会員規約・利用規約の作り方|定型約款の要件と必須項目を解説 2026年版
会員制のサービスを始めるとき、教室やジムを開くとき、あるいはインターネット上でサービスを提供するとき。必ず出てくるのが「規約を作らないといけませんね」という話です。
ところが、実際にできあがった規約を拝見すると、他社のものを写して社名だけ差し替えたもの、という例が少なくありません。それでも動いているうちは問題になりません。問題は、料金を変えたいとき、退会をめぐって揉めたとき、つまり規約が本当に必要になった場面で表面化します。
規約は、作って掲げた時点では契約になりません。契約の内容になるための要件が、民法に定められています。この記事では、そのしくみから、入れるべき項目、そして作成の流れまでをご説明します。

規約が契約になるしくみ|定型約款
不特定多数のお客様と、同じ内容で取引をする。この形を民法は定型取引と呼び、そこで使われる条項の総体を定型約款と呼びます。会員規約も利用規約も、多くはこれにあたります。
(定型約款の合意)第548条の2
1 定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものをいう。以下同じ。)を行うことの合意(次条において「定型取引合意」という。)をした者は、次に掲げる場合には、定型約款(定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体をいう。以下同じ。)の個別の条項についても合意をしたものとみなす。
一 定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき。
二 定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき。
2 前項の規定にかかわらず、同項の条項のうち、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、その定型取引の態様及びその実情並びに取引上の社会通念に照らして第一条第二項に規定する基本原則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなす。
民法 第548条の2第1項・第2項(定型約款の合意)
ここから、実務で押さえるべき点が3つ読み取れます。
- 「一つひとつの条項を読ませる」必要はない…第1項は、条件を満たせば個別の条項にも合意したものと「みなす」と定めています
- そのかわり、入口の設計が必要…第1号の「規約を契約の内容とする旨の合意」か、第2号の「あらかじめ表示していた」かのいずれかを満たさなければなりません
- 不当な条項はみなし合意から外れる…第2項に当たる条項は、規約に書いてあっても合意しなかったものとみなされます
入口の設計|「同意する」をどう取るか
第1号を満たす最も確実な形は、申込みの手前に規約を置き、内容を確認して同意したことを記録に残すことです。用紙であれば申込書に「別紙の会員規約に同意します」という一文と署名欄を設ける、画面上であれば規約を表示したうえで同意の操作を求める、といった形になります。
第2号の「あらかじめ表示していた」で足りる場合もありますが、表示していたことを後から証明できるかが争点になります。掲示の時期や画面の作りが分かる記録を残しておくのが安全です。
入れても効かない条項がある
先ほどの第548条の2第2項に加えて、相手方が消費者であれば消費者契約法が重ねてかかります。事業者に有利すぎる条項は、書いてあっても無効になります。
(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)第9条
1 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
消費者契約法 第9条第1項第一号・第二号(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等)
実務でよく引っかかるのが、この2つです。中途解約の違約金は平均的な損害の額までしか定められませんし、支払遅延の遅延損害金は年14.6パーセントを超える部分が無効になります。「解約は理由を問わず残期間の全額」といった条項は、書いても効きません。
さらに、消費者契約法第10条は、法令の任意規定と比べて消費者の権利を制限し義務を加重する条項のうち、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効と定めています。これはいわば受け皿の規定で、個別の条文に当てはまらないものもここで拾われます。
免責条項は「全部免責」にしない
消費者契約法第8条は、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項、故意または重大な過失による場合に一部を免除する条項などを無効としています。「当社は一切の責任を負いません」という一文は、消費者向けの規約ではほぼ機能しないとお考えください。責任の上限を定めるにしても、軽過失の場合に限る、上限額を受領済みの料金の範囲にするといった設計にします。
規約に入れる項目
業種を問わず骨格になるのは、次の項目です。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 適用範囲 | 誰と誰の、どの取引に適用されるか。個別契約との優先関係 |
| 用語の定義 | 会員・利用者・提供物など、繰り返し出てくる言葉の意味 |
| 申込みと承諾 | いつ契約が成立するか。入会を断ることができる場合 |
| サービスの内容 | 何を提供するか。提供しないことの明示も重要 |
| 料金と支払方法 | 金額、支払時期、手数料の負担、遅延した場合の取扱い |
| 禁止事項 | やってはいけないこと。抽象的な包括条項だけにしない |
| 会員資格の停止・解除 | どの事由で、どの手続きで停止・解除できるか |
| 退会・中途解約 | 申出の方法、効力の発生時期、返金の有無 |
| 免責と責任の範囲 | 責任を負う場合と負わない場合、上限の定め方 |
| 規約の変更 | 変更できる旨と、周知の方法 |
| 個人情報の取扱い | 取扱いの方針を別に定める場合は、その参照 |
| 準拠法と管轄 | どの国の法律によるか、どの裁判所を第一審の専属的合意管轄とするか |
なお、海外にお住まいの方の利用を想定する場合、準拠法と管轄の定め方は取引の実態によって判断が分かれます。相手が消費者の場合には、その方の住む国の消費者保護の規定が働く余地があります。渉外的な点も含め、規約の作成は当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。
この中でとくに設計の差が出るのが、次に述べる変更の条項です。
後から料金を変えられるようにしておく
規約を作る場面で、いちばん見落とされるのがここです。サービスは変わりますし、料金も改定します。そのたびに会員一人ひとりから同意を取り直すのは現実的ではありません。民法は、一定の要件のもとで一方的な変更を認めています。
(定型約款の変更)第548条の4
