役員の任期と重任登記とは?取締役10年の数え方と過料を解説 2026年版

「うちは家族経営で役員も変わっていないから、登記は設立のとき以来していない」。会社設立から数年たったお客様から、よくうかがう言葉です。しかし、役員が変わっていなくても登記が必要になるのが、任期という制度のやっかいなところです。

取締役や監査役には任期があります。任期が満了すると、同じ人が続ける場合でもいったん退任し、あらためて選任し直す扱いになります。これを重任(じゅうにん)といい、重任したことを登記しなければなりません。この登記を忘れたまま何年も過ぎている会社は、実際とても多いのです。

取締役・監査役の任期は何年か

まず出発点となる条文を確認します。

(取締役の任期)第332条

取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。

2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

会社法 第332条第1項・第2項(取締役の任期と非公開会社の伸長)

監査役については、会社法第336条第1項が「選任後四年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と定め、同条第2項で公開会社でない株式会社は定款により10年まで伸長できるとしています。整理すると次のとおりです。

役職・法人の種類原則の任期伸長・短縮
取締役(株式会社)選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで非公開会社は定款で10年まで伸長可/定款・株主総会決議で短縮可
監査役(株式会社)選任後4年以内(同上)非公開会社は定款で10年まで伸長可/短縮は不可
理事(一般社団法人)選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで定款・社員総会決議で短縮可(伸長はできない)
監事(一般社団法人)選任後4年以内(同上)定款で2年まで短縮可(伸長はできない)

ここで見落とされがちなのが、一般社団法人・一般財団法人には10年への伸長という制度がないという点です。株式会社の感覚で「10年に延ばしておけば安心」と考えていると、理事は2年ごと、監事は4年ごとに必ず改選と登記が発生します。法人の種類ごとの違いは一般社団法人の設立方法|費用・必要書類・期間と非営利型のポイントを解説でも整理しています。

任期の数え方|「2年ちょうど」ではない

条文は「選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」という言い回しです。日付で2年ぴったりではありません。決算期と定時株主総会を基準に数えるのがポイントです。

3月決算の会社で、2026年6月の定時株主総会において取締役を選任した場合を考えます。選任後2年以内に終了する事業年度は、2027年3月期と2028年3月期です。そのうち最終のものは2028年3月期ですから、任期は2028年6月の定時株主総会の終結の時までに満了します。つまり実際には約2年間です。

任期を10年としている会社なら、同じ考え方で2036年3月期に関する定時株主総会、すなわち2036年6月の総会終結時までとなります。就任日から10年後の応当日ではありませんので、カレンダーに「就任から10年」と書き込むだけでは足りません。決算期と総会の時期をセットで管理してください。会社の決算期そのものの決め方は会社の決算期(事業年度)の決め方|3月決算が正解とは限らない4つの基準をご覧ください。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

任期が満了したら「重任」の登記が必要

任期満了によって取締役はいったん退任します。同じ人を選び直せば、退任と就任が同じ日に生じるため、登記上は重任と記録されます。人が入れ替わっていなくても、これは登記事項の変更にあたります。

(変更の登記)第915条

会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。

会社法 第915条第1項(変更の登記の期限)

期限は登記すべき事由が生じた時から2週間以内です。定時株主総会で選任し直したその日から数えます。「決算の申告が終わってから」「時間ができたら」では間に合いません。

期限を過ぎたらどうなるか。会社法第976条は、同条各号に該当する場合には100万円以下の過料に処すると定め、その第一号に「この法律の規定による登記をすることを怠つたとき。」を掲げています。過料は会社ではなく代表取締役個人に科されるのが通例で、裁判所から本人あてに通知が届きます。金額は遅れた期間や事情に応じて裁判所が決めます。実際に科される金額の水準は公表された基準がないため、記事では具体的な相場を示していません。

登記を放置すると「みなし解散」になる

過料より重い結末が用意されています。

(休眠会社のみなし解散)第472条

休眠会社(株式会社であって、当該株式会社に関する登記が最後にあった日から十二年を経過したものをいう。以下この条において同じ。)は、法務大臣が休眠会社に対し二箇月以内に法務省令で定めるところによりその本店の所在地を管轄する登記所に事業を廃止していない旨の届出をすべき旨を官報に公告した場合において、その届出をしないときは、その二箇月の期間の満了の時に、解散したものとみなす。ただし、当該期間内に当該休眠会社に関する登記がされたときは、この限りでない。

会社法 第472条第1項(休眠会社のみなし解散)

最後の登記から12年が経過した株式会社は、法務大臣の官報公告と届出の機会を経て、解散したものとみなされます。取締役の任期を最長の10年にしていても、10年で必ず重任登記が発生しますから、12年放置というのは「任期が切れていることに誰も気づいていない状態」を意味します。

一般社団法人は、この期間が5年です(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条第1項)。理事の任期が2年である以上、5年何もしていなければ登記漏れが確実にある、という設計になっています。

みなし解散されても、解散とみなされた後3年以内であれば、株主総会の決議によって会社を継続することができます(会社法第473条)。ただし継続の登記と、たまっていた役員変更の登記をまとめて行うことになり、費用も手間も通常より大きくなります。

