所へ切り替える場合は、旅館業許可の申請手数料が2万2,000円前後(自治体により異なります)に加え、用途変更や消防設備の工事費が別途発生します。

期間の目安は、住宅宿泊事業の届出が書類の準備を含めて1〜2か月、簡易宿所の許可は消防・建築の調整を含めて3〜6か月程度をみておくと安心です。

当事務所にご依頼いただく場合の報酬の目安は、住宅宿泊事業の届出代行が10万円台から、簡易宿所の営業許可申請が20万円台からです(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。日数管理の台帳のひな型づくりや、実績報告の進め方のご相談にも対応しています。

まとめ

民泊の180日は、次の3点を押さえれば管理できます。

  • 1日は正午から翌日の正午まで。年度は4月1日正午から翌年4月1日正午まで
  • 日数は届出住宅ごと。部屋数・宿泊人数を掛け算しない
  • 条例の上乗せで実質日数はさらに短くなる。東京23区では100日前後になる地域もある

そして、2か月ごとの実績報告は暦月区切り、180日のカウントは年度区切りという2つの時間軸を分けて管理することが、超過と報告ミスを同時に防ぐいちばんの近道です。

民泊・旅館業の許可と届出の全体像は、民泊・旅館業許可の総合ガイドでまとめて解説しています。

行政書士 藤原友事務所(東京都世田谷区大原)では、民泊の届出から旅館業許可への切り替え、運営体制の設計まで一貫してお手伝いしています。保健所・消防署・建築指導課との事前相談にも同行いたします。初回のご相談は無料で、お電話(03-4500-1030)のほか、オンラインでのご相談にも対応しています。物件の購入前・契約前の段階からご相談ください。

出典