藤原友 行政書士事務所のロゴ画像

2021年版「遺言のすすめ」〜概要を把握〜

家族

はじめに

こんにちは。当ホームページをご覧頂きましてありがとうございます。


世田谷区で相続・遺言関連業務を専門にしております,行政書士の藤原友(ふじわらゆう)と申します。東京都行政書士会世田谷支部所属です。


世田谷支部では平成23年より理事,平成24年より副支部長を務めさせて頂いております。
最近の趣味は囲碁とテニスです。ご一緒して頂ける方がいらっしゃいましたら,是非お声掛け下さい。

さて,昨今,「終活」「相続対策」「遺言」といったテーマが様々なところで取り上げられております。このページをご覧の皆様も,「ウチは大丈夫だろうか」「今から何を準備しておけばいいのだろうか」といった方や,「親父が遺言を書いてくれないんだよね」という方であろうと思います。
このページが,これらの問いに対する分かりやすいご回答になればと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。

近年の相続をめぐる事情

「遺産相続」や「遺言」というと,昔は財閥や資産家を想像し,殺人事件などとからんでサスペンスドラマになりそうなテーマだったのですが,近年は7000万円以下の相続財産でいわゆる「争族」になってしまうという事例が7割を占めています。

お金持ちだけの問題ではないということが言えると思います。

相続争いが増えた理由は複数あると思われます。

高齢化ももちろんなのですが,国民感情として,明治時代からの名残で戸主や長男を尊重するという考え方がかつてはあった一方で,今は,相続人同士は平等であるべきだという考え方になっているということが挙げられます。

また,個人の権利意識の高まりや,法律知識の向上,さらには近時の不況と呼ばれる状況により,将来に不安を抱える人が多いということにも因っているのかもしれません。

年間遺産分割件数グラフ

人口は減っていく中,相続でモメる事例は年々増え続けており,令和元年の年間遺産分割事件数は,12785件となりました(上図)。

私自身,かつて祖父が亡くなった際に,家族が大変辛い思いをするという事例を経験しました。祖父が突然亡くなった悲しみに加えて,相続で争いになったからです。

その時に感じた「遺言があったなら」という悔しさと,「他の誰にも相続が原因で悲しんで欲しくない」という強い思いから,今は遺言の作成や相続手続きをお手伝いしております。

法定相続と遺言

民法によって,亡くなった人の財産を
1)だれが
2)どの割合で
引き継ぐかが決められています(民法900条)。
これに優先するものが「遺言」であるということです。
民法は,亡くなった人(被相続人)が所有する自分の財産について,最終意思を尊重したいという考え方から,遺言を優先させようとしています。

ポイント①

遺言>法定相続

法定相続人と法定相続分

さて,「遺言が法定相続に優先するとして,法定相続では何が問題なのか?」という疑問が生じるかと思います。
法定相続の場合,すなわち遺言の無い場合にどうなるのかを見ていきましょう。
民法では,相続人となる者の順位と,分け前の割合である相続分が決められています。

相続人の順位

問題が起こりそうなケースが思い浮かびますでしょうか。
ほんの一例に過ぎませんが,次のような場合です。

ケース1(相続人の問題)
年をとってから身の回りの世話をしてくれた長男の妻(義理の娘)や,長年に渡って事業を手伝ってくれた弟にも幾許か財産を渡したい

よくある話ですが,老後のお世話や介護をするのは長男の妻であったり,次女であったりします。大抵は1人です。

しかし,民法においては,子どもの間では平等に分けるよう決められています(民法900条4号)ので,全く老後の面倒など見なかった他の相続人も,一緒に住んでつきっきりでお世話をした相続人も,もらえる割合は基本的に同じになります。また,長男の妻は相続人ではありません。

近年になってこれでは不公平だということで民法が改正され,相続人でない人にも「特別寄与料」が認められています民法1050条)が,それでも十分とは言えません。

相続人にならない人の悩み

相続発生後に,相続人同士の話し合い(遺産分割協議といいます)で分け前を変えることは可能ですが,遺言で指定してあった場合と比べて,円満に相続を行える可能性は明らかに低いでしょう。また,法定相続人でない人は協議に参加できませんので,長男の嫁に財産を渡したい場合など(遺贈といいます)は,遺言が必要になります。

ケース2(相続分の問題)
土地建物が相続財産のほとんどであるというような場合はもちろん,被相続人が不動産を所有している場合や,会社の経営者などの場合

土地建物が相続財産のほとんどである場合,①土地建物をもらった相続人が他の相続人に現金を渡してバランスをとる方法,②売却して分割する方法,③下手に相続分として割合が決められているだけに,それぞれが自分の欲しい財産を主張することになると円満に分けることなんてできない,という問題が生じます。遺言に加えて,分割対策として生命保険などの活用が必要になります。

