簡易宿所の構造設備基準|客室33㎡・便所・浴室の要件を解説 2026年版
「この物件で簡易宿所の許可は取れますか」——旅館業のご相談で最初に聞かれるのが、この一言です。判断の軸になるのが構造設備の基準で、なかでも客室の延床面積33平方メートル以上という数字が、物件選びの分かれ目になります。
結論から申し上げると、宿泊者の数を10人未満にすると決めて申請すれば、33平方メートルという基準は「1人あたり3.3平方メートル」に置き換わります。ワンルームに近い物件でも許可を目指せるのは、この仕組みがあるためです。この記事では、面積の測り方から便所・浴室・洗面設備の要件、東京都の上乗せ基準までを、条文にさかのぼって整理します。
簡易宿所の構造設備基準はどこに書かれているか
旅館業を営むには都道府県知事(保健所を設置する市や特別区では市長・区長)の許可が必要で、施設の構造設備が政令の基準に適合しないと許可を受けられません。その政令が旅館業法施行令で、簡易宿所営業の基準は第1条第2項に置かれています。
(構造設備の基準)第1条
(中略)
2 法第三条第二項の規定による簡易宿所営業の施設の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 客室の延床面積は、三十三平方メートル(法第三条第一項の許可の申請に当たつて宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
二 階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね一メートル以上であること。
三 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。
四 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。
五 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること。
六 適当な数の便所を有すること。
七 その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること。
旅館業法施行令 第1条第2項第一号〜第七号(簡易宿所営業の構造設備の基準)
ここで大切なのは第七号の存在です。政令の基準は全国共通ですが、都道府県(保健所設置市・特別区を含む)が条例で上乗せの基準を定めることが認められています。政令だけを見て判断すると、自治体独自の要件を見落とします。
なお、そもそも簡易宿所とは何かという定義は旅館業法第2条第3項にあり、「宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設」とされています。相部屋の宿を想定した類型ですが、実際には一棟貸しや一室貸しでも簡易宿所として許可を受けている施設が多数あります。旅館・ホテル営業との違いは旅館・ホテル営業と簡易宿所営業の違いの記事で詳しく比較しています。
客室の延床面積33平方メートルの正しい読み方
10人未満なら「1人あたり3.3平方メートル」
基準を整理すると次のようになります。
| 申請する宿泊者の数 | 必要な客室の延床面積 |
|---|---|
| 10人以上 | 33平方メートル以上 |
| 2人から9人 | 3.3平方メートル × その人数以上 |
たとえば宿泊者を4人までとして申請するなら、必要な面積は13.2平方メートルです。収容人数を絞ることで、小さな物件でも許可の可能性が出てくるのが簡易宿所の特徴です。ただし、いったん申請した人数は許可の前提になりますから、後から増やしたい場合は変更の手続きが必要になります。
面積に算入できる部分・できない部分
ここが最も間違えやすいところです。東京都の手引では、客室を「睡眠、休憩等宿泊者が利用し得る場所」と定義したうえで、面積に算入する部分をこう整理しています。
- 算入する……各客室の寝室、客室に付属する浴室・便所・洗面所その他宿泊者が通常立ち入る部分
- 算入しない……床の間、押入れ(収納)、納戸、小屋裏物置、共通の廊下、共用の設備
意外に思われるのは、客室内の浴室や便所は面積に算入できるという点です。一方、収納は通常人が立ち入らないため算入できません。
測り方は壁の内側(内法)
もうひとつの落とし穴が測定方法です。客室面積は壁や柱の内側で測る内法によって算定します。建築設計図面に書かれている面積は壁の中心線で測った壁芯面積であることが多く、内法で測り直すと図面の数字より狭くなります。図面上は33平方メートルを超えていたのに、実測で足りなかったという事例は珍しくありません。物件を契約する前に内法で実測しておくことが、旅館業でいちばん効く事前確認です。
多数人で共用しない客室は総面積の2分の1未満
東京都の条例には、政令にはない独自の要件があります。個室(多数人で共用しない客室)を設ける場合、その客室の延床面積の合計は、総客室の延床面積の2分の1未満でなければなりません。「多数人で共用する構造を主とする施設」という簡易宿所の定義を、面積の面から担保する規定です。個室中心の設計にしたい場合は、この点を最初に設計へ織り込む必要があります。
寝台・便所・浴室・洗面設備の要件
階層式寝台(二段ベッド)
政令が定めるのは上段と下段の間隔がおおむね1メートル以上という一点です。ドミトリー形式の宿では、この間隔を満たす製品を選ぶことが必須になります。
便所
政令は「適当な数の便所」としか書いていませんが、東京都の条例は旅館・ホテル営業の基準を簡易宿所にも準用しており、次のような内容になります。
- 防虫・防臭の設備と手洗設備を有すること。ロータンクの上部にある給水口は手洗設備として認められません
- 宿泊者等の利用しやすい位置に設けること
- 共同便所を設ける場合は男子用・女子用の別に分けて適当な数を備え付けること
- 便所を付設していない客室を有する階には、共同便所を設けること
