株式・投資信託の相続手続き|証券口座の名義変更と換金の流れ 2026年版

親が亡くなったあと、郵便物の中から証券会社の取引報告書が出てきた。「株を持っていたなんて知らなかった」「売ってお金に換えたいが、どうすればいいのか」。預貯金の手続きに比べて、株式・投資信託の相続は、相続人の側にも証券口座が必要になるなど、独特の流れがあります。この記事では、口座の探し方から、証券会社での名義変更、換金、税金の注意点までを順番に整理します。

結論|「相続人の口座へ移す → 必要なら売る」が基本の流れです

  • 口座を特定する:取引報告書や郵便物で見つからなければ、証券保管振替機構への開示請求で口座のある証券会社がわかります。
  • 証券会社に連絡する:口座は取引が止まり、相続手続きの書類が案内されます。相続税の申告に備えて残高証明書も取ります。
  • 誰が引き継ぐか決める:遺言がなければ、遺産分割協議で決めます。
  • 相続人の口座へ移管する:多くの証券会社では、相続人が同じ証券会社の口座を持ち、そこへ移してから売却します。

株式・投資信託も相続財産になる|預金との違い

亡くなった人が持っていた株式や投資信託は、預貯金や不動産と同じく相続の対象です。

(相続の一般的効力)第896条

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

民法 第896条(相続の一般的効力)

預貯金との大きな違いは、次の2点です。

  • 値動きがある:上場株式や投資信託は、亡くなった日以降も価格が動きます。手続きが長引くほど、相続税の評価額と実際に売れる金額がずれることがあります。
  • 「移す」手続きが必要:預金は払戻しで現金を受け取れますが、株式は証券口座から証券口座へ移すのが原則です。

また、株式や投資信託は、相続人が複数いると、相続分に応じて自動的に分かれるのではなく、遺産分割協議で誰が引き継ぐかを決める財産として扱われています(最高裁判所平成26年2月25日判決)。預貯金の手続きは預貯金の相続手続きとは?で解説しています。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

口座の探し方|証券保管振替機構への開示請求

上場株式は、平成21年の株券電子化により、紙の株券ではなく証券会社などの口座で管理されています。どこに口座があるかわからないときは、証券保管振替機構(ほふり)に「登録済加入者情報の開示請求」をすると、口座のある証券会社・信託銀行がわかります。

  • 請求できる人:相続人、相続人の代理人、遺言執行者などです。
  • わかること:口座のある証券会社などの名前です。残高まではわからないため、判明した証券会社に残高を照会します。
  • かかる期間:同機構は、混雑のため結果の発送まで約2か月かかると案内しています。相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月)を考えると、早めに請求しておきましょう。

財産の調べ方全般は相続財産の調査方法で解説しています。

証券会社での相続手続きの流れ

証券会社ごとに書式は違いますが、おおむね次の流れで進みます。

  1. ステップ1 証券会社への連絡
    口座のある証券会社のコールセンターなどに、口座の名義人が亡くなったことを伝えます。口座は取引が止まり、相続手続きの書類一式が送られてきます。
  2. ステップ2 残高証明書の請求
    亡くなった日時点の残高証明書を請求します。株式の評価額が記載されるものは、相続税の申告や遺産分割の話し合いに使えます。
  3. ステップ3 遺産分割協議
    遺言がなければ、相続人全員で誰がどの銘柄を引き継ぐかを決め、遺産分割協議書を作ります。銘柄と数量を正確に書くことが大切です。
  4. ステップ4 相続人の口座の開設
    引き継ぐ相続人が、同じ証券会社に口座を持っていなければ開設します。
  5. ステップ5 必要書類の提出と移管
    相続手続依頼書と戸籍謄本などを提出すると、株式・投資信託が相続人の口座へ移されます。
  6. ステップ6 必要に応じて売却・解約
    移管後は相続人の財産として、保有を続けることも、売却・解約して換金することもできます。

「売ってから分ける」場合も、いったん代表の相続人の口座へ移してから売るのが一般的です。この場合は、遺産分割協議書に「売却代金を各相続人に分ける」旨を書いておくと、あとの分配がスムーズです。