一方で,遺言が不要というケースも存在します(もちろん作って損になることはありませんが)。唯一財産を遺したい人が法定相続人となる自分の子だけであるとか,配偶者のみであるといった場合です。その場合は,相続手続対策としてエンディングノートを作っておけば安心でしょう。

ポイント②

「法定相続の場合にどうなるのか」をまずは確認しておく

「遺言」と言うと,「遺書」と誤解をされてか,「縁起が悪い」ですとか,「まだ先でいいでしょう」といった,書くことに及び腰であるという意識がおありの方もいらっしゃるでしょう。前者のような考えから,子どもから親に遺言を頼みづらいということもあるでしょう。 しかし,これまでの内容を見てきますと,遺言とは,縁起が悪いどころか,家族を救う縁起の良いものであるという見方が正しいのではないかと私は思っています。
遺言がないために,程度の差はあれど争族に発展するケースは非常に多いですので,ちょっと極端な言い方ではありますが,「法定相続は,遺言を知らない・利用しない者への制裁」という見方もできるのではないでしょうか。

遺言は絶対のものではない?

「早速遺言を書こう」という前に,知っておいていただきたいことがあります。
先ほどまでの話から,遺言で法定相続を上書きできるということになるわけですが,例外的にこれを覆すことができる場合があります。それが,遺留分です(民法1028条)。

例えば,妻子のいる夫が亡くなって,「愛人に全財産(1億2,000万円相当)を遺贈する」というような遺言が見つかったとしましょう。普通に考えてひどい夫なわけですが,妻子はこう考えるでしょう。「私達,どうすればいいの,今住んでいる家も出て行かなくてはならないの?」と。

配偶者・卑属・尊属には遺留分があります(兄弟姉妹にはありません)ので,遺留分の減殺請求を行うことで,遺留分を超えて遺贈しようとした部分については,守られることになります。
例えば先ほどの事例の妻は1億2,000万円×1/2×1/2=3,000万円
子は(この場合同じ計算式になりますが)1億2,000万円×1/2×1/2=3,000万円
については遺留分として最低限保証されます。

遺留分は侵害を受けている人が減殺請求をしないのであれば遺言通りになりますが,減殺請求を行った場合,ほぼ100%認められていますので,この点には配慮をした上で遺言の作成をしないと,「遺言のせいでモメる」という本末転倒の結果を招きかねませんので,注意が必要です。

ポイント③

(遺留分)>遺言>法定相続

遺言の種類

遺言の種類は,次の3種類です(危急時にするものを除きます)。

  1. 自筆証書遺言
    全文を自書します。封をして保管すると良いでしょう。
  2. 公正証書遺言(遺言公正証書)
    公証役場でするのが普通ですが,場合によっては自宅や介護施設等に公証人を招き,公証人に読み上げてもらって作成するものです。
  3. 秘密証書遺言
    公証役場で作成します。内容については誰にも秘密にしたい場合に利用します。

どの場合も,財産目録,遺言の執行者,付言事項などを専門家とともに作成・決定し,万全の準備のもとで行いたいところです。

Q & A,まとめ

「ウチは大丈夫だろうか」という漠然とした不安があります。
現状のまま法定相続になった場合に,相続分通りに円満な話し合いで分けることができるのかをまずはシミュレーションすることが大切です。その上で,そのままでは不都合な部分が見えてくると思いますので,遺言の作成をお勧め致します。分割対策と納税対策が分析する際のポイントになります。
今から何を準備しておけば良いでしょうか。
ご提案としまして,まずは財産目録の作成法定相続の場合の相続シミュレーションをお勧め致します。その上で,遺言があれば不安がありません。
父が遺言を書いてくれないんです。何となく言いづらいし,どうしたら良いでしょうか。
例えば,「遺言は遺書とは違って,もし相続がいつか将来発生したら,家族を守ることができる縁起の良いものなんだ」という説明をなさってみてはいかがでしょうか。現状のまま放っておくと,将来,争いや相続人のうちの誰かが不満を持ってしまう事態になりかねないということを伝えられる資料があれば尚良いかもしれません。

当事務所では,遺言や相続に関するご相談を無料でお受けしております。ご自宅等に出張してお悩みをお伺いすることも可能ですので,まずはお電話やメールにてご連絡下さい。お問い合わせフォームはこちらになります。

疑問質問には可能な限りお答えし,家族円満な手続に向けたお手伝いをさせて頂きます。遺言や相続・成年後見制度の利用等につきまして,司法書士や税理士等の関連士業・不動産会社等と連携し,お客様の利便を最大限追求します。

行政書士には,法律上の守秘義務が課せられております(行政書士法12条)ので,安心してご相談下さい。

長文をお読み頂きまして,ありがとうございました。