特に注意が必要なのは、東京都の手引が示す「一客室のみの営業であっても、多数人での共用という利用形態から、男女別の共同便所が少なくともそれぞれ一箇所必要となる」という考え方です。一室貸しのつもりでも、便所を2か所用意しなければならない場合があります。
浴室
近隣に公衆浴場がある等、入浴に支障がないと認められる場合を除いて、入浴設備が必要です。共同用の浴室やシャワー室を設ける場合は、宿泊定員と利用形態を考えて十分な広さの脱衣室を付設します。循環式の浴槽を設ける場合は、ろ過器や集毛器についてさらに細かい基準があります。
洗面設備・その他
宿泊者の需要を満たす規模の洗面設備が必要で、共同洗面所を設ける場合は給水栓を適当な数そろえます。また、換気・採光・照明・防湿・排水の設備も要件で、東京都では睡眠や休憩の用に供する部屋は窓からの採光が十分に得られる構造とされ、窓のない客室は認められません。あわせて、営業施設には公衆の見やすい場所に施設の名称を掲げる必要があります。
玄関帳場(フロント)は不要でも体制は必要
簡易宿所には玄関帳場等に係る構造設備の基準がありません。旅館・ホテル営業では、宿泊者の確認を適切に行うための設備が求められるのと対照的です。
ただし、設備が不要であることと、無人でよいことは別の話です。東京都では、事故が発生したときその他の緊急時に迅速な対応を可能とする体制をとることが維持管理の基準として定められています。この点の実務は簡易宿所のフロントと駆けつけ体制の記事で詳しく解説しています。

許可申請の流れ
構造設備の基準を満たしているかどうかは、図面の段階で保健所と詰めておくのが鉄則です。
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- ステップ1 物件を内法で実測する
- 契約前に、客室として使う部分を壁の内側で測ります。収納や共用廊下は算入できません。想定する宿泊者数から必要面積を逆算します。
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- ステップ2 保健所へ事前相談する
- 配置図・各階平面図・正面図・側面図を持参します。用途地域や周囲おおむね100メートル以内の学校等の有無も、この段階で確認します。
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- ステップ3 建築指導課・消防署に相談する
- 用途変更の要否と消防用設備を確認します。詳しくは民泊・旅館業の消防法と建築基準法の記事をご覧ください。
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- ステップ4 許可申請書を提出する
- 営業許可申請書、申告書、見取図、各種図面、権原を示す書類などを提出します。東京都(多摩地域の保健所)の申請手数料は簡易宿所営業で16,500円、旅館・ホテル営業で30,600円です。
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- ステップ5 消防・建築の確認を経る
- 消防機関から消防法令適合通知書が保健所へ通知され、建築基準法に基づく検査済証で適法な建築物であることを確認します。
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- ステップ6 施設の検査を受けて許可
- 施設が完成したら保健所職員が現地を検査し、基準に適合していれば許可されます。許可が出るまで営業はできません。
よくある失敗
壁芯面積で物件を決めてしまう
最も多い失敗です。不動産広告や登記記録の面積と、旅館業で使う客室面積はまったく別物だとお考えください。
収納や廊下を面積に数えてしまう
クローゼットや共用廊下は算入できません。33平方メートルぎりぎりの物件では、この数平方メートルの差が結論を分けます。
便所を1か所しか用意しない
男女別の共同便所が求められる場合、後から増設するのは費用も工期も大きくなります。設計の初期に保健所へ確認するのが唯一の対策です。
用途地域や消防で先に止まる
構造設備の基準を満たしていても、用途地域で旅館業が営めない地域であれば許可は取れません。物件を押さえる前に、用途地域を確認しましょう。
費用と期間の目安
東京都の場合、申請手数料は簡易宿所営業で16,500円です。この金額は東京都(多摩地域の保健所)の手引に基づくもので、世田谷区をはじめとする特別区や保健所設置市では、区市の条例により手数料額および上乗せ基準が異なる場合があります。申請先の保健所への確認から申請まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。このほか、消防用設備の設置、用途変更が必要な場合の設計・確認申請の費用が別途かかります。事前相談から許可までの期間は、工事を伴わない場合でおおむね1か月から2か月、用途変更を伴う場合は半年以上を見込みます。
当事務所では、物件の下見の段階から面積と用途地域の確認に同行し、保健所・消防署・建築指導課との調整をまとめてお引き受けしています。正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、どうぞご安心ください。
まとめ
簡易宿所の構造設備基準は、客室の延床面積33平方メートル(宿泊者10人未満なら1人あたり3.3平方メートル)を、内法で、収納や共用廊下を除いて満たすことが出発点です。そのうえで、便所の男女別、浴室、採光といった条例の要件が重なります。物件を契約してしまってからでは打つ手が限られるため、契約前の実測と保健所への事前相談を強くお勧めします。
民泊・旅館業の許可と届出の全体像は、民泊・旅館業許可の総合ガイドでまとめて解説しています。
「この間取りで何人まで泊められるか」といった具体的なご相談も、初回は無料で承っています。お電話(03-4500-1030)またはオンラインでお気軽にご連絡ください。




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