旅館業許可と民泊届出の違いとは?費用・営業日数・条例の差を解説 2026年版

「空いている家や部屋を宿泊事業に使いたい。でも、旅館業の『許可』を取るのか、民泊の『届出』で済ませるのか、何が違うのか分からない」——民泊・旅館業のご相談で、最初につまずくのがこの違いです。 旅館業許可と民泊(住宅宿泊事業)の届出は、名前が似ていても制度の骨格がまったく異なります。営業できる日数も、費用も、手続きの重さも違い、さらに自治体ごとの条例によって、同じ物件でも結論が変わることがあります。 この記事では、旅館業許可と民泊届出の違いを、現行法(旅館業法・住宅宿泊事業法)に沿って、旅館業・民泊に注力する世田谷区大原の行政書士・藤原友事務所が分かりやすく解説します。

まず全体像——宿泊ビジネスには3つの制度がある

宿泊料を受けて人を泊める事業には、大きく分けて次の3つの制度があります。どれを選ぶかで手続きも制約も変わります。
  • 旅館業許可(旅館業法)…「許可」制。旅館・ホテル営業/簡易宿所営業/下宿営業の3種があり、営業日数の制限はなく通年営業できる。
  • 住宅宿泊事業(民泊)(住宅宿泊事業法)…「届出」制。年間180日以内という営業日数の上限がある。
  • 特区民泊(国家戦略特別区域法)…「認定」制。国家戦略特別区域内で、原則2泊3日以上の滞在が条件。営業日数の制限はない。
このうち、多くの方が迷うのが旅館業許可(とくに簡易宿所)と民泊届出のどちらにするかです。以下、この2つを軸に違いを見ていきます。
旅館

旅館のイメージ画像

「許可」と「届出」は法的な性質が違う

一番の根っこにあるのが、「許可」と「届出」という手続きの性質の違いです。 旅館業は「許可」制です。法律で原則禁止されている宿泊営業を、行政庁(都道府県知事・保健所設置市長・特別区長)が審査したうえで、個別に解除してもらう仕組みです。
旅館業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市長又は区長。第四項を除き、以下同じ。)の許可を受けなければならない。 旅館業法 第3条第1項
一方、民泊(住宅宿泊事業)は「届出」制です。一定の事項を行政庁に届け出れば事業を始められます。
都道府県知事(中略)に住宅宿泊事業を営む旨の届出をした者は、旅館業法第三条第一項の規定にかかわらず、住宅宿泊事業を営むことができる。 住宅宿泊事業法 第3条第1項
つまり、旅館業許可は「審査をパスして解除してもらう」手続き、民泊届出は「必要事項を届け出て始める」手続きです。この許可・届出そのものの一般的な違いは、許可・認可・登録・届出の違いとは?行政書士がわかりやすく解説であらためて整理しています。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

営業日数の制限——ここが決定的に違う

実務で最も効いてくる違いが、営業できる日数です。 民泊(住宅宿泊事業)には、年間180日以内という営業日数の上限があります(人を宿泊させた日数で数えます)。これを超えて泊めることはできません。 これに対し、旅館業許可(簡易宿所など)には営業日数の制限がなく、通年で営業できます自宅の一部を活かして副業的に年180日以内で運営するなら民泊の届出、通年で本格的に宿泊業を営むなら旅館業許可、というのが基本の分かれ道です。 なお、180日以内であっても、後述の条例でさらに営業できる期間が短く制限されている地域があります。

費用の目安(手数料の違い)

手続きにかかる行政への手数料も異なります。
  • 民泊(住宅宿泊事業)の届出…届出そのものに手数料はかかりません。
  • 旅館業許可の申請…自治体ごとに手数料が定められています。東京都内の例では、簡易宿所営業でおおむね1万1,000円〜1万6,500円、旅館・ホテル営業で2万2,000円〜3万600円程度です【要確認:手数料額は自治体により異なります】。
ただし、実際には民泊でも消防設備・住宅宿泊管理業者への委託・近隣対応などの費用が、旅館業でも構造設備の工事費などがかかります。行政書士に手続きを依頼する場合の報酬とあわせ、(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。

【重要】自治体の条例による「上乗せ規制」が大きい

見落とされがちですが、民泊は自治体の条例による上乗せ規制の影響が非常に大きい分野です。 住宅宿泊事業法は、生活環境の悪化を防ぐため、都道府県等が条例で「民泊を実施できない区域・期間」を定めることを認めています。
都道府県は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、(中略)条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を行う期間を制限することができる。 住宅宿泊事業法 第18条
このため、同じような物件でも、自治体の上乗せ条例によって「民泊ができるか・何日できるか」が変わります。 例えば、世田谷区をはじめ多くの区が住居専用地域での平日営業を制限しており、豊島区では条例改正で規制が大幅に強化され、2025年12月15日からは既存の施設も含めて年間の営業日数が120日に制限され(営業できる期間も特定の時期に限定)、さらに2026年12月16日からは住居専用地域などで民泊を新規に開業できない区域が設けられます。 こうした自治体ごとの差と現場の実務感については、次回、東京23区の上乗せ条例を取り上げる予定です。

無許可営業の罰則にも注意

届出や許可をせずに宿泊業を営むと、法律違反になります。旅館業法では、無許可で営業した場合、6か月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となり得ます(旅館業法10条)。「知らなかった」では済まないため、始める前に制度を正しく選ぶことが大切です。

結局どちらを選ぶ?判断の目安

  • 年180日以内・自宅や住宅を活かして始めたい … 民泊(住宅宿泊事業)の届出
  • 通年でしっかり営業したい・宿泊をメインの事業にしたい … 旅館業許可(簡易宿所など)
  • 国家戦略特別区域内で、2泊3日以上の滞在を通年で受けたい … 特区民泊の認定
どれが最適かは、物件の場所・用途地域・建物の構造・自治体の条例によって変わります。迷ったら、物件の住所が分かる段階で専門家に相談すると、無駄な工事や手戻りを防げます。なお、許可制の代表例である建設業許可の考え方は、建設業許可の要件|新規取得に必要な5つの条件を解説 2026年度も参考になります。

旅館業・民泊の無料相談を受け付けています

行政書士・藤原友事務所(世田谷区大原)では、旅館業許可・住宅宿泊事業(民泊)届出の両方について、保健所・消防署・建築指導課への対応から運営の設計まで一貫してサポートしています。「うちの物件はどちらが向いているか」という段階からのご相談も歓迎です。無料相談はお電話(03-4500-1030)またはお問い合わせフォームから。オンライン相談にも対応しております。

出典

民泊・旅館業の許可と届出の全体像は、民泊・旅館業許可の総合ガイドでまとめて解説しています。