特定専門工事とは?下請の主任技術者が不要になる特例と要件 2026年版

「鉄筋の二次下請に入ってもらいたいが、相手の会社には現場に出せる主任技術者がいない」。専門工事の現場では、技術者不足がそのまま受注の壁になります。こうした場面のために、建設業法には特定専門工事という特例があります。上位の下請の主任技術者が、再下請の分まで施工管理を引き受ければ、再下請の会社は主任技術者を置かなくてよいという仕組みです。この記事では、特例の仕組みと使うための要件、現場でありがちな失敗を整理します。

結論|鉄筋・型枠の下請で、書面の合意があれば再下請の主任技術者を省ける

  • 対象の工事:鉄筋工事と、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事の2つだけです。
  • 金額の上限:その工事のために結ぶ下請契約の代金の総額が4,500万円未満であることが必要です。
  • 手続き:上位の下請(特例上の「元請負人」)と再下請の会社が書面で合意し、あらかじめ注文者の書面による承諾を得ます。
  • 守ること:管理を引き受ける主任技術者は現場に専任で、主任技術者を省いた再下請の会社はさらに下請に出せません。

特定専門工事とは|建設業法第26条の3の仕組み

建設業の許可を受けた会社は、請け負った工事ごとに主任技術者を置くのが原則です(建設業法第26条第1項)。元請だけでなく、一次・二次の下請も、許可業者であればそれぞれ主任技術者が必要です。主任技術者と監理技術者の配置の基本は主任技術者と監理技術者の違いとは?で解説しています。

特定専門工事の特例は、この原則の例外です。条文は次のとおりです。

第26条の3

特定専門工事の元請負人及び下請負人(建設業者である下請負人に限る。以下この条において同じ。)は、その合意により、当該元請負人が当該特定専門工事につき第二十六条第一項の規定により置かなければならない主任技術者が、その行うべき次条第一項に規定する職務と併せて、当該下請負人がその下請負に係る建設工事につき第二十六条第一項の規定により置かなければならないこととされる主任技術者の行うべき次条第一項に規定する職務を行うこととすることができる。この場合において、当該下請負人は、第二十六条第一項の規定にかかわらず、その下請負に係る建設工事につき主任技術者を置くことを要しない。

建設業法 第26条の3第1項(特定専門工事の主任技術者の職務)

ここでいう「元請負人」「下請負人」は、特例の中での呼び方です。たとえば、ゼネコンから鉄筋工事を請け負った一次下請A社が、その一部を二次下請B社に出す場合、A社が特例上の「元請負人」、B社が「下請負人」です。A社の主任技術者がB社の分まで施工管理を行えば、B社は自社の主任技術者を現場に出さずに工事に入れることになります。

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対象になる工事と金額の上限

特例を使える工事は、施工の技術が画一的で、管理をまとめたほうが効率的なものとして、政令で2種類に限定されています。

(特定専門工事の対象となる建設工事)第31条

法第二十六条の三第二項の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。

一 大工工事又はとび・土工・コンクリート工事のうち、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事

二 鉄筋工事

2 法第二十六条の三第二項の政令で定める金額は、四千五百万円とする。

建設業法施行令 第31条第1項第一号・第二号・第2項(特定専門工事の対象と金額)

項目内容
対象の工事鉄筋工事/型枠の組立て(大工工事またはとび・土工・コンクリート工事のうち)
金額の上限特例上の元請負人が結ぶ下請契約の代金の総額が4,500万円未満
対象外になる場合発注者から直接請け負った会社で、下請代金の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上となるもの

金額の上限は、令和7年2月1日の政令改正で4,000万円から4,500万円に引き上げられました。資材や労務費の上昇に合わせた見直しで、同じ日に特定建設業の許可や監理技術者の配置の基準額も引き上げられています。令和7年1月31日以前に結んだ契約の金額の数え方は、個別に確かめましょう。

