株主総会議事録の書き方|記載事項・押印・保存期間10年を解説 2026年版
「株主総会議事録に実印を押すのですか」「取締役会の議事録は全員の押印が要ると聞きましたが本当ですか」。会社設立をお手伝いしたお客様から、設立の翌年あたりに必ずといってよいほどいただくご質問です。
議事録は、会社の意思決定を後から証明できる唯一の記録です。決算の承認、役員の選任、定款の変更、重要な財産の処分。これらはすべて「決議した」という事実そのものが登記や許認可の前提になります。ところが押印や保存のルールは書面の種類によって違い、しかも思われているのとは逆のことが少なくありません。この記事で整理します。

議事録はいつ必要になるのか
株主総会を開いたときは、決議の有無にかかわらず議事録を作成しなければなりません。
(議事録)第318条
株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
2 株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。
3 株式会社は、株主総会の日から五年間、第一項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。ただし、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合であって、支店における次項第二号に掲げる請求に応じることを可能とするための措置として法務省令で定めるものをとっているときは、この限りでない。
会社法 第318条第1項〜第3項(株主総会議事録の作成と備置き)
実務でとくに議事録が必要になる場面を挙げると、次のとおりです。
- 計算書類の承認…定時株主総会で毎年必ず生じます。
- 役員の選任・重任…任期満了ごとに生じ、登記の添付書面になります。
- 定款の変更…商号、目的、本店の所在地、事業年度などを変えるとき。
- 本店移転・増資・役員報酬の決定…いずれも決議の記録が必要です。
- 取締役会設置会社での重要な財産の処分・多額の借財…取締役会の決議事項です。
「小さい会社だから総会は開いていない」という場合でも、書面や電磁的記録による同意で決議があったものとみなす方法(会社法第319条第1項)があり、この場合も議事録の作成は必要です。開いていないから作らなくてよい、のではなく、開かない形をとったならその形にあわせて作ると考えてください。
株主総会議事録の記載事項
何を書くかは会社法施行規則第72条第3項が定めています。要点は次の6つです。
| 記載事項 | 実務上の注意 |
|---|---|
| 開催された日時および場所 | その場所にいない役員や株主が出席した場合は、その出席の方法(電話会議・映像を伴う方法など)も書きます。 |
| 議事の経過の要領およびその結果 | やり取りの全文は不要ですが、何が提案され、どう決まったかが読み取れる程度は必要です。 |
| 会社法の一定の規定により述べられた意見・発言があるときはその概要 | 役員の辞任理由の陳述、監査役の意見などが対象です。 |
| 出席した取締役・執行役・会計参与・監査役・会計監査人の氏名または名称 | 「出席役員」欄をきちんと設けます。 |
| 議長がいるときは議長の氏名 | 定款で議長を定めているのが通例です。 |
| 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名 | 作成者を明記します。抜けやすい項目です。 |
形式は書面でも電磁的記録でもかまいません(会社法施行規則第72条第2項)。決まった様式はありませんので、上の6項目が自然に埋まる見出し構成にしておくのが実用的です。
押印は必要か|株主総会と取締役会で扱いが違う
ここが最も誤解されている点です。結論から申し上げます。
株主総会議事録への押印は、会社法上の要件ではありません。会社法第318条にも会社法施行規則第72条にも、署名や押印を求める文言はないからです。一方、取締役会議事録は明確に異なります。
(取締役会の決議)第369条
(中略)
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
会社法 第369条第3項(取締役会議事録への署名または記名押印)
取締役会議事録は、出席した取締役および監査役の全員が署名または記名押印しなければなりません。「議長と代表取締役だけでよい」という運用は誤りです。また同条第5項は、決議に参加した取締役で議事録に異議をとどめない者は、その決議に賛成したものと推定すると定めています。反対したのなら、その旨を議事録に残さなければ賛成扱いになるということです。
もっとも、株主総会議事録に押印が不要なのは「会社法上は」という限定つきです。登記の添付書面として法務局へ提出する場合には、別のルールが働きます。たとえば、新たに就任する取締役の就任承諾書を株主総会議事録の記載で援用するときは、その取締役が市区町村に登録した印鑑を押し、印鑑証明書を添付する必要があります。実務では、登記に使う可能性を見越して、議長と出席取締役が会社届出印または個人の実印を押しておく取扱いが定着しています。どの書面にどの印鑑が必要かは事案によって変わりますが、法務局への確認を含めた書類作成は、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。
なお、株主リスト(主要な株主の氏名・住所・議決権数等を証する書面)は、押印を要しない書面とされています。
保存期間と備置きの義務
作って終わりではありません。備え置く期間が決まっています。
| 書類 | 備置きの場所と期間 | 根拠 |
|---|---|---|
| 株主総会議事録 | 本店に10年間 | 会社法第318条第2項 |
| 株主総会議事録の写し | 支店に5年間(電磁的記録で一定の措置をとる場合を除く) | 会社法第318条第3項 |
| 取締役会議事録 | 本店に10年間 | 会社法第371条第1項 |
閲覧できる人も定められています。株主総会議事録は、株主および債権者が営業時間内であればいつでも閲覧・謄写を請求できます(会社法第318条第4項)。取締役会議事録は、監査役設置会社などでは株主であっても裁判所の許可が必要とされており(会社法第371条第3項)、より慎重な扱いになっています。
