無許可業者と下請契約を結ぶリスク|元請が受ける監督処分と確認方法 2026年版

建設業許可の話は、ふつう「自社が取る側」の視点で語られます。しかし実務でより深刻なのは、相手方に許可がなかったときに、契約した自社が処分を受けるという場面です。

建設業法は、無許可で営業した業者を罰するだけでなく、その業者と下請契約を結んだ許可業者(元請)自身を監督処分の対象としています。相手の許可を確かめないまま発注することは、自社の許可を危険にさらす行為だということです。この記事では、どの条文でどう処分されるのか、そして契約前に何をどう確認すればよいのかを整理します。

処分を受けるのは「契約した側」でもある

建設業法第28条第1項は、許可行政庁が建設業者に対して指示処分をすることができる場合を列挙しています。その中に、無許可業者との契約が明記されています。

(指示及び営業の停止)第28条

国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が次の各号のいずれかに該当する場合(中略)においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。

(中略)

六 建設業者が、第三条第一項の規定に違反して同項の許可を受けないで建設業を営む者と下請契約を締結したとき。

七 建設業者が、特定建設業者以外の建設業を営む者と下請代金の額が第三条第一項第二号の政令で定める金額以上となる下請契約を締結したとき。
建設業法 第28条第1項第六号・第七号(指示及び営業の停止)

主語はいずれも「建設業者が」です。つまり処分されるのは、許可を持っている側、多くの場合は元請です。無許可の下請業者が罰せられるのとは別に、発注した元請にも独立して責任が生じます。

指示に従わない場合や、事案の内容によっては、1年以内の期間を定めた営業停止を命じられることもあります(同条第3項)。さらに第28条第1項各号に該当し情状が特に重い場合は、許可の取消しの対象にもなります(第29条第1項第八号)。

まず押さえる前提:許可が要らない「軽微な工事」の範囲

すべての建設業者に許可が必要なわけではありません。建設業法第3条第1項ただし書は、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負う場合を除外しています。

工事の種類 許可が不要な範囲(軽微な建設工事)
建築一式工事 請負代金1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事
建築一式工事以外の27業種 請負代金500万円未満

この金額は消費税を含んだ額で判断し、注文者が材料を提供する場合はその市場価格と運送賃を加えて計算します。また、同一の業者に工事を分割して発注するときは各契約の合計額で判定されます(建設業法施行令第1条の2)。詳しくは建設業許可がいらない「軽微な工事」とはで解説しています。

したがって、無許可業者への発注がすべて違法になるわけではありません。問題になるのは、軽微な工事の範囲を超える金額の下請契約を、許可のない相手と結んだときです。

「自分のケースだと、どうなる?」と思ったら,読み進める前にお気軽にご相談ください。初回のご相談は無料です。

六号違反:無許可業者と下請契約を結んだケース

典型例はこうです。500万円の外壁改修を下請に出した。相手は長年の付き合いのある職人の会社で、許可の有無を確認したことはなかった。実は許可を持っておらず、あるいは数年前に更新を失念して失効していた。

この場合、無許可で請け負った下請業者は建設業法第3条第1項違反です。同時に、契約した元請は第28条第1項第六号に該当します。相手に許可がないことを知らなかったとしても、条文は「知りながら」という限定を置いていません。第八号(営業停止処分を受けている者との契約)が「情を知つて」と明記しているのと対照的です。確認を怠ったこと自体が問題になり得るという構造です。

失効は珍しい話ではありません。許可の有効期間は5年で、更新を忘れれば期間満了の翌日に効力を失います。取引開始時に確認したきりでは、現在も有効かどうかは分かりません。更新の実務は建設業許可の更新手続きをご覧ください。

七号違反:特定建設業者以外との5,000万円以上の下請契約

もうひとつ見落とされやすいのが第七号です。これは相手が無許可の場合ではなく、相手が一般建設業の許可しか持っていない場合の話です。

発注者から直接請け負った工事について、下請代金の総額が政令で定める金額以上となる下請契約を結ぶには、元請が特定建設業の許可を受けている必要があります。その政令の金額は、5,000万円(建築工事業の場合は8,000万円)です(建設業法施行令第2条)。この金額は令和7年2月1日施行の改正で、従来の4,500万円(建築一式7,000万円)から引き上げられました。

第七号が問題にしているのは、この基準額以上の下請契約を特定建設業者以外の者と結んだときです。一般建設業と特定建設業の違いは特定建設業と一般建設業の違いとはで整理しています。あわせて、下請代金が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)になる工事では施工体制台帳の作成義務も生じますので、施工体制台帳・施工体系図の作り方もご確認ください。

無許可営業そのものの罰則

請け負った側の責任も確認しておきます。無許可で建設業を営んだ場合の罰則は軽くありません。

第47条

次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。

一 第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだとき。

(中略)

三 第二十八条第三項又は第五項の規定による営業停止の処分に違反して建設業を営んだとき。
建設業法 第47条第1項第一号・第三号(罰則)

3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金で、情状により両方が併科されることもあります(同条第2項)。しかも役員等が刑に処せられれば、建設業許可の欠格要件に該当し、会社の許可そのものが危うくなります。欠格要件の中身は建設業許可の欠格要件とはで解説しています。