重任登記までの流れ

  1. ステップ1 定款で任期の定めを確認する
    まず自社の定款を開き、取締役・監査役の任期が何年と書かれているかを確認します。会社ごとに2年のまま、10年に伸長済み、といった違いがあります。定款が見当たらない場合の考え方は定款の記事で解説しています。
  2. ステップ2 登記事項証明書で前回の登記日を確認する
    法務局で登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取得し、役員がいつ就任・重任したかを確認します。ここで「前回の重任から何年たっているか」がはっきりします。
  3. ステップ3 満了する事業年度と総会の時期を割り出す
    選任日と決算期から、任期が満了する定時株主総会がいつになるかを計算します。過去に満了していた場合は、満了していた時点にさかのぼって選任の手続きを整理します。
  4. ステップ4 定時株主総会で選任し、議事録を作成する
    総会で役員を選任し、議事録を作成します。取締役会設置会社では、代表取締役の選定について取締役会議事録も必要です。就任承諾書や株主リストもあわせて用意します。
  5. ステップ5 2週間以内に変更登記を申請する
    本店の所在地を管轄する法務局へ役員変更の登記を申請します。登録免許税は資本金1億円超で3万円、1億円以下で1万円です。一般社団法人・一般財団法人の役員変更は1万円です。
  6. ステップ6 許認可の変更届を忘れずに出す
    許認可を受けている会社は、役員が変わると監督官庁への届出が別途必要です。建設業許可では原則として2週間以内など、登記と別の期限が定められています。登記だけで終わらせないことが大切です。

ステップ6は特に見落としが多い部分です。建設業許可では、役員の変更や経営業務の管理責任者の交代が届出事項になっています。詳しくは建設業許可の変更届とは?役員・商号・資本金の期限(2週間・30日)を解説をご覧ください。

任期を10年にすべきか|利点と落とし穴

非公開会社の多くは、設立時に任期を10年としています。改選と登記の回数が減り、そのつどの登録免許税も抑えられるためです。少人数で株主と役員が一致している会社では、合理的な選択といえます。

一方で、任期を長くするということは、途中で辞めてもらいにくくなるということでもあります。任期途中の取締役を株主総会の決議で解任すること自体はできますが、正当な理由なく解任された取締役は、会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求できます(会社法第339条第2項)。残任期間が長いほど、この賠償の対象になり得る範囲も広がります。

判断の目安は次のとおりです。

  • 10年が向いているケース…株主も役員も本人と家族だけ、外部から役員を迎える予定がない、という会社。
  • 2〜4年程度にしておきたいケース…共同出資で始めた会社、外部の専門家や取引先から役員を迎えている会社、将来の資金調達や事業承継を見込んでいる会社。
  • そもそも管理体制で決める…10年にするなら、任期満了年を定款・登記事項証明書とあわせて社内で管理する仕組みが要ります。管理できないなら短いほうが安全です。

よくある失敗

  • 役員が変わっていないから登記も不要だと思っていた…最も多い誤解です。同じ人が続けても重任の登記が必要です。
  • 定款を確認せずに「たぶん10年」と思い込んでいた…定款に伸長の定めがなければ任期は2年のままです。設立時の定款を確認しましょう。
  • 選任の手続きをしないまま登記だけ後から出そうとした…登記には株主総会議事録などの添付書面が必要です。総会を開いた記録がなければ、そこから整えることになります。
  • 登記は済ませたが許認可の届出を出していない…建設業をはじめ、多くの許認可で役員は届出事項です。監督官庁からの指摘で発覚することがあります。
  • 一般社団法人で「株式会社と同じ10年」と思っていた…理事は2年です。5年でみなし解散の対象になる点にも注意が必要です。

当事務所にご相談いただく場合

当事務所では、定款と登記事項証明書の突合による任期の棚卸し、定時株主総会・取締役会の議事録その他の書面の作成、許認可を受けている場合の監督官庁への変更届出までをお手伝いしています。会社設立から数年たって「そういえば何もしていない」という状態でも、順序立てて整理できます。

なお、登記申請の代理は司法書士の業務ですので、登記そのものは提携する司法書士へおつなぎするか、ご自身で申請いただく形になります。当事務所は書面の作成と全体の段取りを担当し、窓口が分かれて手間が増えないように調整します。

初回のご相談は無料です。お電話(03-4500-1030)またはオンラインでご相談いただけます。費用はご依頼の範囲によって変わりますので、正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示します(ご安心ください)。

まとめ

役員の任期は、人が変わったかどうかではなく、期間の満了で自動的にやってくるものです。原則は取締役2年・監査役4年、非公開会社なら定款で10年まで伸ばせます。満了後は同じ人でも重任の登記が必要で、期限は2週間、怠れば100万円以下の過料の対象となり、12年放置ではみなし解散に至ります。まずは定款と登記事項証明書を並べて、次の満了年がいつかを確かめるところから始めてください。設立後に必要な手続き全般は会社設立後にやること一覧|法人設立届・青色申告・社会保険・法人口座の期限、総会や取締役会の記録の残し方は株主総会議事録の書き方|記載事項・押印・保存期間10年を解説で解説しています。

会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。

出典