1 定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
2 定型約款準備者は、前項の規定による定型約款の変更をするときは、その効力発生時期を定め、かつ、定型約款を変更する旨及び変更後の定型約款の内容並びにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければならない。
3 第一項第二号の規定による定型約款の変更は、前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ、その効力を生じない。
民法 第548条の4第1項〜第3項(定型約款の変更)
第1項第二号に注目してください。合理性を判断する要素のひとつとして、「この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容」が明記されています。つまり、最初の規約に変更条項を書いておいたかどうかが、後の変更の可否を左右します。
そして第3項。効力発生時期が来るまでに周知をしなければ、変更は効力を生じません。「値上げは翌月から」と決めた当日に告知しても、その変更は効きません。周知の方法と、いつまでに知らせるかを、規約の中で決めておきます。
内容を見せてほしいと言われたら
民法第548条の3は、相手方から請求があった場合には、遅滞なく相当な方法で定型約款の内容を示さなければならないと定めています。契約の前に請求を拒むと、みなし合意の規定そのものが適用されなくなります。規約はいつでも取り出せる形で用意しておく、と考えれば足ります。
規約とは別に必要になるもの
規約を整えれば全部済む、というわけではありません。事業の形によって、別立ての表示が必要になります。
- 通信販売にあたる場合…特定商取引法の広告の表示(第11条)と、申込みの最終確認画面での表示(第12条の6)が必要です。広告での表示と最終確認画面での表示は別の義務なので、片方で済ませることはできません
- 個人情報を扱う場合…利用目的の公表など、個人情報の保護に関する法律に沿った取扱いの方針を別に定めるのが一般的です
- 許認可が必要な事業…業法ごとの表示・書面交付の義務がかかります。何が必要かは事業の内容によって異なります。
許認可を前提とした会社づくりについては許認可が必要な事業の会社設立もご覧ください。
規約作成の流れ
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- ステップ1 取引の形を書き出す
- 誰に、何を、いくらで、どのくらいの期間提供するのか。無料の範囲があるか、解約はいつでもできるのか。ここが決まらないと条項は書けません。
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- ステップ2 相手が消費者か事業者かを決める
- 消費者が相手なら消費者契約法がかかります。事業者だけを相手にする場合でも、規約でその旨を明記しておくと解釈が安定します。
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- ステップ3 起きてほしくない場面を洗い出す
- 料金の未払い、迷惑行為、無断のキャンセル、退会後の再入会。実際に困る場面から逆算して、禁止事項と解除事由を組み立てます。
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- ステップ4 条項に落とし込む
- 骨格の項目をひととおり埋めます。免責は全部免責にせず、違約金は平均的な損害の範囲にとどめます。
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- ステップ5 変更条項と周知の方法を決める
- 変更することがある旨、周知の方法、効力発生までの期間を書き込みます。ここが将来の値上げの土台になります。
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- ステップ6 同意を取る入口を作る
- 申込書の一文、または申込み画面の同意の操作。同意した記録が残る形にします。
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- ステップ7 運用に乗せ、定期的に見直す
- 料金表やサービス内容を変えたのに規約が古いまま、という状態を作らないことが大切です。年に一度は読み返します。
よくある失敗
- 他社の規約をそのまま写す…自社にないサービスの条項が残り、逆に必要な条項が抜けます。禁止事項だけが立派で、料金と解約の定めが薄い規約をよく見かけます
- 変更条項がない…料金改定のたびに個別の同意が必要になり、事実上値上げできなくなります
- 周知の方法を決めていない…変更しても効力が生じません
- 「一切の責任を負いません」で締める…消費者向けでは無効になり、かえって条項全体の信頼性を落とします
- 同意の記録が残っていない…規約を掲げていただけでは、契約の内容になっていたことを示しにくくなります
- 規約と料金表が食い違う…実際の運用と条文がずれると、紛争時に不利に働きます
専門家に頼む範囲と費用の目安
会員規約・利用規約は、権利義務に関する書類として行政書士が作成をお手伝いできる書面です。当事務所では、事業の内容をうかがったうえで、条項の設計から文面の作成、同意を取る入口の組み立てまでをまとめてご相談いただけます。
一方で、すでに相手方と争いになっている場合の交渉や、訴訟の代理は弁護士の業務です。紛争性のある案件は、弁護士をご案内します。
費用は、サービスの複雑さと条項の量によって変わります。会社設立とあわせてご依頼いただくことも多く、その場合は会社設立の流れや事業目的の書き方の検討と同時に進められます。正式なお見積りはご依頼いただく前にご提示しますので、ご安心ください。
まとめ
- 会員規約・利用規約の多くは定型約款にあたり、要件を満たせば個別の条項も合意したものとみなされます
- そのためには同意を取るか、あらかじめ表示しておくという入口の設計が必要です
- 相手の利益を一方的に害する条項は、書いてあっても合意しなかったものとみなされます
- 消費者が相手なら、違約金は平均的な損害の額まで、遅延損害金は年14.6パーセントまでです
- 後から変えるには変更条項と周知が要ります。効力発生時期までに周知しなければ変更は効きません
- 通信販売の表示や個人情報の取扱いの方針は、規約とは別に必要です
設立して間もない会社ほど、規約を後回しにしがちです。けれども、会員が増えてから作り直すほうが手間もかかります。開業の準備段階でのご相談を歓迎します。お電話(03-4500-1030)またはお問い合わせフォームからどうぞ。初回のご相談は無料で、オンラインにも対応しています。設立後にやることの全体像は会社設立後にやることにまとめています。
会社設立・法人化の全体像は、会社設立の総合ガイドでまとめて解説しています。



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