処分の影響は罰金額にとどまりません。監督処分は国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで公表され、経営事項審査のW点(その他の審査項目)でも法令遵守として減点されます。公共工事を受注している会社では指名停止にも直結します。

発注者(施主)の立場ではどうなるか

建設業者でない一般の発注者が無許可業者に工事を頼んだ場合、発注者自身が第28条第1項の処分を受けることはありません。ただし条文は、注文者に対する働きかけも用意しています。

第28条第7項は、公衆に危害を及ぼした場合など一定の場合に、許可行政庁が注文者に対しても適当な措置をとるべきことを勧告できると定めています。また同条第2項では、許可を受けないで建設業を営む者に対して都道府県知事が直接指示をすることもできます。

実務上のリスクはむしろ民事です。無許可業者は経営の安定性や技術者の配置が確認されていません。工事が途中で止まった、瑕疵が出たが対応してもらえない、といったときに困るのは発注者です。許可の有無は、価格以外に業者を比較できる数少ない客観的な指標だと考えてください。

契約前に許可を確認する手順

難しいことをする必要はありません。次の順で確認すれば十分です。

  1. ステップ1 予定金額が軽微な工事を超えるかを確認する
    税込みの請負代金で判定します。材料の支給がある場合はその価格と運送賃も加えます。分割発注は合算です。
  2. ステップ2 許可通知書または許可票の写しをもらう
    建設業者は店舗と元請工事の現場ごとに標識(許可票)を掲げる義務があります(法第40条)。許可番号・業種・一般/特定の別・有効期間を確認します。
  3. ステップ3 国土交通省の検索システムで裏を取る
    建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで、商号から許可の有無・業種・許可年月日・有効期間を無料で確認できます。書類の写しだけで判断しないのが安全です。
  4. ステップ4 業種が工事内容と合っているかを見る
    許可はあっても、発注する工事の業種の許可がなければ意味がありません。内装なら内装仕上工事業、解体なら解体工事業というように対応を確認します。
  5. ステップ5 金額が基準額以上なら相手が特定建設業者かを確認する
    下請代金の総額が5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上になる場合は、自社が特定建設業の許可を持っているかもあわせて確認します。
  6. ステップ6 契約書に許可に関する条項を入れる
    許可番号を契約書に記載し、失効・取消しがあったときは直ちに通知する義務と、その場合の解除条項を定めておきます。

特にステップ3の検索システムでの確認を、取引開始時だけでなく年に一度は繰り返すことをおすすめします。更新漏れによる失効は、相手の会社も気づいていないことがあるためです。

契約書と社内ルールで備える

確認を個人の記憶や善意に頼ると、担当者が変わった途端に抜けます。仕組みにしてしまうのが確実です。

  • 下請台帳に許可番号と有効期間の欄を設ける:期限が近づいたら更新状況を確認する運用にします
  • 注文書・注文請書に許可番号欄を設ける:記載してもらうこと自体が確認になります
  • 基本契約書に表明保証と解除条項を入れる:許可を有していることを表明保証させ、失効時は無催告解除できるようにしておきます
  • 建設業法第19条の法定記載事項を満たす契約書を使う:詳しくは建設工事の請負契約書の作り方をご覧ください

あわせて注意したいのが、丸投げの禁止です。許可のある業者に出したとしても、請け負った工事を一括して他人に請け負わせることは原則として禁止されています。詳しくは一括下請負(丸投げ)の禁止とはをご確認ください。

監督処分の量定(指示・営業停止の期間など)は、国土交通大臣の監督処分基準のほか、各都道府県が独自の基準を定めている場合があります。実際に処分の可能性が生じている場面では、許可行政庁への確認から対応まで、当事務所に一括してご依頼いただけます。まずはご相談ください。

よくある失敗3つ

①「昔から付き合いがあるから大丈夫」で確認しない。許可は5年で切れます。長い付き合いであることは、現在許可があることの証明にはなりません。

②許可はあるが業種が違う。とび・土工工事業の許可しか持たない業者に、500万円以上の解体工事を発注してしまう例が典型です。平成28年に解体工事業が独立した後も、この誤解は残っています。

③金額を分けて500万円未満にする。正当な理由なく契約を分割しても、施行令第1条の2第2項により合計額で判定されます。分割は解決になりません。

まとめ

無許可業者との下請契約は、相手だけの問題ではなく、契約した許可業者自身の問題です。建設業法第28条第1項第六号は無許可業者との下請契約を、第七号は特定建設業者以外との5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上の下請契約を、それぞれ指示処分の事由として定めています。無許可営業そのものには3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金という重い罰則もあります。

やるべきことは複雑ではありません。金額が軽微な工事を超えるかを見る、許可票と検索システムで許可の有無と業種を確かめる、契約書に許可番号と解除条項を入れる。この3つを社内の標準手順にしておけば、ほとんどのリスクは防げます。許可の要件そのものについては建設業許可の要件をご覧ください。

建設業許可の全体像は、建設業許可のすべて(総合ガイド)でまとめて解説しています。

下請の許可状況をどう管理すればよいか、契約書の見直しをどこから手をつけるか。初回のご相談は無料です。お電話(03-4500-1030)のほかオンラインでも承っています。

出典