主な必要書類

書類内容・注意点
相続手続依頼書証券会社の所定の書式。引き継ぐ相続人が記入します
戸籍謄本一式亡くなった人の出生から死亡までと、相続人全員のもの。法定相続情報一覧図の写しで代えられることが多いです
遺産分割協議書または遺言書協議書には相続人全員の実印を押します
印鑑登録証明書相続人全員分。発行から6か月以内などの期限を設ける会社が多いです
相続人の口座の情報移管先の口座番号など

戸籍の束を何度も出し直す手間は、法定相続情報一覧図で減らせます。取得方法は法定相続情報一覧図とは?で解説しています。

単元未満株・非上場株式・投資信託の扱い

  • 単元未満株・特別口座の株式:株券電子化の前から持っていた株式などは、証券会社ではなく、会社の株主名簿管理人(信託銀行など)の特別口座に記録されていることがあります。この場合は信託銀行などで手続きをし、相続人の証券口座へ移すか、単元未満株であれば会社に買い取ってもらう方法があります。
  • 投資信託:株式と同じく相続人の口座へ移すのが基本です。移さずに解約して代金を受け取れるかどうかは、販売した会社によって扱いが違います。
  • 非上場株式(家業の会社の株など):証券口座はなく、会社の株主名簿の書換えで手続きします。相続人が複数いて分割が終わっていない間は、株式は相続人の共有となり、次のルールがかかります。

(共有者による権利の行使)第106条

株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

会社法 第106条(共有者による権利の行使)

家業の会社の株式は、権利を行使する人を決めて会社に通知するまで、株主総会の議決権を使えないのが原則です。事業承継にも関わるため、早めに誰が引き継ぐかを話し合いましょう。

税金の注意点|評価額と売却時の取得費

  • 相続税の評価:上場株式は、亡くなった日の終値と、その月・前月・前々月の終値の月平均額のうち、最も低い価額で評価するのが原則です(国税庁タックスアンサー「上場株式の評価」)。
  • 売却時の取得費:相続した株式を売るときは、亡くなった人が買ったときの価額を引き継ぎます(所得税法第60条第1項第一号)。移管先が特定口座かどうかで、申告の手間が変わります。
  • 取得費加算の特例:相続税を納めた人が、相続開始の翌日から3年10か月以内に売ると、納めた相続税の一部を取得費に加えられる特例があります(国税庁タックスアンサー「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)。

具体的な税額の計算や申告は税理士の業務です。売るタイミングは税金にも関わるため、税理士と相談しながら決めることをおすすめします。

費用と期間の目安

  • 証券会社の手続き:移管の手数料はかからない会社が多いですが、残高証明書の発行は有料のことがあります。
  • 期間:口座がわかっていて遺産分割がまとまっていれば、書類の提出から移管まで2週間〜1か月程度が目安です。口座探しから始める場合は、開示請求の期間も見込みましょう。
  • 行政書士報酬:証券会社の数と相続人の数によって変わります(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。

当事務所では、戸籍の収集と相続人の確定、証券保管振替機構への開示請求、遺産分割協議書の作成、証券会社での移管の手続きまで、一括してご依頼いただけます。

※相続税の申告は税理士、不動産の登記は司法書士、相続人の間で争いがある場合の交渉は弁護士の業務です。必要に応じて連携してご案内しています。

よくある失敗3つ

①郵便物がないので「株はない」と思い込む。ネット証券や特別口座では郵便物がほとんど届かないことがあります。心当たりがあれば開示請求で確かめましょう。

②遺産分割協議書に銘柄と数量を書いていない。「株式はすべて長男」と書いた場合でも、証券会社によっては銘柄の特定を求められます。残高証明書を見ながら書きましょう。

③売りたいのに、相続人の口座がなく手続きが止まる。口座の開設には本人確認などで時間がかかります。遺産分割の話し合いと並行して準備しておきましょう。

まとめ

株式・投資信託の相続は、口座を探す → 証券会社に連絡して残高を確認する → 遺産分割で引き継ぐ人を決める → 相続人の口座へ移す → 必要なら売るという流れで進みます。値動きのある財産なので、手続きが長引くほど評価額と実際の金額がずれやすくなります。相続税の申告期限も見据えて、早めに着手しましょう。

相続手続き全体の進め方は、相続手続きの総合ガイドでまとめて解説しています。

行政書士・藤原友事務所(世田谷区大原)は、相続相談400件超の実績をもとに、証券口座を含む相続手続きをお手伝いしています。無料相談はお電話(03-4500-1030)で承り、オンラインでのご相談にも対応しています。

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