議事録の備置きを怠ったり、記載すべき事項を記載せず、または虚偽の記載をしたときは、100万円以下の過料の対象となります(会社法第976条)。過料は会社ではなく取締役個人に科されるのが通例です。
議事録を作成する流れ
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- ステップ1 定款で招集・決議のルールを確認する
- 招集通知の期間、議長を誰にするか、決議の要件、取締役会を置いているかを定款で確認します。ここを外すと、決議そのものの効力が問題になります。
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- ステップ2 招集の手続きをとる
- 取締役会設置会社であれば取締役会で招集を決定し、株主へ招集通知を出します。株主全員の同意があれば招集手続を省略できる場合もあります(会社法第300条)。
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- ステップ3 総会・取締役会を開催し、議事を進める
- 議案ごとに提案・質疑・採決を行います。誰がどの議案に反対したか、辞任の理由が述べられたかなど、後で記録すべき事実をその場でメモしておきます。
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- ステップ4 議事録を作成する
- 会社法施行規則が定める記載事項を漏れなく記載します。取締役会議事録は、出席した取締役および監査役の全員が署名または記名押印します。
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- ステップ5 登記に使う場合は添付書面をそろえる
- 役員変更などで登記が必要な場合は、議事録に加えて就任承諾書、株主リスト、必要に応じて印鑑証明書をそろえ、2週間以内に申請します。
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- ステップ6 本店に備え置き、10年間保存する
- 年度ごとにまとめて保管し、いつでも取り出せる状態にしておきます。電磁的記録で作成した場合は、閲覧・謄写の請求に応じられる措置をとります。
ステップ5に進む前に、そもそも登記が必要な場面かどうかを見極めることが大切です。役員の任期と重任の考え方は役員の任期と重任登記とは?取締役10年の数え方と過料を解説、本店を移すときの手続きは会社の本店移転の手続き|登記2週間・登録免許税と許認可の届出先一覧で解説しています。
電子化するときの実務
議事録は電磁的記録でも作成できます。取締役会議事録を電磁的記録で作成した場合、署名または記名押印に代わる措置をとる必要があります(会社法第369条第4項)。一般には電子署名がこれにあたります。
紙と電子のどちらが向いているかは、会社の状況によります。役員が遠方にいる、海外にいるという会社では、電子化によって「押印のために書類を郵送し合う」という時間が丸ごと消えます。反対に、登記の添付書面として使う頻度が高く、印鑑証明書とセットで扱う場面が多い会社では、当面は紙のほうが手数が少ないこともあります。電子署名の種類によって登記での取扱いが異なりますので、電子化を進める前に、利用するサービスが登記に対応しているかを確認しましょう。
よくある失敗
- 取締役会議事録に議長だけが押印している…出席した取締役および監査役の全員の署名または記名押印が必要です。後日、登記や取引で使えないことが判明します。
- 「議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名」が抜けている…施行規則が定める記載事項のひとつです。定型のひな型を使っていると落ちがちです。
- 決算の承認を口頭で済ませ、議事録を作っていない…定時株主総会の議事録は毎年発生します。数年分がまとめて必要になると、当時の日付や出席者を再現するのに苦労します。
- 反対の意思を議事録に残していない…異議をとどめなければ賛成と推定されます。責任の所在にかかわる重要な点です。
- 本店の備置きをしていない…10年間の備置きが義務です。税務の書類とは別に、議事録だけをまとめたつづりを作っておくと確実です。
当事務所にご相談いただく場合
当事務所では、定時株主総会・臨時株主総会・取締役会の議事録の作成、招集通知や同意書の書式づくり、年間の決議スケジュールの設計をお受けしています。会社設立の段階から、毎年の総会と任期満了の年をあらかじめ組み込んだ運用表をお渡しすることもできます。
なお、登記申請の代理は司法書士の業務ですので、登記そのものは提携する司法書士へおつなぎするか、ご自身での申請をご案内します。当事務所は書面の作成と全体の段取りを担当します。
初回のご相談は無料です。お電話(03-4500-1030)またはオンラインでご相談いただけます。費用はご依頼の範囲によって変わりますので、正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示します(ご安心ください)。
まとめ
議事録のルールは、株主総会と取締役会で押印の扱いが違うことを押さえるだけで、ずいぶん見通しがよくなります。株主総会議事録は会社法上の押印義務がなく、取締役会議事録は出席した取締役・監査役の全員が署名または記名押印。保存はいずれも本店に10年。そして、登記で使う場面では会社法とは別の添付書面のルールが加わります。毎年必ず発生する書類だからこそ、最初にひな型と保管の場所を決めておくことが、いちばんの近道です。定款の内容から見直したい方は会社の定款の作り方|絶対的記載事項と認証・電子定款をわかりやすく解説、設立直後の手続き全般は会社設立後にやること一覧|法人設立届・青色申告・社会保険・法人口座の期限をご覧ください。
会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。




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