特例を使うための5つの要件

特例を使うには、次の要件をすべて満たす必要があります。

  • ①書面による合意:特例上の元請負人と下請負人が、工事の内容、下請契約の代金の額、元請負人が置く主任技術者の氏名と資格を書面で明らかにして合意します(建設業法施行規則第17条の8第1項)。電子契約の方法でも合意できます。
  • ②添付書類:合意の書面には、主任技術者が経験の要件を満たすことを示す書面と、その主任技術者を現場に専任で置くことを元請負人が誓約する書面を添えます(同条第2項)。
  • ③注文者の書面による承諾:元請負人は、合意をする前に注文者の書面による承諾を得なければなりません(建設業法第26条の3第5項)。一次下請が元請負人になる場合、注文者はゼネコンです。
  • ④主任技術者の要件:同じ種類の工事について1年以上の指導監督的な実務経験があり、その現場に専任で置かれることが必要です(同条第7項)。
  • ⑤再下請の禁止:主任技術者を置かないことにした下請負人は、請け負った工事を他の会社に下請に出せません(同条第9項)。

④の専任の要件は、工事の金額にかかわらずかかります。通常の主任技術者であれば、一定の金額未満の工事では複数の現場を兼ねられる場面がありますが、特定専門工事で管理を引き受ける主任技術者は、ほかの現場との兼任ができません。管理する範囲が広がる分、現場に張り付くことが求められているわけです。

特例を使うまでの流れ

特例は役所の許可ではなく、当事者の書面で成り立つ仕組みです。そのため書面をそろえてから現場に入ることが、特例を使う大前提になります。一般的な流れは次のとおりです。

  1. ステップ1 対象工事と金額の確認
    工事が鉄筋工事または型枠の組立てに当たるか、下請契約の代金の総額が4,500万円未満に収まるかを確かめます。
  2. ステップ2 管理を引き受ける主任技術者の選定
    同じ種類の工事で1年以上の指導監督的な実務経験がある人を選び、経験を示す資料をそろえます。ほかの現場と掛け持ちにならないよう、配置の予定も確かめましょう。
  3. ステップ3 注文者の書面による承諾
    合意の前に、注文者(一次下請が元請負人になる場合はゼネコン)から書面で承諾を得ます。
  4. ステップ4 下請負人との書面による合意
    工事の内容・下請代金の額・主任技術者の氏名と資格を記載し、経験を示す書面と専任の誓約書を添えて合意します。
  5. ステップ5 施工中の管理と書面の保存
    下請負人がさらに下請に出していないか、主任技術者が専任で現場にいるかを確認し続けます。変更契約で金額が動いたときは、上限を超えていないかを確かめ直しましょう。

元請が作る施工体制台帳・施工体系図との関係は、施工体制台帳・施工体系図の作り方もあわせてご覧ください。

費用と期間の目安

  • 役所への申請:特例を使うための許可や届出は不要で、手数料もかかりません。当事者間の書面と注文者の承諾で成り立つ仕組みです。
  • 準備の期間:書面のひな形がそろっていれば、主任技術者の経験資料の確認を含めて1〜2週間程度が目安です。
  • 行政書士報酬:合意書・承諾書・誓約書のひな形づくりや、社内の配置ルールの整備の内容によって変わります(正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください)。

当事務所では、特例を使えるかどうかの確認から、合意書などの書面一式の作成、技術者の配置の点検まで、一括してご依頼いただけます。

よくある失敗4つ

①注文者の承諾を取らずに合意だけしてしまう。承諾は合意の「前に」書面で得る必要があります。後から取り付けても要件を満たしません。

②主任技術者を省いた再下請の会社が、さらに下請に出す。第26条の3第9項で禁止されています。一括下請負の禁止とも関わるため、一括下請負(丸投げ)の禁止とは?もあわせて確かめましょう。

③管理を引き受けた主任技術者が、別の現場と掛け持ちする。専任が要件のため、兼任すると特例の前提が崩れます。

④追加工事で下請代金が上限を超える。変更契約で総額が4,500万円以上になると、特定専門工事に当たらなくなり、再下請の会社にも主任技術者が必要になります。

まとめ

特定専門工事の特例は、鉄筋工事と型枠の組立てに限って、上位の下請の主任技術者が再下請の分まで管理することで、再下請の会社の主任技術者を省ける仕組みです。使うには、下請代金の総額4,500万円未満、書面による合意、注文者の事前の書面による承諾、専任の主任技術者、再下請の禁止という要件をすべて満たす必要があります。技術者不足を補う有効な手段だからこそ、書面を整えてから現場に入りましょう。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。

行政書士・藤原友事務所(世田谷区大原)は、建設業許可や技術者の配置のご相談を承っています。無料相談はお電話(03-4500-1030)で受け付けており、オンラインでのご相談にも対応しています。

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